『不適切にもほどがある!』Pが明かす“幻のタイトル”と『水曜日のダウンタウン』演出家が語る2週連続でほぼ同内容の“真意”【磯山晶×藤井健太郎】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-04-03 16:07
『不適切にもほどがある!』Pが明かす“幻のタイトル”と『水曜日のダウンタウン』演出家が語る2週連続でほぼ同内容の“真意”【磯山晶×藤井健太郎】

『不適切にもほどがある!』と『水曜日のダウンタウン』。何かと話題のTBSのテレビ番組を手がけるプロデューサーの磯山晶と演出の藤井健太郎が、番組制作の裏話や演出の意図、そしてテレビのあり方を語り合った。

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フジテレビの影響で変更された“幻のタイトル”

──金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』は阿部サダヲさん演じる“昭和のおじさん”が、令和の現代へタイムスリップし、“不適切”な発言を連発するという内容が話題を呼んだが実はある“幻のタイトル”が存在したという。

磯山晶:(『不適切にもほどがある!』のプロデュースを担当)
最初は、中年のおじさんが頑張る話が良いなと思っていました。で、『毎度おさわがせします』(1985年から1987年までTBS系列で放送されたテレビドラマ。思春期を迎えた中学生の性の目覚めなどを描く)のようなドラマはどうかなと話し合っていました。

ただ、『毎度おさわがせします』のような内容を今やると、「昭和は良かった」みたいなノスタルジーで終わってしまうから、それではつまらないなと。で、昭和の人が、令和の今にいたら、いろいろと齟齬があるだろうなという話になり、今日に至る感じです。

最初は『時をかけるダメおやじ』というタイトルだったんです。そうしたら、2023年の10月に、フジテレビで『時をかけるな、恋人たち』というドラマが発表されました。それで大至急変えなきゃと。

藤井健太郎:(『水曜日のダウンタウン』の演出を担当)
その『時をかけるダメおやじ』というタイトルで、ある程度のところまで企画は進んでいたんですか?

磯山晶:
そうですね。もうポスターも発注していました。昭和の人が令和にやってきたら不適切な言動が多いのでは?というのが元々のストーリーなので、「不適切」をタイトルに入れることは全然、気にならなかったです。

『時をかけるダメおやじ』がダメになって、『うちの父、不適切につき』とか、代わりのタイトル案をいっぱい考えて、(脚本を手がけた)宮藤官九郎さんと話して、結果、『不適切にもほどがある!』になりました。今はフジテレビのおかげで、本当に良かったなと思います。

「プレッシャーはありました」2週連続でほぼ同じ内容を流した“真意”とは

──3月20日に放送されたバラエティ番組『水曜日のダウンタウン』では、前週とほぼ同じ内容が放送されたことが話題となった。番組の最後に「今年度の番組予算が底をついたため」というテロップが流れたが、その“真意”は何だったのか。

磯山晶:
あれは本当に予算がないからなんですか?

藤井健太郎:
本当にそうですね。年度の予算に収めなきゃいけないんですけれど、全体からちょっとずつクオリティを下げていくのが嫌だから、その前の週まではキッチリ作りきって、足りない分は各所に向けて「足りてねぇぞ」と(笑)

磯山晶:
でもすごい勇気だなと思って、もし自分だったら「何だよ」と視聴者に言われるのが怖いですよ。

藤井健太郎:
変に期待されすぎても困るんで、別にこちらからは何も煽ってないつもりだったんですけどね。ただ、同じものを放送するということを予告で言っただけで。

磯山晶:
めっちゃ煽っていると思いますけど(笑)先週と同じ予告を出すという(笑)

藤井健太郎:
まぁ、暗に煽っちゃってはいるんですけど(笑)。でも、2回できることじゃないし、まだ他では1度も見たことのない手法だから「まぁいいかな」という感じですかね。ただ、その放送は絶対に面白くしなきゃいけないんで、やると決めた段階で、ちゃんと2回見るに耐えうるやつを作らなきゃというプレッシャーはありましたけれど。

磯山晶:
でも、普通に2回、ほぼ同じ内容を見ちゃいましたからね。もう本当に騙された感じですよ。

「コンプライアンスを踏み越えたものがやりたいと思ってるわけでは全然ない」

磯山晶:
『不適切にもほどがある!』は、(TBS内の)考査部という所と、「編成考査」という所にダブルチェックを受けていて…まず台本の準備稿でチェックがあって、次に決定稿でチェックして、更に「完パケ」という出来上がりの状態でもう1回チェックされて…。3かける2だから計6回のチェックを受けています。

ただ、第2話で、「今どきバージンなんて、はやんねえし、10代のうちに遊びまくってクラリオンガールになるんだよ!」というセリフがあって。

(事前に)OKは出ていたんですけど、出来上がった完パケを見たら怖くなっちゃって…。「あくまで昭和における個人の価値観です」というテロップを自主的に入れました。やはり会社名を出す(クラリオンはカーオーディオなどを手がける会社)時は、絶対にその会社の人が悲しまないようにしたいとは思いますね。

藤井健太郎:
僕も、特定の誰かが激しく傷つく可能性があるものには気をつけていますね。第三者の「見ていて気分が悪い」みたいな意見は正直どうでもいいと思うんですけど、差別がダメなのは当然として、その内容と直接関係のある誰かが傷ついたり嫌な気持ちになるものは気をつけなきゃいけないな、と。

磯山晶:
『不適切にもほどがある!』の冒頭に「この作品には不適切な台詞や喫煙シーンが含まれています」というテロップを流そうと結構、前から決めていたんです。

だけど、『水曜日のダウンタウン』を見てたら、1月10日放送の「ビートルズの日本公演で失神した人 今でもビートルズ聴き続けてなきゃウソ説」の中で、「こちらの映像には一部現代では不適切な表現が含まれます」というテロップが出て、「被った!」と思いました。

藤井健太郎:
コンプライアンスチェックの会議があるので、その映像を「使いたい」という話をそこでして、担当のスタッフに社内規定だったりを確認してもらったら、結果、使っても大丈夫だし、なんならルールだけでいえば注意テロップなしでも大丈夫かも…という話になったんです。ただ、それはそれで見ている人もびっくりしちゃうと思って、自主的に注意テロップは入れることにしました。

そういえば、昔はそういうコンプライアンスをチェックする担当もちゃんとは存在していなかったと思うんですけど、どうでしたっけ?

磯山晶:
でも、ドラマは台本を審査部というところに出して、「この表現はダメ」とか言われたりしてましたね。

藤井健太郎:
本当に際どいものは審査部に判断を仰いでいたと思いますが、バラエティでは当然、準備段階では想定できないこともあるし、細かい部分までいちいちチェックするそれ用の担当者というのは当時いなかったはずですね。だから昔は、割と自主判断の部分が大きかったんですけど、今は必ず担当に見せているんで…もちろんその判断が全て正しいとも思っていないですけれど、ラインを踏み越えたものが出る可能性はだいぶ減ってますよね。

特別に何かコンプライアンスを踏み越えたものがやりたいと思っているわけでは全然ないので、コンプライアンス担当にノーと言われて、「いや、これはこうだから」と戦うこともあるんですけれど、逆に「いいよ」と言われても、「ちょっとやめとこうかな」とこちらで判断してやめることもあります。

「意識してない出会いが面白い」「責任は重くなっている」2人が考えるテレビのあり方

藤井健太郎:
テレビって意図してない出会いが面白かったりするじゃないですか。そこは大事にしたいと思っています。アーカイブされていたり、配信で見たりするものは、最初から何となく概要がわかっているものが多いはずで、それがドキュメンタリーなのか、ドラマなのか、ジャンルすら知らずに見るということは多分ないので。

テレビであれば、たまたま見ていたら「あれ?急にドラマが始まったぞ」とか、出会い方を面白くしてあげることはできるので、そこはテレビの良いところかなとは思いますね。

磯山晶:
放送を出すときは相当なヒリヒリを味わうので、テレビは怖いですね。だからこそ、ちゃんとしなきゃとは思います。昔は本当にドラマ内のセリフとかも今ほど裏をとらなかったんですけど、今は全部、正しくないといけないから特に助監督が大変で…もう色んなことの裏をずっと取っています。

昔はまだパソコンもないから、裏のとりようがなかったというのもあるんですけど、今は何か、すぐ調べられるというのもあるので、地上波で番組を出す側の責任はどんどん重くなっているとは思います。

【プロフィール】

<磯山晶>
放送中のTBSドラマ『不適切にもほどがある!』のプロデューサーを務める。『池袋ウエストゲートパーク』『木更津キャッツアイ』『恋はつづくよどこまでも』、そしてNetflixシリーズ『離婚しようよ』なども手がけている。

<藤井健太郎>
TBSのバラエティ番組『水曜日のダウンタウン』の演出を担当。『クイズ☆正解は一年後』『オールスター後夜祭』などの演出も手がけている。

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