“SNS疲れ”から逃れるには 防御力高めで利用者増加中の 「タイッツー」が参考になる?専門家と考えた

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-03-30 07:03
“SNS疲れ”から逃れるには 防御力高めで利用者増加中の 「タイッツー」が参考になる?専門家と考えた

Xの日本の利用者数は6000万人超、インスタグラムは3000万人超、と幅広い層の生活に根付くSNS。利用する上での“暗黙のルール”も存在し、疲れてしまう人も多い。そんな中、他人からの攻撃に対して“防御力が高い”というSNS「タイッツー」が8か月で30万人の利用者を集めている。どんなSNSなのか取材してみると、そこにはSNSとのほどよい距離感のヒントがあった。

【写真を見る】 細かい設定ができるタイッツーの投稿画面 その他の機能も紹介

良い面もあるけれど…SNS疲れはなぜ起きる

「見ず知らずの他人の感情に引きずられるのに疲れた」「負の部分ばかり流れてきて萎える」──。ネット上でこんな“SNS疲れ”とも言える書き込みを見ることがある。筆者自身も仕事でSNSを扱うことが多く、ネガティブなコメントに落ち込む日もある。

どうして、SNSで疲れを感じてしまうのだろうか。ネットやゲーム依存の予防や回復を支援している臨床心理士・森山沙耶さんに話を聞いた。

森山さんはSNSについて「友人とのつながりを形成・維持したり、自己表現の場として機能したりします」と評価する一方で、「他者との比較による自己イメージの低下、ネガティブな情報への接触、『仲間の投稿に反応しなければ』という強迫的な感覚を持つことなどでSNS疲れを感じることがあります」と指摘する。

この数年で、Threads(スレッズ)、Mastodon(マストドン)、Misskey(ミスキー)、Bluesky(ブルースカイ)といった新しいSNSが登場しているが、森山さんの指摘するような状況を打破できず、利用者数の大きな飛躍はない。

1週間で登録者が10万人を超えたタイッツーって?

たくさんの選択肢がある中、2023年7月、個人の開発者・ほくさんが1日で作り、最初は短文の投稿とフォローしかできない状態で公開された少し変わったSNS「タイッツー」が静かに注目を集めている。

ほくさんは今までに100個以上のサイトやアプリを作ってきた実績があるが、以前から「みんなが楽しめるSNSを作りたい」という思いを持っていたという。

ある日、Xの前身のSNS「Twitter」で開発に必要な機能が使えなくなったことをきっかけに「タイッツー」の開発に思い至ったそうだ。

Twitterの不具合が起きた時に、避難先として話題になり、公開から1週間で登録者が10万人を突破。さらに、TwitterがXに変わった頃からトレンドワード入りすることも増え、公開から8か月経った今では登録者が30万人を超えた。

攻撃を防御する機能を重視 タイッツー開発者の思い

タイッツーの開発においては、アカウント同士をつなげる機能よりも、▼ミュート(見たくない投稿を見なくてすむ)▼ブロック▼アカウントに鍵をかけられる…といった外部からの攻撃を防御する機能が優先された

ほくさんに取材すると、「今まで追加してきた機能は『防御力の方が高い』仕様にしてきました。例えば、『リプライ(返信)出来る範囲を限定する』や『フォローしていない人からのメンションは通知に出ない』などです」と答えてくれた。

なぜ防御する機能を優先したのか。込めた思いを聞くと、「使っていてなるべく不快にならず、なんか楽しくて、なんかほっこりする」SNSを目指しているからだという。

他にも、自分のアカウントの画面上から▼フォロー数▼フォロワー数▼通知件数のバッジなどの表示を消す機能もあり、見たくないものを見ないよう設定できる。

ほくさんは「『人間の理想ってこうだけど、現実はこういうものだよね』といった観点から仕様を検討しています」とする。

例えば、人間が持つ根本的な特性として「カッとなると普段やらないような行動をとってしまうことがある」とほくさん。そうだとすれば「カッとなったときに行動を起こしづらい仕様になっていると良いのでは」と考え、リプライをする時にはアラートを出すなどワンクッション置く仕様にしているそうだ。

専門家が語る SNSとの心地よい距離の取り方

たしかに、タイッツーは▼まだアプリがなくスマホに通知が来ない▼ダイレクトメッセージがない▼フォローできる上限が1000アカウント、など、他のSNSと比べて便利さがないことが逆に快適と感じるのかもしれない。

先ほどの臨床心理士・森山さんは「タイッツーでは、SNSとどのような距離感でいたいのかによって表示の仕方やリプライなどの設定を『取捨選択できること』に利点があると感じました。『自分の投稿に対する他者の反応や評価が気になる』という人は表示させないことを選択できます」と説明する。

では、心地良さを重視しているタイッツー以外のSNSとは、どのような距離感で付き合えば良いのだろうか。

森山さんは「SNSに振り回されるのでなく、自分の好みや特性に合わせて主体的に利用できている感覚を育むことが大切です。一般的なSNSにおいても、自分は何を表現したいのか、どのような人とつながりたいのか、どのような情報を得たいのかを自分の中で明確にしておくことで、『これ以上は踏み込まない』というラインを見つけやすくなるのではないでしょうか」と話す。

その上で「やり過ぎによって心身に不調をきたすケースもあるため、SNSで疲れを感じたときは現実生活での楽しみにも目を向けてみてください」とアドバイスをくれた。

SNSは本来、気軽に使える便利なサービスのはず。暗黙のルールに縛られず、自分にとって心地よい距離感を意識して使ってみることを心がけたい。

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