原油ゲリラの先に広がる“深い闇” 「巨大タンカーが沿岸に」元兵士が証言…国の権力者の関与も? 須賀川記者ナイジェリア取材【news23】

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2024-06-21 11:38

アフリカでも最大規模の石油生産量を誇るナイジェリア。暗躍する“原油ゲリラ”の取材を進めると、国家の中枢にいる権力者の関与すら疑われる深い闇が浮かび上がってきました。23ジャーナリスト・須賀川記者が現地を取材。元兵士の衝撃的な証言とは。

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ドラム缶を火にかけ燃料を違法精製

アフリカ・ナイジェリアで繰り広げられる“原油戦争”。南部のデルタ地帯では、パイプラインから盗んできた原油をドラム缶に入れ、周りを燃やし、熱していました。そして蒸留された燃料が、激しい音を立てて次々と精製されています。

23ジャーナリスト 須賀川拓 記者:
「ディーゼル?沸騰してるんじゃないかな、(ドラム缶の)中ですごい音がしているな…」

原油ゲリラの拠点では、こうした光景は日常です。いったいどのようなメカニズムで、燃料を精製するのか。構造はいたってシンプルです。

原油は様々な燃料の原料で、熱を加えると最も沸点の低いガソリンをはじめとし、灯油、軽油といった順番で蒸留されていきます。

周辺に広がる煙は、気化したガソリンや灯油なども含み、常に引火の可能性があります。極めて危険な状態の中、ゲリラにわずかな賃金でやとわれた少年や少女たちは、そのすぐ隣でドラム缶を火にかけ、抽出された燃料を素手で汲み出していくのです。

いったいどんな場所で作業が行われているのか。まだ太陽が出ている昼間に、別の現場に向かいました。

原油ゲリラに案内されたデルタ地帯の支流に、ボートで入っていきます。舟は上流へと向かい、精製所の近くに到着すると、目を疑うような光景が広がっていました。

悪質な原油窃盗と違法精製の裏には治安当局とゲリラに繋がり?

須賀川拓 記者:
「なんてこった。泥ですごく歩きづらかったのですが、周りがマングローブの死んだ根です。ここまでの規模の汚染だとは想像しなかったですね」

目の前に現れた、粗末なドラム缶。原油ゲリラはこの場所に盗んできた原油を運び込み、蒸留した燃料を売りさばくと言います。

しかしこの日、火はつけられたものの、違法精製は行われませんでした。

須賀川拓 記者:
「石油メジャーが引いているパイプラインに、石油が流れてきていない。今日はパイプラインが稼働していないそうです。だから彼らも休業なのだと。面白いですよね、石油メジャーと同じ生活サイクル」

「稼働したら、あけてある穴から原油が盗めるので、この辺りの機械が稼働するだろう、という風にいっていました」

窃盗団であるにもかかわらず、まるで営業日が決まっているかのような物言いに、違和感を覚える須賀川記者。

その違和感は、この時だけではありませんでした。前回5月30日の放送で同行した、治安当局による原油ゲリラの摘発取材。逮捕された男性2人はカメラによる撮影後、釈放されていました。

摘発を推進している、ナイジェリア国営石油による最新の報告では…

「原油窃盗との闘い」「18日から24日までで、33人を逮捕」

取材をした日は、5月24日。あのとき釈放された2人がこの33人に含まれているのか治安当局に問い合わせしましたが、返信はありませんでした。

30年以上続く、悪質な原油窃盗と違法精製。治安当局とゲリラが裏で繋がっているからこそ、根絶できないのではないか。取材を進めていくと、国の関与すらも疑われる、深い闇が見えてきました。

「ことを荒立てるな」ナイジェリア軍元兵士の証言

ナイジェリア軍元兵士
「私が小さい時のデルタ地帯は本当に豊かだった。あらゆる生物がいた。それらもほとんど根絶やしにされてしまった」

匿名を条件で証言してくれたのは、十数年前、ナイジェリア軍の兵士をしていたデルタ地帯出身の男性です。

ナイジェリア軍元兵士
「この目で目撃しているんだ。巨大なタンカーが、識別信号を切ってナイジェリアの沿岸に入ってくるんだ。登録もされていない。こうして盗まれた原油は正規のマーケットに流れない誰かがタンカーを招き入れているんだ。あの巨大な船に乗った莫大な富は、何十億円にもなるだろう」

――小さな運搬船ではない?
「違う、違う。サッカー場を何個も繋げたような大きさだ。レーダーもある。沿岸警備隊もいる。海だけでなく空からも監視しているはずだ。だが、なぜか、こうした巨大な船は沿岸に近づいて、原油を積むことができる」

私たちがジャングルの奥で目撃した、粗末な精製施設。それとは比べ物にならない規模の原油が、治安当局の監視をくぐり抜けて「盗まれている」現実。

ナイジェリア軍元兵士
「私たちは、巨大なドラゴンを相手に、針一本で戦おうとしている。だから、言葉を選ばないととても危険だ。私はある沿岸警備の船に乗っていた。巨大な船がレーダーに映ったので、上司に確認したんだ。『登録されていない船が入ってきた。何が起きているんだ?』って。そうしたら、『それはお前には関係の無いことだ』と言われた。上官たちは明らかにこの巨大な船の事を知っていた。そのうえで、船を見なかったことにしようとしていた」

「例えば、イギリスのような先進国だって、政府が口利きをしたり、政府と繋がりのある企業が甘い汁をすったりしているだろう。だから世界でナイジェリアだけが腐敗しているわけじゃない。でもその規模は、とてつもなく巨大だ。そして言えることは一つ。『ことを荒立てるな』

原油を盗んでいるのはだれ?

小川彩佳キャスター:
様々な監視をくぐりぬけ、だれかが巨大なタンカーを招き入れている、という貴重な証言ですが、だれが招き入れているのでしょうか。

須賀川拓 記者:
あらゆる監視をくぐり抜け、規制すらかけることができない。それを考えると、「国の権力の中枢にいる人物が、私腹を肥やすために陰で操っている」と考えないと整合性が取れないです。

さらに、過去にロシア船籍のタンカーが拿捕されたことがあります。その拿捕されたタンカーはどこに売られているのか、“国際的なネットワーク”にもかなり影がある、と感じます。

小川キャスター:
そうすると、この不正を根絶するためには、グッと引いた視点で見る必要がありますね。

須賀川拓 記者:
この“国際的なネットワーク”、「紛争ダイヤモンド」が問題になりましたが、あれも「テロリストの資金源となるダイヤモンドをどうやって規制するか」という国際的な取り組みが行われました。

なので、違法に取引される原油を取り締まる“国際的なネットワーク”が今後しっかりと根付いていけば、売る側もメリットがなくなり、少しずつ状況を良くしていくことができるのではないか、と思います。

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