「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」という法律があるのをご存知でしょうか?な、な、長~い、長すぎるぅ~、覚えられな~い…という方も多いことでしょう。 そう、法律の正式名称ってとかく長いものなんですよね。ですので […]
「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」という法律があるのをご存知でしょうか?な、な、長~い、長すぎるぅ~、覚えられな~い…という方も多いことでしょう。
そう、法律の正式名称ってとかく長いものなんですよね。ですので、多くの場合、呼びやすくした「通称」なるものが存在します。この「愛がん動物用飼料の…」という法律にも「ペットフード安全法」という通称があります。
ところで、「愛がん動物用飼料」という言葉に対して違和感を覚えた方がいるかもしれません。確かに、家族であるペットが口にする食事を、「飼料」と呼ぶことには抵抗ありますよね。しかし、そこを突っ込むと先に進めないので、とりあえずここではわきに置いときましょう。
さて、この「ペットフード安全法」とはいったいどんな法律なのか、ということをできるだけわかりやすくお話しするので、ゆっくりと下へスクロールしてくださいね。
「ペットフード安全法」って、なんのための法律?
この法律は、ズバリ「ペットフードの安全性」を確保してペットの健康を守るための法律です。きっかけは、2007年春にアメリカで起きた、「メラミン」という有害物質が混入した原料を使って作られたペットフードによる、大規模な犬・猫の健康被害。
幸い、日本での犬・猫の健康被害はなかったのですが、なんとその頃、日本にはペットフードそのものを規制する法律がなかったのです。そこで、ペットの食の安全性に対する不安が高まったのを機に、2009年6月1日に施行されたのが「ペットフード安全法」です。
ペットフードとは、「犬・猫の栄養に供することを目的として使用されるもの」。いかにも法律的で堅苦しい言い回しですが、つまりは、総合栄養食や一般食に分類されるペットのごはんのほか、おやつ、スナック、ガム、サプリメント、生肉、ミネラルウォーターを指します。
基準・規格に合わないペットフードはダメ!
ペットフード安全法では、ペットフードを製造・輸入・販売する事業者に対して、さまざまな規制や罰則などを設けることによって、ペットフードの安全性の確保を図っています。
成分規格と製造方法基準
国内で販売されるペットフードに対して、成分規格を設定。
- 農薬
- 汚染物質(環境中にあるもので意図せずペットフードに含まれる物質)
- 添加物
- その他(メラミン)
について上限値を設けています。
また、製造方法基準では、有害微生物に汚染された原材料の使用や、毒性のある添加物の使用を禁止しています。
ちょっとヘェ~な話。
キャットフードに使ってはいけない添加物に「プロピレングリコール」という物質がありますが、これは犬用のセミモイストフード、ソフトドライフード、一部のトリーツに使われる「保湿剤」で、人間が食べる生麺や餃子の皮などにも使われています。わんちゃんや人では安全な添加物であっても、ねこちゃんにとっては有毒になることがあるのです。
わんちゃんとねこちゃんが一緒に暮らしている場合は、気をつけた方がよいかもしれませんね。ねこちゃんが餃子の皮を食べることはないかもしれないけれど…。
表示に対する基準
ペットフードのパッケージには、以下5項目の日本語での表示が義務付けられています。
- ペットフードの名称(商品名。犬用か猫用かを明記)
- 賞味期限(年月日または年月を表示)
- 原材料名(原則として、添加物を含め使用した原材料をすべて表示)
- 原産国名(最終加工工程を完了した国を表示)
- 事業者名および住所(会社名など事業者の種別と名称または氏名、住所を表示)
ここでもちょっとヘェ~な話。
ペットフードの表示のルールについては、ペットフード安全法に加えて、ペットフード公正取引協議会が定める「ペットフードの表示に関する公正競争規約」でも定められています。
公正競争規約では、ペットフード安全法で定められた5項目のほか、「ペットフードの目的」「内容量」「給与方法(与え方)」「保存方法」「成分」についても表示が求められています。
ペットフードの表示については、また別の機会に詳しくお話ししますね。
事業者の責任と義務
ペットフードの製造・輸入・販売を行う事業者には、ペットフードの安全性の確保において、以下のように、とても大きな責任が課されています。
事業者の責任
- 安全性にかかわる知識・技術の習得
- 原材料の安全性の確保
- ペットの健康被害を防ぐために必要な措置(製品の回収など)の実施
また、国が事業者を把握し、万が一のときの追跡(トレーサビリティー。このあとご説明しますね)のための重要な情報源として、ペットフードを取り扱う事業者に対して「届出の義務」や「帳簿の備え付けの義務」を課しています。
事業者の義務
- 届出:ペットフードの供給元となる製造業者と輸入業者は、事業を営む前に国に届け出なければなりません。
- 帳簿の備え付け:ペットフードを取り扱う製造・輸入・販売事業者は、事業の記録を帳簿に記載しなければなりません(ペットショップやホームセンターなどの小売業者は除く)
もしものときは、とことん追いかける
万が一異常が認められたペットフードが流通してしまった場合は、異常な製品がどういった経路で、どこにあるのかを、しっかり追跡できるようになっています。これを「トレーサビリティー」と呼びます。
例えば、製品に記された情報(表示)をもとに、取り扱った事業者の情報(届出)を特定し、製造や流通の記録(帳簿)をたどることで、製造管理の状態や原材料まで追跡することができます。
逆に、異常が見つかった原材料を使った製品の出荷先を追跡することもできます。
このように、もしものときに素早く対応するための「備え」をすることでも、ペットフードの安全性を図っているんですね。
立ち入り検査と罰則
立入検査
国と独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)は、ペットフードの製造・輸入・販売事業者に対して報告を求めたり、立入検査をすることができます。
立入検査は原則無通告、つまり、抜き打ちで行われ、帳簿の確認や分析検査用の製品・原材料の集取などが行われます。
そして、立入検査で集取したペットフードの分析結果や違反の有無は公表されます。
また、ペットの健康被害を防止する必要性が認められた場合、国は、問題のあるペットフードの廃棄や回収などの措置を、事業者に対して命令することができます。
なお、「安全上重大な問題があって、すぐに回収する必要がある場合」や「違反が明らかな故意だったり、同じ違反を繰り返している場合」には、国が報道発表を行います。
罰則
ペットフード安全法では、基準・規格の違反、義務や命令への違反、虚偽などに対して罰則を設けています。当たり前のことだけれど、悪質な事業者はちゃんと罰せられるのです。
まとめ
家族として一緒に暮らすわんちゃんやねこちゃんが毎日口にするペットフードは、さまざまな基準や規格、責任と義務、備えや検査、そして、罰則によって安全性が確保されているんですね。
しかし、皆さんは「あーよかった。これなら大丈夫だねー」と手放しで安心してしまうのではなく、これからはしっかりといつものペットフードに異常がないかをチェックしたり、パッケージの表示をよく読むようにしてくださいね。
- 一般社団法人ペットフード協会 新資格検定制度実行委員会委員長
- 一般社団法人ペット栄養学会 理事
- 有限会社ハーモニー 代表取締役
- 日本獣医生命科学大学、帝京科学大学、ヤマザキ動物看護専門職短期大学非常勤講師
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