勤務時間外のメール返信しますか?「つながらない権利」を考える 仕事の私生活の境界線が曖昧に… 過重労働テレワークで異例の労災認定も【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-04-12 12:41

多様な意見からニュースを掘り下げていくvoice23。「テレワーク勤務」や「つながらない権利」について考えます。柔軟な働き方が可能となったテレワークですが、仕事とプライベートの境界が曖昧になり、ストレスを抱えている人も少なくありません。ある女性は、テレワークによる長時間勤務による長時間残業で労災認定を受けていることがわかりました。

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テレワークは出勤するよりも長時間労働になる傾向か

代理人の弁護士
「テレワークの部分が過重な労働であったということが認められて、労災認定がなされた」

3月に労災認定されたのは、横浜市の補聴器メーカー「スターキージャパン」で働く50代の女性。自宅でのテレワークで長時間の残業を強いられたことで、精神疾患を発症したといいます。テレワークによる労災認定は極めて異例です。

代理人弁護士
「上司は被災者に対して、チャットやメールを通して、特にひどい日には数分単位で膨大な業務指示をしていました」

女性は2020年頃から、新型コロナの影響でテレワークをするようになります。

みなし労働時間制の適用を受けながらの勤務でしたが、しばらくして残業が常態化。2022年1月と2月は、残業時間がそれぞれ100時間を超えていたといいます。

そして3月、女性は適応障害を発症しました。

女性の代理人 笠置裕亮 弁護士
「(女性は)休日もパソコン業務を余儀なくされていて、金曜日に業務指示があり『週明けまでに仕事をあげてくれ』と指示も」

女性が働いていた会社は…

スターキージャパン
「当該従業員に対しては個別に協議をしており、誠実に対応していく所存でおります」

女性とは別の会社で働く、製造業の男性も…

製造業・営業(20代)
「テレワークをしている時の方が、1時間強は長く仕事している気がします。普段出社してればすぐ相談して終えられるような(仕事も)、自分でちょっと時間かけて調べて仕事を進めないといけなかったり、そういったことが頻発してるような感じ」

連合が行った「テレワークに関する調査2020」では、「出勤しての勤務よりも長時間労働になることがあった」という回答が51.5%を占めています。

メディア広告系(40代)
「テレワークは基本的にいつも仕事している形になりますよね」
Q.労働時間増えていますか
「実質的には増えちゃったかもしれない。サボり方が難しい」

メーカー・営業(40代)
「今月からテレワークを始めます。自分が何をしているかみたいなところが、上司・会社から見えにくくなると思うので、自分のやったことをすごいアピールしなきゃいけないんだろうなって思って、がんばらないとなって」

建設業(60歳)
「仕事をしているんだけどダラダラやってる。結局夜中まで自宅で仕事してたが、段々慣れてくると『これじゃちょっとおかしいよな』って自分なりに感じ始める」

勤務時間外のメール返信は残業?リモート時代に合わせたマネジメントとは

小川彩佳キャスター:
これは皆さん、多かれ少なかれお感じになることはあるかと思いますけれども…。

影山知明さん:
今回の労災認定のケースの方は、本当につらかっただろうなと思いました。追い込まれていくと、本当は逃げられるといいってことってあるはずなんですけれど、そういう判断も難しくなっていくことがあるのかなって。

職場で顔を合わせる機会などがあれば、そういうところを見て声をかけるみたいなこともできるんでしょうけれど、そういうところでより孤立していってしまう面が、テレワークの難しさにはあるのかもなということを思います。

ジャーナリスト 浜田敬子氏:
テレワークの働き方をずっと取材してきているんですけれども、リモートワークそのものが悪いということではなくて。たとえば子育て中とか介護中とか、体調に異常がある方は、リモートワークによってすごく助かっているんですよね。

この方のケースなんかも、マネジメントの方に問題がある。つまり、リモート時代に合わせたマネジメントができていない

顔が合わせられなくなったときにコミュニケーションをどうすればいいのかとか、仕事の発注はどうすればいいのかということを考え直さなきゃいけないのに、それができていないんだと思うんですよね。

テレワークが上手く定着している企業では、きちんとルール作りや新しいマネジメントの仕方というのを考えていると思います。

藤森祥平キャスター:
我々もミーティング、テレワークを使いながら。

小川キャスター:
「news23」でも導入していますからね。私もとってもとっても助かっています、リモート勤務には。

藤森キャスター:
そのテレワークが広がってきた現象としては、職場の外でも、たとえばメールやチャットを使って仕事のメッセージを送るケースが多くなって、勤務時間外にメールなどを受け取るケースが増えてきているかもしれません。この勤務時間外のメールの確認ややり取りは、果たして仕事になるのかどうか?

藤澤昌隆弁護士に聞くと、勤務時間外にメールやチャットの返信を求める場合は労働時間に該当するので、残業扱いになるおそれがあるとのことです。

ただ、返信が必要ありませんということならメールやチャットを送信してもOK。つまり、送るだけだったら大丈夫だそうです。

ですから労働者の皆さんに対して、勤務時間外にメールやチャットを返信しないように伝えておくことが大事になってくるということでした。

海外では「つながらない権利」が法制化…あなたは主張できる?

小川キャスター:
今やSNSでつながることが、どこでもいつでも当たり前になっている。そうしたなかで起きているこの問題ですけれども、海外では、逆に「つながらない権利」というのが注目されているようです。

2月にオーストラリアではつながらない権利を法制化して、勤務時間外に雇用者が労働者に連絡することを原則禁止としました。実は2017年に、すでにフランスやイタリアでは法制化されています。どちらもバカンスを大事にする国ですよね。

このつながらない権利について、街の方はどのように感じているのか聞きました。

工場勤務(40代)
「全然ありだなって思いますね。そういう風に決めてもらった方が、働く側としては楽かなって思いますけど」

不動産業(25歳)
「仕事の電話だったら(営業時間外でも)しょうがないなと思うので。それが自分の案件で、自分の数字に関わるならしょうがないなと思うんですけど」

人の命に関わる現場で働く人は…

看護師2人組(20代)
Q.つながらない権利主張できますか
「いや、できないよね」
「できない。命にかかわることなのに、言っていいのか分からないです。『つながらなくてもいい』と言われても、自分だったら後悔もしたくないだろうし、(電話を)取ると思います」

藤森キャスター:
これも職場環境、立場、業界、さまざまでしょうね。日本でも、すでにつながらない制度を導入した企業があり、取材しました。

設備工事会社「オーテック」の取り組みでは、たとえば平日に休みを取っている社員のもとに取引先から電話が入ってきた場合に、本人ではなくて会社に自動転送されるそうです。出社している他の社員が対応するようにしていると。

担当者の白石課長に聞くと「社員から『携帯電話に取引先から電話が入り休んだ気にならない』という声があったので、こういうルールを取り入れた」ということです。

導入して5か月、社員の皆さんからは「以前は社用携帯に3回くらい電話がきていた。こまめにチェックしていたが、今はほとんど気にしていない」(山根さん・30代)、「ゆっくりと休日を過ごせるようになった」(天野さん・20代)と好評だそうです。

小川キャスター:
休まないと、仕事への意欲というのはなかなか湧いてこないところもありますし、こうしたシステム化をすることによって、今まで非効率だった部分が効率化するところもいいですよね。

ジャーナリスト 浜田敬子氏:
私、反省がありまして。「AERA」の編集長時代に土日もずっと企画を考えていて、いい企画を思いつくと、メールとかしちゃっていたんですね。月曜日の朝に伝えるのを忘れちゃうんじゃないかと思って、みんなにすぐ「月曜日これやろうね」って。

そうしたらある時、編集部員から「休日にSlackを送らないでください」と言われて、そこから送らないのをルール化しました。

今、予約機能ってあるんですよね。私は思いついたときに全部Slackを送っておくんだけれど、月曜日の朝8時に一斉に送信するみたいな。そういう機能もあるので、使おうかなと思って反省をしたことがあります。

影山知明さん:
つながらない権利、いいですよね。僕も仕事柄というのもあって、休日はほとんどないんですけど、あまり意識せずにこられたのは、電話も出ないし、メールやチャットも返信しないんですね。

だから、電話に出なきゃいけないし、すぐ返事しなきゃいけないという風になっていることが、ちょっとおかしいというか。リアルタイムにコミュニケーションを取らなきゃいけない仕事の前提が、見直されるといいのかなとは思いました。

藤森キャスター:
ついつい、コロナ禍でコミュニケーションをもっと深めようとか、ちょっとしたことを伝えたいと思って休日でもうっかり短く送っちゃったりして「あ…」って。

ジャーナリスト 浜田敬子氏:
返事は求めていないんですけれどね、こっちは。でもそれが、受け手からするとすごいプレッシャーと。

藤森キャスター:
はい、返信は不要です。

小川キャスター:
気をつけていきましょう。

「みんなの声」は

NEWS DIGアプリでは『休日の仕事の連絡』などについて「みんなの声」を募集しました。

Q. 休日に受ける仕事の連絡 どう思う?
「仕事だから対応すべき」…5.6%
「各企業でルール化すべき」…33.8%
「法制化で規制すべき」…30.4%
「休日なので対応しないで良い」…28.9%
「その他・わからない」…1.3%

※4月11日午後11時27分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません

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