日銀金融政策「現状維持」。円安は?物価上昇リスクは?消費への影響は?【Bizスクエア】

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2024-05-02 06:00
日銀金融政策「現状維持」。円安は?物価上昇リスクは?消費への影響は?【Bizスクエア】

歴史的な円安で物価上昇リスクや消費への影響が心配される中、注目された日銀の金融政策は「現状維持」。

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1ドル=158円台に突入 円安 訪日客に恩恵も…

「アメリカの牛肉もおいしいけれど、これは別レベル。和牛のために日本に来たいと思っていた」とロサンゼルスから来た観光客。築地に店を構える外食大手・ワタミの和牛串のテイクアウト専門店「築地 牛武」。

一番人気は、A5等級の和牛を使ったサーロイン串。値段は1本3000円(税込)。1日平均200本以上売れるそうだ。フロリダからの観光客は「これは20ドル。向こうでは90ドルほど。本当に高い。今まで見た中で1番安い」と話す。来店客の8割が外国人。3月は売上目標2000万円を達成したという。

ワタミ ブランド広報室 坂本まゆさん:
訪日外国人の方が増えているので、そちらに向けてインバウンドに特化した店を出した。

東京銀座のとんかつ店。「和心とんかつ あんず はなれ」。開店前から行列を作っていたのは日本人。目当ては1日20食限定の「あんず膳」群馬のブランド豚を使った、1650円のランチメニュー。

一方、外国人客が食べていたのは「豚ヒレのシャトーブリアンかつ膳」5280円。「このレベルのとんかつをオーストラリアで食べたら2~3倍はする」するという。一方、日本人客に「シャトーブリアンの高価なメニューがあるのは知っていたか?」と聞いたところ「知っているが、ランチとしては手が出ないような値段」と答えた。

店側は、毎朝行列ができる「あんず膳」は赤字のため、提供数を増やしたくないそうだ。

アトム株式会社 外食事業部マネージャー 森大輔さん:
(外国人客に)宮崎牛をおすすめすると大体頼んでもらえる。値段はあんまり関係ない。

円安が止まらない。4月初め、1ドル=151円台だった円相場は90年以来の円安水準を連日更新し、4月27日6時時点で158円37銭まで下落。下落の理由は、アメリカ経済の強さを反映する指標の発表が相次ぎ、4月17日にはFRBのパウエル議長が「インフレの抑制には予想以上に時間がかかりそうだ」などと発言。利下げが遠のくとの観測から、34年ぶりに最安値を更新した。

日銀決定会合を翌日に控えた4月24日、1ドル=155円70銭を超え、「防衛ライン」とされた155円をあっさり突破。そして、会合の結果が発表された4月26日午後0時半すぎ、1ドル=156円まで円安が進んだ。

1ドル=158円台に突入 日銀 政策「現状維持」

日本銀行 植田和男総裁:
当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。

急速な円安を食い止めるため、何らかの対応に動くのではとの観測もあったが、日銀の答えは「ゼロ回答」だった。「政策変更がなかったのは、円安の進行が無視できる影響という認識か?」という質問には「基調的な物価上昇率への大きな影響はないと皆さん判断したということになると思う」と植田総裁は回答。円安が物価高に無視できない影響があれば、政策変更の判断材料になるとしながらも、現在の円安は「大きな影響はない」との認識を示した。

会見が始まった午後3時半には、1ドル=156円1銭だった円相場は、終了間際の午後4時半には156円台後半まで下落した。市場に為替介入への警戒感が高まる中、鈴木俊一財務大臣は「特にコメントはありません」と話した。

1ドル=158円台に突入 政府日銀 円買い介入は?

――日本時間の4月26日の夕方から27日の朝にかけて介入があるだろうと思ったが、なかった。

バンク・オブ・アメリカ 主席日本FX金利ストラテジスト 山田修輔氏:
介入がないこと自体がもうニュース。いろいろ理由はあるだろうが1つは、かなり長期戦になると思うのであまり低い水準で介入し始めると、防衛できないリスクを考えた可能性がある。

――財務大臣に「コメントがない」と言われるともう手がないみたいな感じがする。

バンク・オブ・アメリカ 主席日本FX金利ストラテジスト 山田修輔氏:
先週、先々週と海外投資家を回っていたが、今は日本に構造的な赤字があってそれに加えて日米の金利差が、なかなか縮まらないだろうという感じになってきている。ドルを買いたくてたまらない、円売りをしたいと。ただ為替介入のリスクがあるので、ドルを買うのを控えていた。それが155円を超えても(介入)する気配がないので、そこでもう円売りのマグマが解き放たれた感じ。160円でも防衛がないとスルスルといってしまうリスクが非常に大きい。

――来週の予想で、上値は159円80銭までいく可能性があると。

バンク・オブ・アメリカ 主席日本FX金利ストラテジスト 山田修輔氏:
そこまで試しにはいくとは思う。どこで介入があるかというポイントになってきて、おそらく160円は防衛ラインではないか。そこまでは来週超えていかないと思う。

――介入やった場合に、どれぐらいの規模で、どれくらいやれば効果があるのか?

バンク・オブ・アメリカ 主席日本FX金利ストラテジスト 山田修輔氏:
難しい。2022年は3回。大きいのを2発やって米金利の上昇が止まったので事後的に見ると押さえられた。(結局その時は130円ぐらいまで押し戻した)はい。ただ今回、性質が違って金利の上昇は激しくないが、金利差が開いていて縮まない限りは、円安が続くという見方になっている。ということはFRBが利下げを始めるのは、2024年の年内にできるかできないかという話であと6か月ぐらいある。以前と同じような介入をやると、市場参加者にとっては良い水準でドルを買えるので、あまり効かない。

――ちょっと下がれば、ドルを買いに行く人がいっぱい入ってくると。

バンク・オブ・アメリカ 主席日本FX金利ストラテジスト 山田修輔氏:
じわじわとよりも少額のものを頻繁にしつこくやる介入じゃないと効かないと思う。おそらく総額でいうと、2022年9兆円ぐらい使っているが、今の状況が変わらなければその額は超えていかなければいけないと思う。

――イエレン米財務長官が4月25日に「為替介入は稀に過度な変動があった場合にのみ、事前協議して行われる」と釘を刺すかのような発言をしている。

バンク・オブ・アメリカ 主席日本FX金利ストラテジスト 山田修輔氏:
だから難しい場面ではある。ただ一般論としてはこの通り言うしかない。アメリカも今、少しインフレに苦しんいる。ドル安政策には転じられない。ただ日米韓3者の財務大臣会合は終わっていて介入自体のハードルはそこまで高くないと思う。ただしつこくずっと(介入を)やっていくっていうことになると、将来的には米債を売らなければいけないリスクも出てくるので、通貨外交をしっかりやっていく必要性は非常に強い。

――アメリカとは話はついているが、続けるためにはまだまだ通貨外交の努力が要るという見方か。

バンク・オブ・アメリカ 主席日本FX金利ストラテジスト 山田修輔氏:
はい、そう思います。

円安が好循環のブレーキに!? 日銀 物価の見通し上方修正

為替について日銀・植田総裁の発言。「円安は基調的な物価上昇率に今のところ大きな影響を与えていない」と話した一方で「為替の変動で無視できない影響が発生すれば、金融政策の判断材料になる」と話した。

――植田総裁の発言で投機筋は勢いづいた。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
植田総裁は為替に対して結構ナーバスになっていて、それが動くことで金融政策変わるのではないかという市場の思惑があったので、このコメントが出て「えっ」というふうに思った方が多いだろう。そう意味では今回コミュニケーションに問題があったと思う。

物価見通しも新たに発表された。2024年度の物価見通しは前回1月の2.4%から上方修正し2.8%になった。そして2025年度は1.8%から1.9%に引き上げている。

――日銀は物価に対しては見方を上方修正し、しかも今回初めて出てきた2026年度の数字も1.9%。いってみれば2%の物価目標をもう5年ぐらい達成できるだろうという見方をしているということか。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
日銀が目標にしてる2%にはまだ達してないので、緩和的な状況は続けるというメッセージも出ている。

次に実質賃金を見てみると、名目賃金上がっても、物価が上がりすぎて実質賃金が下がるということが23か月続いてこれが消費を引っ張って、いわゆる好循環の妨げになるのではないかという懸念が出てきている。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
この先の予想として政府の方も6月に所得税減税とかいろいろなことをやっている。賃上げも起きているので、6月か7月ぐらいには実質賃金の方がプラスになるのではないかという期待感があったが、今回、円安・原油高と合わせて考えると、物価が上がって、なかなか実質賃金がプラスにならないという意味で、日本経済の好循環の先行きの見方が少し暗くなるニュースだ。

そういう中で、今後の金利の動向が注目される。日銀の今後のスケジュールは6月13日~14日、7月30日~31日、9月19日~20日の会合がある。

――次の利上げはいつになるのだろうか。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
植田総裁が基調的な物価の変化があれば利上げをすると言っているので、普通に考えると9月になると思うが、今の現状から考えるともっと前倒しになっていくと思う。

――そうすると早ければ6月ということもあるかも知れない。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
はい。

――考えてみると、通貨を防衛するために利上げをしなければいけないような国になったのかと思うとこの40年ぐらいの変化に驚くばかりだ。

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山田修輔 氏
バンク・オブ・アメリカ
主席日本FX金利ストラテジスト

矢嶋康次氏
ニッセイ基礎研究所チーフエコノミスト 金融・日本経済を中心に調査研究
近著「記憶の居場所 エコノミストがみた日常」

(BS-TBS『Bizスクエア』 4月27日放送より)

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