家の耐震・防災リフォーム最前線 キーワードは「塗る」「低コスト」「最強の糸」【THE TIME,】

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2024-05-30 07:30
家の耐震・防災リフォーム最前線 キーワードは「塗る」「低コスト」「最強の糸」【THE TIME,】

リフォームで「地震に強い家にする」技術が続々と開発されています。“塗るだけで家が強くなる液体”に“最強の糸での耐震”、さらには“低コスト&短期間”の技術など、耐震・防災リフォームの最前線を取材しました。

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どんな家も地震に強くする“塗料”

まずは、今注目されている塗料、「レジリエンスウレア」。

一見すると水あめのような、ニスのような、ねっとりと粘り気のある透明の液体ですが、その強度がすごい!
素材のウレア樹脂は、米軍の弾薬庫やアメリカの特殊部隊SWATの防弾チョッキにも使われているほどで、家の外壁に塗るだけで強度が増し、劣化を防ぐとのこと。また防水性もあり、浸水にも強いといいます。

これが耐震性にどう関係があるのか…?
実際に現場でレジリエンスウレアを使っているリフォーム会社に聞くと、ポイントは「柔らかくて強い」ことだと話します。

ホームサービス株式会社 力丸広昭さん:
「地震の揺れで、塗料の膜が固いと(壁などが)割れてしまうが、柔らかいと揺れの動きについていくので亀裂が入りにくく、骨組みを傷めづらい」

では、一体どのくらい強いのか…。
マーケティング部の原千晶部員が、生卵にレジリエンスウレアを塗って試してみました。
はけでたっぷり塗りつけてから3時間。乾いた透明の膜が殻を覆っています。
この卵を30cmほどの高さから落としてみると…

マーケティング部 原部員:
「何も塗っていない卵は割れて、レジリエンスウレアを塗った方はひびも入っていません!」

さらに、レジリエンスウレアを塗った段ボール箱に大人が乗っても…びくともしませんでした。

もともと、道路やダムなどの耐久性向上に使われていたウレア塗料。これまではグレー色が多く住宅には不向きだったところ、透明タイプが開発され住宅業界に激震が走ったといいます。

リフォーム産業新聞 福田善紀編集長:
「住宅の耐震性を担保するにはやっぱり住宅の劣化を防ぐということが重要。この素材であれば住宅にも使いやすいということで、いま住宅にも使われだしている」

しかも、一回塗れば、耐久年数は約40年!一般的な塗料に比べ4倍長持ちとのことですが、まだ普及していないため、値段は通常塗料の1.5~2倍というのが現状です。

補助金活用で費用ゼロも!“低コスト工法”

耐震リフォームはしたいけど、費用が…という人も多いはず。
リフォーム産業新聞の福田さんによると、「住宅にもよるが耐震リフォームで300万円、400万円かかるケースもある」とのこと。

そんな中、注目されているのが低価格で工期も短い、「低コスト工法」。
ポイントは“壊さないリフォーム”です。

耐震リフォームといえば、天井と床を解体して、壁をしっかり補強するのが一般的ですが、天井や床の撤去・復旧に手間とコストがかかります。

しかし低コスト工法では、天井や床はそのまま。
壁に合わせた合板を上から何枚も貼って補強していく工法で、枚数を増やすことで、天井を壊す工事よりも強度が高くなるといいます。

しかも、天井や床の解体がないので「費用も150~200万円ぐらいに抑えられる」と、低コスト工法の開発メンバーの一人、名古屋工業大学の井戸田教授は話します。

さらに…

名古屋工業大学 井戸田教授:
「行政が出してくれる補助の対象になっている県が西日本を中心に20県以上あります」

実は多くの自治体で耐震リフォームには100万円以上の補助金が出ます。
高知県では、低コスト工法でリフォームした多くが、補助金のみで済んだとのこと!
高齢者が多く、古い家屋が密集している住宅街への活用も期待される技術なんです。

超軽量・超強力の「糸」で揺れを防ぐ

さらに、今話題の耐震はなんと、「糸」。
群馬県にある世界遺産・富岡製糸場でも、この「糸」の耐震技術が使われています。

貴重な文化財ゆえに、「元に戻すことができる技術」で補強しなければならないということで、どのような耐震がなされているのか、建物の中に入ってみると…。

大きな壁にワイヤーがX状に張られています。天井にも同じワイヤーがX状に。

このワイヤー、実は日本生まれの最新素材!その名も「カボコーマ」。
ポイントは、「軽くて強い」こと。
鉄の5分の1の重量で、引っ張り強度は10倍強い、という新素材なんです。
しかも錆びないので、木材を痛めることもありません。

その軽さのワケを探るべく、ワイヤーを切断してみると、細くて黒い糸の束が7本出てきました。

この束ねられている黒い糸が炭素繊維。直径4ミクロン、髪の毛より細い炭素繊維を50万本束ねて超強力なワイヤーにしているのです。
炭素繊維ということで、手に取ってみたマーケティング部の原部員も「軽い!軽ーい!」とその軽さにビックリ。

この新素材ワイヤー「カボコーマ」を、壁や天井にX状に張ることで筋交いが動かず、地震で建物が横に揺れるのを抑える力を発揮するといいます。

すでに一般の木造住宅でも、ワイヤーがデザインの一部として設計され、補強に使われ始めているといいますが、気になるお値段は…

カボコーマを開発「小松マテーレ」 奥谷晃宏さん:
「極端に大きくない家庭で150万から200万。意外と皆さん知らないんですけど、だいたい日本はどの自治体も1軒当たり150万円くらいまでは補助金でまかなえる」

まだ補助の対象ではありませんが、2年後の許可取得を目指しているそうです。

安住アナも驚いた?乃木坂46の“腕さばき”

スタジオでは乃木坂46の一ノ瀬美空さんが、強度が高い塗料「レジリエンスウレア」を塗った生卵で、その強度を自らチェック。腕を高速で動かしながら何度も卵を台に叩きつけるもヒビすら入らず「すごい」と感激の一ノ瀬さん。この様子を見た安住紳一郎アナウンサーは、「美空ちゃんのひじから下がそんなに速く動くとは思わなかった!もう一回やってみて!」と叩きつけをリクエスト。何度やっても割れない卵にスタジオからは驚きの声が上がった。

また、安住アナからは、詐欺への注意喚起も。最新のリフォーム技術を紹介すると、それに便乗した詐欺が増えるとし「全部知らない話だと信じないけど、例えば『今日テレビで紹介した最新の塗料とかありますよね』とか言われると話に引きずられやすい」と注意を呼び掛けた。

実際に最近では、ガス給湯器の点検詐欺が急増。去年1年間で初めて1000件を超える相談件数になっている。点検を装って不安を煽り、新しい機器への交換を勧める手口で、こちらも注意が必要と話した。

(THE TIME, 2024年5月29日放送より)

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