いま、新型コロナの治療薬におよそ3万円の自己負担がかかるケースもあります。「金額を理由に治療薬を諦めてる患者は3分の2」医療の現場からは重症化を心配する声が上がっています。
【写真を見る】コロナ治療薬“3万円”で諦める患者も 感染拡大の中、公費支援は必要? 一方、国の治療薬が430万人分が未使用で廃棄のおそれ【news23】
新型コロナの治療薬「2人で3万円はキツい」 諦める患者も
「新型コロナの治療薬が高すぎる」。
24日、東京・北区の「いとう王子神谷内科外科クリニック」では、患者たちがお金の悩みに直面していました。
医師「コロナの抗原検査は陽性でした。重症化予防の薬、値段は2万9000円なんですよね。『コロナ治療薬希望しますか?』に、×=いいえにしていますが」
患者(70代)「お値段が高い」
医師「重重症化リスクは複数あるけど、(リスクは)高いとは言えない。それに対して3万円の薬を使うかは気持ちしだい」
患者(70代)「使ってみます。(値段が)高くても自分の体のことだから」
新型コロナの治療薬は2024年4月から公費の支援が無くなりました。70代の患者は自己負担率3割ですが、重症化リスクを減らす薬は5日分で約3万円です。
医療費3割負担の60代男性は夫婦で感染が疑われますが、検査を希望せず、治療薬についても…
患者(60代)「(薬の値段)1万5000円?」
医師「その通りです。安くて1万5000円」
患者(60代)「家内にはそれを積極的に処方してもらうと思うが、私自身はちょっと(希望しない)。2人で3万円はキツいです」
いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道院長
「極めて重症化リスクが高くて、経口内服治療薬が必要だけど『やめておきます』という人は約3分の2。やはり値段がちょっと高すぎると、薬が身近にあるのにそれを運用できないのはやっぱり歯がゆい」
10週連続で増加 東京都医師会「夏場の酷い時だけでも補助など対応を」
全国約5000の医療機関から7月14日までの1週間に報告された患者は5万5072人。10週連続で増えていて、11波の様相を呈しています。
医療費1割負担 70代後半
「後遺症になったらそれこそ大変、家族に迷惑がかかる。だったら高くても(使う)」
医療費3割負担 20代
「5類になってもコロナはかかったらしんどい。もうちょっと優しい金額になってくれたらな」
東京都医師会は…
東京都医師会 尾﨑治夫会長
「“自己負担なし”というわけにはいかないと思いますが、(新型コロナ治療薬を)3000円とか5000円とかそういうお金で、夏場の酷い時だけでもそういう(補助など)対応を国・都にもお願いして、考えていただきたい」
公費支援求める声も…東京都は「現時点で支援の考えない」
小川彩佳キャスター:
自己負担額が約3万円ともなっている治療薬について、医療従事者向けサイトを運営するエムスリーの調査によると、今年3月には14.8%だった処方率が、公費支援が終了した4月以降は10%に下がっているといいます。負担の影響もあったのでしょうか。
伊藤先生によると、ゾコーバやパキロビッドパックは重症化しそうな患者に処方されるそうですが、治療薬を控えて重症化する患者が増えることに繋がりかねないように感じます。
トラウデン直美さん:
現時点でこれだけ(処方率が)減っているので、買い控えや「値段が高いからやめておこう」と思う気持ちはよくわかります。
誰にでもばらまくものではなく、医師が「あなたには必要」と提案する場合は、いくらか公費負担があってもいいのではないかと思ってしまいます。
藤森祥平キャスター:
東京都医師会も公費による支援を求めていますが、東京都の小池知事は19日、「現時点で東京都として(支援の考え)はない」「まずはしっかりと予防していただきたい」としています。
データサイエンティスト 宮田裕章さん:
公的支援の中で治療が行われる場合、効果が社会的に共有されるかというような費用対効果の判断があり、その上で医師が処方します。
今回の場合は、治療適応にある人たちが経済的な理由で躊躇する一方、余っている薬があるという状況です。このバランスを社会的にどう考えるかということが問題なのかなと思います。
治療薬、国は約430万人分確保も…期限切れで廃棄の可能性
藤森キャスター:
高額なコロナの治療薬を国は約430万人分確保しています。薬が足りなくなるなど不測の事態に備えてということですが、不測の事態が起きずに期限が切れた場合は廃棄するしかないということです。
厚生労働省は、「医療機関などへの売却も考えたが、すでに市場で流通しているので、価格や売り上げに影響を与えてしまう」としています。
トラウデン直美さん:
もったいないと思います。重症化リスクが高い人の分布などを見て、数字的にでも良いので(薬を)分けたら良いのではないかと思ってしまうのですが、そういうわけにはいかないのでしょうか。
宮田裕章さん:
パンデミックなどの予測不可能なときに足りないよりは、在庫を多く持っておこうということもあったと思いますが、現状の次元的な措置の中で対応していくということもあります。
あるいは、今後更に様々な感染症がやってくるかもしれませんので、同じようなことを起こさないための対策も必要になると思います。
海外ではすでに“サブスク制度”のような形で定額払いで、使った分だけ支払うのではない仕組みの提案が始まっていますので、(日本にとっても)参考になるかもしれません。
小川キャスター:
今のままでは国が購入した治療薬の約8割弱が、未使用のまま廃棄されるかもしれません。これは何とかしなければいけないと思います。
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<プロフィール>
トラウデン直美さん
慶応大学法学部卒
環境問題やSDGsについて積極的に発信
宮田裕章さん
データサイエンティスト 慶応大学医学部教授
科学を駆使して社会変革に挑む