気温の変化が大きく影響するという皮膚の難病「表皮水疱症」。全身に水疱が出来るこの病気と闘う少年の日常。そして、日本で始まった最新の治療薬の治験とは。
【写真を見る】全身に水疱ができる皮膚の難病「表皮水疱症」と闘う男の子 最新の治療薬の治験が日本で始まる【news23】
「表皮水疱症」と闘う少年の新生活 水疱は口の中にも…
三重県に住む田邉柊くんと出会ったのは2年前。生まれた時から患う、皮膚の難病と闘っていました。
「表皮水疱症」は少しの刺激で水疱ができたり、皮膚が剥がれたりする国指定の難病です。体にできた水疱は針で潰し、約2時間かけて全身のガーゼを巻き直します。水疱ができると痛みや、強いかゆみもあります。
母・光希さん
「刺激があるとすぐに水疱がぶくぶくっとできてしまう。治ってもめくれ、治ってもめくれというのをずっと繰り返しています」
2023年の秋、柊くんは半年後に迫った小学校への入学を楽しみにしていました。
母・光希さん「どう?軽い?」
柊くん「うん」
ランドセルは、軽いリュックタイプを選びました。
柊くん「勉強の本(入れる)!」
4月から始まった小学校。真剣な表情で運動会のダンスの練習をしていますが、病気との闘いは続いています。
全身を包帯で覆われているため体温調節が難しく、こまめな休憩が必要です。
母・光希さん
「なかなか暑さ寒さの調整が難しくて。暑いのが一番大変なので、それで疲れた~ってなるので」
水疱は体だけではなく、口の中にもできます。口の中を傷つけないように、給食は先生に細かく切ってもらってから食べています。
柊くん「いちばんちっちゃいやつどれ?ちょっと探そ…これこれ~」
国内で最新治療薬の治験スタート「根本的治療ではないが、アプローチは本質に迫ってきている」
全国で約2000人の患者がいるとされている「表皮水疱症」。最新の治療薬の治験が日本で始まっています。
宮本恵子さん(69)は、2023年からその治験に参加しています。
この治療薬は2023年、アメリカで承認され、患者に不足している遺伝子を補うものです。
宮本さん「全然しみないですね」
日本でも承認に向けて治験が進められています。
北海道大学皮膚科 夏賀健 准教授
「この治療自体が根本的な治療法ではないが、遺伝子を治そうというアプローチは、これまでのものに比べてより本質に迫ってきているのではないか」
宮本さん
「去年、手に皮膚がんができて3回手術したんですよ。結局また癒着しちゃって、指が」
患者会「表皮水疱症友の会 DebRA JAPAN」の代表をつとめる宮本さん。会には柊くんを含めて約200人がいて、治療薬に期待を寄せているといいます。
宮本さん
「毎年のように患者さんが亡くなっている。傷が少しでも減れば体の負担が少なくなる。治療薬は本当にみんなの希望だと思います」
柊くんの夢は救急隊員 母・光希さん「何でも挑戦できる子に」
柊くんには夢があります。
柊くん「救急隊員!」
母・光希さん「けがした人を迎えにいくんやろ?」
柊くん「そう!」
母・光希さん
「こけたり、けがするかもしれないですけど、やりたいことは何でもやってほしい。何でも挑戦していけるような子になってくれればなと思っています」
国内患者数約2000人「社会の理解と支援が必要」
小川彩佳キャスター:
柊くんが「救急隊員」という夢を笑顔で追い続けられるためにも、一刻も早く治療が受けられるようになってほしいと願うばかりです。
取材した社会部の長谷川美波記者は、「日々の生活が本当に大変。患者が少なく知られていない、根本治療もない病気だからこそ、社会の理解と支援が必要」としています。
トラウデン直美さん:
病気で苦しむ方々が、周囲に対して「つらい」「大変」と我慢せずに言っていけること、治療薬の開発が進むことで希望が持てるようになってほしいです。
小川キャスター:
こうした難病があると知ること、関心を持ち続けることが大切ですね。
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<プロフィール>
トラウデン直美さん
慶応大学法学部卒
環境問題やSDGsについて積極的に発信