パリオリンピック™で平均年齢40歳以上の自称“初老ジャパン”が、総合馬術団体で92年ぶりとなるメダル獲得を成し遂げました。そもそも「総合馬術」とはどういった競技なのか、馬術・日本代表としてロンドン五輪に出場した佐藤賢希さんが解説します。
【写真を見る】自称“初老ジャパン”が「馬術総合」で銅メダル獲得 92年ぶり快挙!そもそもどんな競技?【Nスタ解説】
92年ぶりメダル獲得の快挙!「総合馬術」とは?
良原安美キャスター:
馬術競技では実に92年ぶりのメダル獲得の快挙となりました。「初老ジャパン」という愛称は、平均年齢が41.5歳で全員が昭和生まれであることから自称しているそうです。
井上貴博キャスター:
表彰台で日本チームだけが脱帽して左脇に抱え、同じポーズをしていて美しいな、と感じましたが、あれは別に決まりではないのでしょうか。
ロンドン五輪 馬術日本代表 佐藤賢希さん:
そうですね。日本人ならではの侘び寂びではないですが、礼儀の部分が出ているというのは感動しました。
良原キャスター:
この「総合馬術」、どのような競技なのかということに迫っていきたいと思います。
まず総合馬術は3日間にわかれて行われています。1日目が「馬場馬術」、こちらはフィギュアスケートでいうところのショートプログラムのような位置づけです。
佐藤賢希さん:
「馬場馬術」は調教度合いを見る項目になります。非常に繊細な項目になるので、「必要最低限の力で馬がどれだけ人間の指示を聞いているか」というところが審査されます。
馬の歩幅を伸ばしたり、歩幅の質を変えたり、あとは停止したり、横に運動したりというのが、この項目に組み込まれています。本来の馬の動きからバランスを整えるような感じになるので、きちんと指示を出さなければなりません。
井上キャスター:
これはうまくいっている、というのはどういうふうに判断されるのでしょうか。
佐藤賢希さん:
非常になかなか難しいところですが、「馬のバランスを崩した」とか「馬が首を振っている」など、そういう部分が減点対象になることがあります。
永井紗耶子さん:
どれくらいの期間、馬と交流すると教えることができるものなのでしょうか。
佐藤賢希さん:
馬術というスポーツは馬ありきのスポーツなので、毎日の積み重ねですね。何年にもわたってコミュニケーションをとって、その中でも良質なコンビネーションが舞台に立ちます。
ホラン千秋キャスター:
その日たまたま馬の機嫌が良いか悪いか、というのは違いますよね。馬の機嫌が悪いときにどうやって機嫌をとっていくんですか?
佐藤賢希さん:
なかなか難しいところですね、言葉の通じない相手なので。しかし毎日のトレーニングや、一緒に1日過ごすことによってその馬のキャラクターを知るなど、競技の最高のパフォーマンスを目指します。
ベルサイユ宮殿の中を疾走「クロスカントリー」
良原キャスター:
そして2日目に行われるのが「クロスカントリー」です。柵や池など“人馬一体で疾走”します。今大会はベルサイユ宮殿の中を疾走するということで、これにも魅せられました。
佐藤賢希さん:
もう本当に素晴らしいロケーションでした。「クロスカントリー」は総合馬術において最も重要な要になります。5キロ以上のコースを分速570mで駆け抜け、基本的には森の中や水の中など固定障害を飛び越えていきます。
ホランキャスター:
選手はどんなことを考えながら騎乗されているんですか。
佐藤賢希さん:
やはり馬の体力がすごく問われるので、スピードを出しすぎても駄目ですし、コントロールの部分など。あとは「馬の勇気」が非常に試される種目になります。
井上キャスター:
全種目、同じ馬で行って馬の規定はあるのでしょうか。
佐藤賢希さん:
馬に対しては年齢制限があります。あとは馬がきちんと健康状態にあるか、というところは競技を始める前に非常に見られます。
銅メダル最大の要因は「ベテランの馬たちの頑張りにある」
良原キャスター:
最終日の3日目に行われるのが「障害馬術」です。高難度のハードルをミスなく早く飛んでいくというものです。
この3日間を経て、日本はイギリス、フランスに次いで3位の銅メダルとなりました。銅メダル最大の要因について佐藤さんは「“初老ジャパン”と一緒に戦ったベテランの馬たちの頑張りにある」と話しています。
佐藤賢希さん:
「障害馬術」は同じ飛越競技に見えますが、この障害は落下する障害物になります。一つ落下するごとに4点減点が取られます。2日目の「クロスカントリー」は人間で言えばマラソンを走った後に最後にハードル競争が出るような、タフな余力審査と言われています。
ホランキャスター:
棒のようなものを落とさないように気をつけているんですね。
佐藤賢希さん:
馬を守るために軽いポールになってるので、落としやすい障害になっています。「馬がいかに最後の体力が残ってるか」という部分が審査されます。
井上キャスター:
今大会を通じて感じた日本の強さや、今までとの違い、メダル獲得に結び付いた一番の要因はなんだと考えますか?
佐藤賢希さん:
人馬ともに馬術の盛んなヨーロッパにじっくり腰を据え、レベルの高い相手と戦ってきてトレーニングを積んできた結果だと思います。
ホランキャスター:
ご自身たちの自虐で“初老ジャパン”と言っていますが“イケオジジャパン”ですよね。
佐藤賢希さん:
本当にそう言っていただけると嬉しいです。この馬たちもベテランの脂ののりきった馬たちを今回チームは選択しました。
永井紗耶子さん:
私は時代小説を書いている身からすると、「人馬一体」をこんなにもリアルに見せてもらえる、というのをすごく感動して見ていました。
井上キャスター:
スポーツでもあり芸術でもあり、馬が人間以外で唯一出られる動物なんですよね。
佐藤賢希さん:
男女も関係なく、同じフィールドで戦います。ハンデもありません。より日本のレベルがアップするのを期待してます。
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<プロフィール>
佐藤賢希さん
馬術・日本代表としてロンドン五輪に出場
2010年アジア大会 個人・団体で金メダル