円安と物価の背後に日銀が利上げを急いだ「もう一つの理由」 住宅ローン金利や為替相場の行方は?

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2024-08-04 07:00
円安と物価の背後に日銀が利上げを急いだ「もう一つの理由」 住宅ローン金利や為替相場の行方は?

日銀が利上げを決めたことで、日本は本格的に「金利のある世界」に戻ろうとしています。本来なら景気の過熱を抑えるための利上げはなぜこのタイミングで行われたのか。直近の円高相場や住宅ローンの金利の行方も含めて、専門家に聞きました。

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日銀が恐れた「利上げできなくなるリスク」とは?

日本銀行は7月31日まで開いた金融政策決定会合で、政策金利を0〜0.1%から0.25%程度に引き上げる利上げを決めました。「マイナス金利政策」を解除して17年ぶりに利上げした3月の会合からさらに一歩、金融引き締めを進めた形です。

「“勝負”を懸けるしかなかった」追加利上げに踏み切った日銀の立場について、大和証券チーフエコノミストの末廣徹さんはそう表現します。

日銀の植田和男総裁は31日の記者会見で利上げを判断した理由について、個人消費が「底堅い」こと、経済・物価が「オントラック」、つまり見通し通り推移していることなどを挙げました。

しかし、このように日本経済の一定の強さを強調するのは「建前」ではないか、と末廣さんは指摘します。というのも経済見通しが変わらず、景気に過熱感が見られない“オントラック”なら中央銀行は現状の金融政策を維持するのが定石だからです。

末廣さんの見立ては「今、利上げしておかないと後々できなくなるリスク」を重視して、このタイミングの引き締めが日本経済にとって良いと日銀が判断した、というものです。

具体的には3つの要素が重なりタイミングが形作られたといいます。

①この先、消費が現在よりも落ち込めばさらに利上げしにくくなること。
②ドル円相場で円高が進むと、円安による物価高を是正するための利上げ、という理由付けができなくなること。
③さらに政府・与党から利上げを求める声が相次いでいたことの3点です。

では「利上げできなくなるリスク」とは何を指すのでしょうか?

日本は異次元の金融緩和で超低金利環境が長く続きました。

その環境が変わらず、必要なときにも利上げができない国というレッテルを貼られるのが問題だと末廣さんは言います。

「ある程度金利が上下する国でないと、必要以上にお金を借りるなどのモラルハザードが起こり、実体経済で頑張って稼ぐプレッシャーにならない」

例えば業績が振るわないのに低金利の借金で生き延びる「ゾンビ企業」が増えるなど、日本の成長力を阻害することが懸念されるというのです。

日銀はこの先どの程度利上げを続けるのでしょうか。経済の状況を見つつ、「年内にもう1回、来年の前半にもう1回の利上げで、0.75%が到達点かなと思います」と末廣さん。

ただこれは日本経済に悲観的なスタンスの場合で、1%ぐらいまでとする予想も多いとのこと。

約7割の人が選ぶ住宅ローンの変動金利はどこまで上がる?

家計にとって気になるのは、利上げが続けば住宅ローンの変動型金利の上昇も進む点です。

住宅ローン契約者の約7割が選ぶ変動型金利はどこまで引き上げられるのでしょうか。

末廣さんは、変動型金利が固定金利よりも相当低い状況が正されないと、固定金利を選んだ人が報われないので、ここにも一種のモラルハザード的状況が見られると指摘します。

「固定金利を選んで正解だったかも、というところまで変動金利を持っていきたいのでは」となると、やはり1%までの利上げが目安となるといいます。

今回の日銀の会合では円安が物価に上振れリスクを生じさせていることも利上げの理由とされました。輸入物価の高騰などで家計に負担となる円安は今後どうなるのでしょうか。

疑似的トランプ相場で円高に…ただし「隙あらば円安」

現在、一時の「止まらない円安」は和らいでいます。この円高進行は様々な要因が考えられるとしつつ、末廣さんが着目するのは「疑似的なトランプ相場で明らかになったこと」です。

7月14日にドナルド・トランプ米前大統領が襲撃された翌週、金融市場はトランプ氏の大統領復帰の可能性が高まったとの見方で「トランプ一色」の動きとなりました。ただ、末廣さんはここで米国債などの長期金利が上がらなかった点を強調します。

「かつての“トランプ相場”の一番大きい特徴が長期金利上昇でした」

なぜ今回は長期金利が反応しなかったのでしょうか。2017年のトランプ政権時は米長期金利が1%台だったのに対し今はおよそ4%台で上昇余地が少ないことがある、といいます。

擬似的なトランプ相場が生じる中で、仮にトランプ氏が再選されても金利が上がらないので(米債券を買うための)ドルを持っててもしょうがない」という観測が広がり、スパイラル的に円の買い戻し起きた、という分析です。

その上で、過去には買い戻しの動きが生じると大体15円ぐらいの幅が出ることが多いことから、1ドル160円程度まで到達した円安は145円台まで戻ると末廣さんはにらみます。

一方、慢性的な貿易赤字など日本経済の構造に起因する「弱い円」という状況は変わっておらず、「“隙あらば円安”という動きはありそう」という留保も付け加えました。

今後も為替や利上げに関する動きで、日本経済の地力が試される局面が続きそうです。

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<取材協力>
大和証券エクイティ調査部チーフエコノミスト 末廣徹[すえひろ・とおる]

(TBS NEWS DIGオリジナルコンテンツ「経済の話で困った時にみるやつ」より)

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