志賀原発の避難計画“絵に描いた餅” 能登半島地震 各地で道路寸断、「どこに逃げれば…」女川で募る不安、地震と原発はいま【報道特集】

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2024-03-16 06:15
志賀原発の避難計画“絵に描いた餅” 能登半島地震 各地で道路寸断、「どこに逃げれば…」女川で募る不安、地震と原発はいま【報道特集】

東日本大震災から13年、そして元日の能登半島地震から2か月。地震と原発の問題を考えます。国の原発政策は今どうなっているのか。東北と北陸で取材しました。

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トラブル続出 志賀原発 公開も…

村瀬健介キャスター
「志賀原発が見えてきました。地震から2か月あまりが経ってようやく私達メディアの取材が認められました」

最大震度7を観測した石川県志賀町。北陸電力志賀原子力発電所には1号機と2号機があり、地震の前から運転を停止していた。

しかし敷地内では、地面に亀裂が入り、外部から電源を受けるための変圧器で油が漏れるなどトラブルが相次いだ。

地震発生後、初めて内部が公開されたのだが…

村瀬キャスター
「1号機の油漏れが起きた変圧器の現場ですが、油漏れが起きた部品は、すでに外されています。下に漏れた油もすでにきれいに片付けられています。また、私達こちら立ち入りは許されているのですけれど、撮影する方向が厳しく制限されていまして、この後ろ側、一切撮影できないということ。それとですね、カメラ1台につき電力会社の社員が1人ついて、制限エリアを撮影していないかを確認するという厳しい制限が付けられ取材が行われています」

次に案内されたのは、先月、空から撮影した際、ブルーシートがかかっていた2号機の変圧器だ。

村瀬キャスター
「こちら撮影が大変厳しく制限されていまして、後ろ側と、こちら側の撮影が制限されています。この場所で変圧器の油漏れが起きました。ちょうどこの大きな機械の奥に銀色の紙が見えていますけれども、あの場所が油漏れが起きた故障箇所だということです。下を見ても油が漏れている様子はいまは見えません」

油漏れをめぐっては北陸電力の説明も二転三転した。当初、約3500リットルと発表したが、実際は5倍超の約1万9800リットルだった。

油は敷地内にとどまっていると説明していたが、のちに一部が海に漏れ出ていたことも明らかになった。

津波に関しても水位計に有意な変動はみられないと説明していたが、のちに1mから3mの津波が複数回、到達していたと訂正した。いま原発に問題はないのか?北陸電力は…

北陸電力土木建築部 吉田進部長
「全て改善しております。なので、いろいろそういったところは全て機能上、仕様上は全て問題ありません」

そもそも志賀原発は建設・運転をめぐる裁判で差し止め判決が出た過去がある。1999年8月、2号機の工事に着工した直後、地域住民ら135人が身体への危険を及ぼす可能性がある、などとして、北陸電力を相手どり提訴した。

係争中の2006年3月15日、2号機は営業運転を開始したが、9日後、金沢地裁が原告住民の主張を認め、2号機の運転差し止めを命じる判決を下した。

当時、裁判長だった井戸謙一さんが、18年ぶりに志賀原発を訪れた。

能登半島の断層帯でマグニチュード7.6程度の地震が30年以内に2%の確率で起こるという国の評価を受け判決を下した。

その1年後、能登半島では最大震度6強の地震が起きた。

志賀原発差し止めを命じた 井戸謙一元裁判長
「実はびっくりした。さらに今回これでしょ。だからもう2回も大きな地震に襲われているんです。そういう意味では、僕自身の認識もまだまだ甘かったというふうに思います」

村瀬キャスター
「裁判官としてこの巨大な施設の運転を差し止める判断をするのは、大きな重圧だったのではないですか?」

井戸謙一元裁判長
「私はこの原発の運転については、具体的危険があるということを住民側が立証する責任があるのではなくて、電力会社側がそれ(危険)がないということを立証しなければいけない。それを北陸電力が立証できているのかどうか、この訴訟において。やっぱり立証できてないと判断するしかない。差し止めというドラスティックなものであっても、その通り判決を言い渡すのが裁判官の仕事だと」

だがこの裁判はその後、最高裁で住民側の敗訴が確定した。能登半島地震を受け、原発周辺の住民がいま不安に思っていることとは…

「逃げ場ない」能登各地で道路寸断

村瀬キャスター
「志賀町の集落です。このあたりも震度7を観測したということで、こちらの家屋は倒壊しています。私の右手もこのように、建物が崩れてしまっています」

この志賀町で原子力災害が起きた際の避難計画書がある。志賀町の住民は北の能登町や南の白山市に避難すると記されている。

避難ルートは国道などの幹線道路を基本としているが、今回の地震では発生直後から多くの区間で通行止めが続いた。

原発周辺の住民は…

志賀町の住民
「やっぱり道がもうガタガタになって見ている通り逃げ場がないですよね。私らは原発の方はちょっと、今の段階では、廃炉にした方がいいんじゃないかなと思うんですけどね。子供たちがやっぱり心配ですよね、将来のことを考えたらね」

志賀町の住民
「不安は、大きいですよ(Q.原子力発電所の事故があったら?)避難は絶対無理ですよ。逃げる場所がないです。はっきり言って。やはり原発は必要ないと感じます」

さらに志賀町では原子力災害が起きた際、放射線を防護することができる避難施設も地震による被害を受けていた。ここでは住民がいまも避難生活をしているが、生活排水を処理する浄化槽が壊れたため、断水が解消されても水を使えない状況が続いている。

村瀬キャスター
「これが?本当だ、かなり浮いてしまって」

堂下健一志賀町議
「浄化槽ですね、重症ですよね。これが直らない限り、水は使えないということです」

村瀬キャスター
「避難施設として作られてるのに水道が使えなくなるというのも、なかなか困ってしまうのではないか?」

堂下健一志賀町議
「実際原発事故になりますと(施設に)水を持ってくる人は、まずいないと思う。あと仮設トイレ(を設置する)という話はありえません。本当にもう致命的ですよね」

志賀原発の避難計画にも不安があるという。放射性物質が漏れ出したとの想定で実施された防災訓練。道路が寸断し孤立した地域では、ヘリコプターや船を使って避難することになっているが。20年以上前から原発に反対してきた堂下町議は。

堂下健一志賀町議
「例えば空路、海にしてもいつも防災訓練、11月23日にやっていますが、そのときもいつも、ちょっと風が強かったりするとヘリが来なかったり、船が出なかったりしたこと今まではありましたので、当初から我々も(避難計画は)絵に描いた餅だということは言っていましたけれども、もう本当にそれがこういう形で証明されてしまったと思います」

13年前にも津波 女川町の危機感

今年9月に再稼働が予定されている原発がある。宮城県の牡鹿半島に位置する東北電力・女川原発だ。

膳場貴子キャスター
「あちらに見えているのが女川原発のゲートなんですけど、女川原発と隣り合わせのこちらの集落で話を聞いてみますと、原発が事故を起こした際の避難計画については、不安を口にされる方が非常に多いです」

集落の区長は…

集落の区長
「もう逃げろと簡単に言われてもね。どこに逃げればいいの。歩くしかない」

東日本大震災で女川町は15m近い巨大津波に襲われ、壊滅的な被害を受けた。女川原発にも津波が到達し、非常用発電機2台が停止。また外部電源5系統のうち4系統まで停止したが、原子炉は辛うじて冷温停止した。

その後、策定された原発事故を想定した避難計画では、女川原発の周辺住民は約70キロ離れた栗原市に避難することになっている。

移動手段は、自家用車やバスが想定されていて、道路の寸断などで、車両での移動が難しい場合は船やヘリコプターで避難するとされている。

しかし、その場合でも、港やヘリポートまでは徒歩で移動しなければならない。

集落の区長
「電柱が倒れても歩くことはできるけど、がけ崩れはもう歩けないからね。船は津波が来ればもう駄目だから。桟橋が使えないから。前の地震でわかってるから」

原発の再稼働をめぐっては、3年前に周辺住民が東北電力を相手どり、差し止めを求める訴訟を起こした。

再稼働差し止め訴訟 原伸雄 原告団長
「破綻したような避難計画のもとでの再稼働はあり得ないんじゃないかということを強く思いますよね」

原さんら原告団が特に問題視するのは、住民が避難する際に、放射性物質の除染が必要か確認する検査場所についてだ。

原伸雄 原告団長
「大変な渋滞が発生して、検査場所へ必要な機材とか人員が派遣できない。検査場所に到達できんのかと、そんなことも色々な形で立証して、問題にしてきたんです」

さらに、今年1月の能登半島地震で道路が寸断され、多くの集落が孤立したことが原さんの危機感を強めた。

原伸雄 原告団長
「私どもが心配して問題提起してきたことが目の前で現実になった。避難計画というのが総崩れという状態が目の前で展開されたという感想ですね」

東北電力側はどう主張しているのか。取材中の2月29日、東北電力側の反論が原さんの弁護士から届いた。書面にはこう書いてあった。

「避難計画の不備について縷々主張するだけで、事故が発生する具体的危険については何ら主張立証を行っていないものであるから、控訴人らの主張が認められる余地はない」

膳場キャスター
「原さん達の主張は…」

原伸雄 原告団長
「全く論外だと。こういう言い方するんだね。しかし、驚くべき回答だ」

番組の取材に対し東北電力は、「係争中の訴訟に関わることで、詳細は差し控えるが、当社は引き続き避難計画の実効性向上に向けて、自治体とも連携しながら、事業者として出来る限り貢献していく」などとしている。

敗訴続くも…「命を守るのが裁判所」

現在、国内にある原子力発電所は、15か所33基(建設中3基)。

そのうち、東日本大震災後に設けられた新規制基準に適合した12基が再稼働している。

これまで5か所の原発について「運転差し止め」などを命じた司法判断が下されたが、審理中を除き、いずれも上級審などで覆った。

2014年、関西電力・大飯原発の「運転差し止め」を命じた福井地裁の元裁判長、樋口英明さん。

大飯原発の差し止めを命じた 樋口英明元裁判長(71)
「関西電力の主張は『大飯原発の敷地に限っては、強い地震は来ませんから安心してください』と。強い地震が来ても大丈夫だという主張ではないんです。今の規制基準は『将来、起きる地震の大きさと強さが予測できる』という立場に立っているんです。そこの根本のところがおかしいんじゃないかと」

それぞれの原発には、「耐えられる最大の揺れ」が設定されている。

大飯原発の場合、当時、最大で「700ガルまでの揺れに耐えられる」とされていたが…

樋口英明元裁判長
「700ガルを上回るような地震は、今回の能登半島地震を見てもわかるように、あの(能登半島)地震は2828ガルだったんですね。1000ガルの地震も、数多くあります。そういう意味から、極めて危険だということですね」

「設定された揺れを上回る地震」が起きる可能性を否定できない、という樋口さん。

建物は倒壊しなくても、停電や配管が壊れることで、「重大な事故が起きないとは言えない」と判断した。

ところが、ほとんどの裁判所は、原子力規制委員会にただ従い、原発がそれに適合しているのかだけを見ているという。

樋口英明元裁判長
「(控訴審では)規制基準に合格しているじゃないかと。それ以上はもう裁判所が、口出しすべきことじゃないと。裁判所とか、この法曹界の悪いところが出ていると思いますね。いわば『先例主義』なんですよね。根本は国民の命を守れるかどうか。耐震性が高いか低いか、素直に考えればそうなんだけど。裁判所の役割が分かっていないです。国民の命と生活を守るのが裁判所の役割です」

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