「日本の原発はみんなこんな所に建っていると思う」土砂崩れに海底隆起… 21年前に住民反対で中止された珠洲市の原発予定地、能登半島地震で甚大な被害【報道特集】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-03-16 06:30
「日本の原発はみんなこんな所に建っていると思う」土砂崩れに海底隆起… 21年前に住民反対で中止された珠洲市の原発予定地、能登半島地震で甚大な被害【報道特集】

1970年代半ばに原発建設計画が持ち上がった石川・珠洲市。住民の反対によって、原発建設は中止となりましたが、建設が予定されていた場所は、2024年元日の能登半島地震で甚大な被害を受けました。私たちの国の原発政策はどうなっているのか、北陸の現場を取材しました。

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「町が死ぬ」原発建設止めた人たち

21年前、住民の反対によって、原発の建設が中止になった町がある。石川県・珠洲市の高屋地区。

金平茂紀キャスター
「港の向こう側、山がせり出している辺りですね。このあたりに山を切り崩して原発を作ろうとしてたわけです」

原発が建てられる予定だった場所は、2024年、元日の地震で甚大な被害を受けた。

大きく崩れた山肌。土砂崩れによって、あちこちの道路が寸断されていた。

海底の隆起によって波消しブロックはむき出しになっていた。

珠洲市に原発建設計画が持ち上がったのは、1970年代半ばのことだ。

「日本最大の原発」。中部電力・北陸電力・関西電力による共同開発で、高屋地区と寺家地区に原発が作られる計画だった。

国と電力会社が、いわば国策として巨額の資金をつぎ込み、原発建設を推進していた時代。

過疎化が進んでいた珠洲市の市議会は、1986年、チェルノブイリ事故が起きた直後に原発誘致を決議していた。

原発建設推進派と反対派で町は二分された。

珠洲市 林幹人市長(当時)
「市と致しましては今後とも市民の声を聞き、町作りに資するよう、厳正に電力を始動していく考え方に変わりはない」

司会「以上で報告会を終わります」
市民「答えになってないでしょ」

女性「お願いですからやめてください。町が死んでしまいます、お願いします」

30年近くにも及ぶ住民の反対運動の末、2003年、電力3社は計画を凍結することになった。

2024年、建設予定地だった場所に揺れが襲った

その珠洲市を2024年、震度6強の揺れが襲ったのだ。原発の建設予定地は、震源のすぐ近くだった。

金平キャスター「予定地はここですよね」
塚本さん「防波堤からこっち。計画としてはそうなんだけど」

この地域で20代続いている「圓龍寺」の住職、塚本真如さん。原発建設反対の声をまとめた中心人物だ。

その「圓龍寺」も今回の地震で大きな被害を受けた。

本堂は何とか持ちこたえたが、隣接していた自宅は大破していた。

塚本さん「ここにいたんです。女房はここに挟まっていた、この辺で」
金平キャスター「奥さんはこの下敷きになったの?」

塚本さん「(自分1人で)引っ張り出したんですよ」

このわずかな隙間が、生死を分けた。妻の詠子さんは足に大ケガをして自衛隊のヘリで搬送された。

“原発反対”に無言電話や嫌がらせの手紙も

この日、部屋の中から見つかったのは、原発建設に反対していた頃の写真だ。

金平キャスター「若いね。原発いらないって。これいくつぐらいのとき?」
塚本さん「35、6だと思うな」

市役所に詰めかける住民たち。それでも反対する住民は、当初、町の中では少数派だった。塚本さんの家には無言電話が続き、嫌がらせの手紙が山ほど届いたという。

妻・詠子さんは、当時を振り返って・・・

金平キャスター「4人のお子さん。学校でいじめられたり?」
詠子さん「『未来の町』を小学校4年のとき2番目の女の子が絵を描かされた。うちの子どもに先生が『塚本さんは描かなくて良いからね』って」
金平キャスター「明るい未来とか原子力とか、そういうテーマの絵を先生が描かせたんだ」

当時の仲間だった小谷内毅さん。裏で運動を支えてくれた人も沢山いたと涙ぐむ。

小谷内さん
「誰1人欠けてもあの原発は止まらなかった。表に出た人は目立った人はいたけど、いろんな人がいたからこそと止まった」

嫌がらせを受けながらも、なぜ、塚本さんは声を上げ続けることができたのか。

塚本さん
「僕は坊主だからやるのは当然と言えば当然ですよ。『強い者の味方したら坊主じゃない』っていうのと『左行こうか右行こうか迷ったら、困難な方を選べ』と。『それは絶対悔いのないことだ』と教えたのは親父なんですよ。勝ち負けは別として、とにかく最後までやるっていうのを貫き通そうと思った」

「地震に自信!」「津波対策は万全です」当時の電力会社は安全性を協調

塚本さんと共に、反対の声を上げていた人がいる。

珠洲市で理容店「ヘアーサロンはしもと」を営む橋本弘明(76)さん。

今から28年前、報道特集は反対運動の最中にいた橋本さんを取材していた。カメラは、橋本さんの店にやってきた推進派の住民とのやりとりを記録していた。

推進派住民(当時)「夢ばかり追っていても生活できない。これからの珠洲市、現実的なところを示して、次の珠洲市をどう持って行くか、お互いに真剣に考える時期が来ている」
橋本さん(当時)「みんな良くなればいいと思ってやっているが手法の違いで」

橋本さん「いや、懐かしい。話す余地のない人もたくさんいた。この人はまだいい方」

これは当時、電力会社などが住民に配っていたチラシだ。

橋本さん
「これは電力(会社)の毎週(新聞折り込みに)入ってくる」

金平キャスター「『原子力発電所は岩盤のしっかりした場所が選ばれて・・・』今回、隆起したんだけど」

新聞の折込チラシ
「地震に自信あり!」「津波対策は万全です」

電力会社は「原発の安全性」を強調していた。

原発がすでに建った町では、人口流出に歯止めがかかり、「明るく、楽しいまちになる」とうたっていた。

のちに原発事故で甚大な被害を受ける福島県・双葉町については・・・

チラシ
「(福島県双葉町では)豊かになった財源により、農業の振興が図られています」

さらに推進派は、著名人を招いて講演会を開いたり、全国の原発への視察旅行に住民を招待したりしていた。

橋本さん「全部無料。食べ物からバスから全部一切合切。金取ったら誰も行かない」

「高屋に限ったことじゃない」原発を止めた人が思うこと

金平キャスター「今、皆さんこの運動やられた方は心から珠洲に原発がなくてよかったなと思っていると思いますよ」

橋本さん「みんな思ってますよ」

「珠洲に原発がなくてよかった」。住職の塚本さんのもとにも、地震後、そうした声が届いている。

珠洲市の住民「結果的になくて良かった」

塚本さん「(原発は)来てほしくないけど、持ってきたいという集落の貧しさみたいなのがあった。原発推進派が悪い良いというのでは片付けられない問題があった」

地震で一変した故郷を眺め、塚本さんはこう訴えた。

塚本さん「この事実を見れば、僕は高屋に限ったことじゃないと思う。日本の原発というのはみんなこんな所に建っているんだと思う。今休んでる原発もまた動かそうとしてるでしょ。そういう人たちにこういう実態を見てほしい。そして結論出してほしい」

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