「もし私が男性だったら、深刻に考えていなかったかも」元海上自衛隊員が経験した“災害時の生理、妊娠”【マンガ・DIG 防災】

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2024-03-31 07:18
「もし私が男性だったら、深刻に考えていなかったかも」元海上自衛隊員が経験した“災害時の生理、妊娠”【マンガ・DIG 防災】

「生理が始まってどうしよう、ってなったんです」
2011年、東日本大震災。入隊1年目の女性海上自衛隊員が、被災者からかけられた言葉だ。

【マンガで読む】「もし私が男性だったら、深刻に考えていなかったかも」元海上自衛隊員が経験した“災害時の生理、妊娠”

現場にいた女性隊員はわずか。「だからこそ“女性視点”での支援がとても大切だと感じた」という。

災害時に、生理が来たら?
妊娠中や、小さな子どもがいるときに備えておきたいことは?

災害から命を守る知恵を深掘りする企画『DIG防災』。今回は、元海上自衛隊のイラストレーターが描くマンガを通して、「“女性視点”での防災」を考える。

(前編・後編のうち前編)

災害時の命と「こころ」を守るために

北海道在住のイラストレーター・ヤマモトクミコさん。

海上自衛隊に10年ほど勤めてから、出産を経て、イラストレーターになった。

入隊1年目に東日本大震災の支援に従事。
護衛艦に乗り、炊き出し、救助者の支援、燃料や真水の提供、救助者や遺体の捜索など様々な支援にあたった。

災害時、命と「こころ」を守るために何ができるか。
マンガで防災の知恵を発信しているヤマモトさんに、自らの経験をもとに考えるポイントを聞いた。

①災害時の生理、どうする?

東日本大震災の当時、護衛艦の乗組員で女性はほんの一握り。全体の1割を切るほど少数だったという。

ヤマモトさんは、女性の被災者の支援をすることが多くあった。主に担当したのは、「入浴」と「トイレ」の支援。

当時の艦内は、女性用の浴室やトイレは少なく、「充実している」とはお世辞にも言えない環境だったという。

艦内は、突起物や障害物がたくさんあり、迷路のよう。けがをしないように、トイレや入浴所まで案内し、一緒に行動した。

被災者から話を聞く機会もよくあった。被災地のこと、不安なこと、艦内で支給されたおにぎりがおいしかったこと。

中でもヤマモトさんの印象に残ったのは、「生理用品」のことだったと話す。

「生理が始まって、どうしようってなっていたんです。でも、支援物資にナプキンがあって本当に助かりました!」と声をかけてくれた人がいたのだ。

ヤマモトさんは、「きっと護衛艦の乗組員で、私が数少ない女性ということもあり、声をかけてくれたのだと思う」と振り返る。

米軍からの支援物資で、歯ブラシなどの衛生用品や生理用品が届いていた。
「支給されないよりはマシ」かもしれない。しかし支給品のナプキンと、普段使用しているものとは使用感が異なるケースが多いという。

後日、ヤマモトさんも支給品のナプキンを試してみた。日本製のものとは違い、ゴワゴワとしていて、サイズも大きく、ストレスを感じたという。

生理用品の使用感は、実際に使う人にしかわからない。
「もし私が男性だったら、そこまで深刻に考えていなかったかもしれません」というヤマモトさん。

「災害時に、ただでさえ憂鬱になりがちな生理が重なってしまうこと、そして使い慣れない生理用品を使用することは、さらなるストレスの負荷へとつながってしまうと思います」と話す。

この経験から、ヤマモトさんは「生理」についての備えを提案している。

・生理用品は、自分の体形に合った心地よいものを選んでおく
 (自分にとって必要な量よりも「やや多め」に準備)

・サニタリーショーツも、洗い替えや汚れたとき用に3枚以上用意

・おりものシートなども入れておくと、下着が洗えないときも安心

・生理痛がつらい人は、常備薬も準備しておくといい

これ以外にも、使い切りビデ、ウェットティッシュ、使用済みの生理用品を入れるための袋など、個人で気になるものは用意しておくとさらに安心だという。

ヤマモトさんは、「生理は災害時でも、来るときは来ます。だからこそ普段から信頼して使っている生理用品を、災害時用にも準備しておいてほしいと思います」と話す。

②妊娠中・子育て中の防災

ヤマモトさんが海上自衛隊で災害派遣を経験したのは結婚前。
当時は「妊娠・出産・育児」も未知の世界だったものの、2児の母になった今、改めて「妊娠中・子育て中こそ、防災の備えが重要」と感じているという。

「妊娠中や、小さな子どもがいる時期は、普段の生活だけでも大変で、防災グッズを用意をするのも一苦労だと思います。なので特に重要なことだけ伝えたいです」と、ポイントを3つにしぼって紹介してくれた。

①母子手帳は必ず持ち歩く

妊娠中はもちろん、小さな子どもがいる家庭でも、母子手帳を持ち歩くべきだという。

大きな災害が起きると、災害派遣の医療チーム(DMAT)が支援に駆けつけることがある。ただ必ずしも、歯科医や助産師が来てくれるとは限らない。「母子手帳」には予防接種歴や成長の記録が書かれている。
必要な支援を受けるためにも、「母子手帳」を持っておくべきだという。

②ミルクと非常食は事前に試しておく

防災用品でも、食品はかなり重要。特に代替できないのが「ミルク」。

ヤマモトさんは、災害時に普段と違うミルクや哺乳瓶を使うと、飲むことを嫌がる可能性があるため、防災用に備えるものも必ず事前に試してほしいと話す。
自宅にカセットコンロなどを備えておけば、電気が使えない状況でもお湯を沸かせる。

また、普段は完全母乳で育てているという人も、災害時にストレスなどで母乳が出なくなる可能性も考え、ミルクの備蓄を検討してほしいと話していた。

レトルトの離乳食や防災用の食事も、合うかどうか事前に確認しておくことが重要だ。
避難所ではアレルギー対応食は少ないため、アレルギーを持つ子どもには、特に合う防災食の準備が必要になる。

③在宅避難という選択肢もある

「在宅避難」とは、災害時に避難所へ行かずに自宅で生活する方法だ。
災害が起きても自宅が無事で安全に過ごせそうなら、水道や電気が止まってしまっていても、自宅で過ごす選択肢もある。

避難所の生活はプライバシーがあまりなく、ストレスがかかりやすいため、自治体によっては妊娠中の人や乳幼児のいる世帯に在宅避難をすすめている。

ただ、在宅避難には「支援物資や救助活動の情報が入りづらい」「食料や飲みものの調達が困難になる可能性もある」といったデメリットもある。

妊娠中の女性の心や身体の状態、子どもの様子は、各家庭によってそれぞれ異なる。
在宅避難も想定し、防災用品を多めに備えておくといいという。

ヤマモトさんは、「防災用品も、そのときどきの“我が家”仕様にアップデートしていくのがベストです。おむつやおしりふき、肌着、おやつやおもちゃ、絵本なども検討してもよいと思います」と話していた。

後編につづく)

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