8日夕方、宮崎県日向灘で最大震度6弱の地震が発生し、気象庁は初めて「巨大地震注意」を発表しました。今回の地震に連動して別の巨大地震が起きる可能性が平常時より高まっているとして、関東から九州の太平洋側などに住む人に対し、「今後1週間は防災対応をとってほしい」としています。私たちはどのような備えをすればよいのでしょうか。
【写真を見る】最悪の被害想定“死者32万超” 「現時点でどことは言えない」南海トラフ巨大地震 1週間以内にM8クラス発生確率は“0.5%”
そもそも「南海トラフ」とは?“100年から150年の間隔で大規模な地震” 前回の大規模地震からすでに80年ほど経過
南海トラフとは、駿河湾から今回震源となった日向灘にかけてプレートの境界に沿って伸びる海底のくぼ地のことです。南海トラフ沿いでは、およそ100年から150年の間隔で大規模な地震が起きています。
前回の大規模な地震からすでに80年ほど経っていて、南海トラフ巨大地震は近い将来の発生が予想されています。南海トラフ巨大地震が発生すれば、関東地方から九州地方にかけての広い範囲で強い揺れ、関東地方から沖縄地方にかけての太平洋沿岸で高い津波が想定されています。
「南海トラフ巨大地震」が起きた場合、内閣府の想定では、静岡県から宮崎県にかけての一部で震度7となる可能性があります。また、周辺の広い地域が震度6強から6弱の非常に強い揺れとなる想定です。
さらに、地震発生後には広い範囲に津波が到達する予想です。関東から九州にかけて、太平洋沿岸の広い範囲で10メートルを超える大津波が想定されています。
このほか、瀬戸内海や東京湾沿岸など直接太平洋に面していない地域にも、3メートル以上の津波が到達する可能性があります。
最悪の被害想定は死者32万3000人、倒壊および焼失する建物はあわせて238万6000棟。被害は広域にわたり、経済的な損失は国家予算を遥かに超える、約215兆円にのぼると試算されています。
M8クラスの地震“1週間以内に0.5%” 南海トラフ「巨大地震注意」
今回の地震が南海トラフ地震に繋がるおそれはあるのか。気象庁は初めて「南海トラフ地震臨時情報」を発表し、巨大地震が起きる可能性が高まっていないか調査しました。
評価は、3段階中2番目の「巨大地震注意」。1週間以内にマグニチュード8クラスの巨大地震が発生する確率は約0.5%です。
ーー防災対応とは、どの地域でどんな行動をとってほしいか?
南海トラフ地震評価検討会 平田直 会長
「想定南海トラフ地震のどこかで起きる可能性がある。そもそも、南海トラフの東西500キロぐらいのどこかでマグニチュード8~9ぐらいの地震が起きる。プレートの固着状態に変化がある可能性があって、現時点では“どこ”とは言えないので、注意してほしいのは全体。
もし、最大クラスの地震が起きれば、関東では震度は5強とか5弱。東日本大震災のときの揺れぐらい。津波も、九州~四国・紀伊半島、房総半島の外房でも高い津波が来ると想定。津波が起きれば、西南日本だけではなく十分注意が必要。東京都は島しょ部では高い津波に襲われる可能性があるので注意が必要」
ーーどれくらいの期間、備える必要があるか?
南海トラフ地震評価検討会 平田直 会長
「巨大地震注意は1週間続けていただきたい。国全体として」
今できる備えは?改めて確認を
私たちはどんな備えをすればいいのか。点検や確認が必要なポイントをまとめました。
▼地震の揺れで倒れないよう、家具などは固定されていますか?
▼上から落ちてきそうなものはありませんか?
▼周囲のどこに避難場所があるかや、避難場所へのルートを確認してください。
▼津波からの避難は、海から「より遠い」場所よりも、「より高い場所」に逃げるのが鉄則です。防災マップなどを利用して、高台や津波避難ビルに指定された建物など、頑丈で高い建物の場所を事前に確認してください。
▼津波警報などが発表された場合、解除まで避難を続け、注意報の場合は海に近づかないようにしてください。
▼家族との間で、いざというときの連絡手段を決めてありますか?
▼SNSなど、電話以外の連絡方法はありますか?
▼ご家庭に、水や食料など、ある程度の備蓄はありますか?水や食料などの備蓄を多めに確保することも必要ですが、過剰に買うことは控えてください。
TBS 福島隆史 解説委員(災害担当)
「いま夏休み中なので、たまたま旅行先が南海トラフ沿いっていう方もいらっしゃると思う。土地勘がないので、いざっていう時にどこに逃げたらいいのかわからない、どういうルートを取って逃げたらいいのかわからないという方がいると思います。できれば地震と津波のハザードマップ、地元でどういうものが出ているのかを確認していただいて、頭の体操をしておく。
もしここで新たに地震が起きたら、津波が来ることになったら、どこに逃げたらいいのかっていうのは想定しておいていただきたい」
「巨大地震注意」は地震予知の情報ではない
8日発表された「巨大地震注意」の南海トラフ地震臨時情報について、地震調査委員会の平田直会長は「地震予知の情報ではない」として冷静な対応を呼びかけました。
地震調査委員会 平田 直 委員長
「(巨大地震注意を受けて)どういうことをやるべきかっていうことについては、それを超えた行動をとられる方も、一部いらっしゃるかなと思います。これはあくまで普段からやるべきことを、もう一度確認するという情報が出たということ」
政府の地震調査委員会は、8日に日向灘で発生した最大震度6弱、マグニチュード7.1の地震に伴う地震活動について、「活動の領域が大きく広がったり移動したりする兆候はない」などとして、8日夜の時点と比べ、プレート境界の変化を示すデータは得られていないとしています。
日向灘で発生した地震に連動して別の巨大地震が発生する可能性は、普段よりも高い状態が続いているものの、8日夜の時点から高まっているわけではないということです。
そのうえで、平田直委員長は、8日発表された「巨大地震注意」の南海トラフ臨時情報を受けた社会の反応について、「一部には、取るべき対応を超えた行動をしている人もいると思う」としたうえで、「この情報は“地震予知”の情報ではない。あくまで日ごろの備えを再確認するという情報だ」としています。
また、9日夜に神奈川西部で発生した地震について、地震調査委員会としての評価はしていないとしたうえで「距離が遠いので日向灘の地震とは関係がないと思う」としています。
巨大地震発生の可能性は変わらず 引き続き防災対応を
気象庁は、12日午後3時半にこの地震について情報を更新し、「プレートの状態の変化を示すような通常とは異なる地殻変動は観測されていない」として巨大地震発生の可能性に変化はないと明らかにしました。
この地震に連動して別の巨大地震が発生する可能性は、普段よりも高い状態が続いていますが、8日夜の時点から高まっているわけではありません。
南海トラフ地震の想定震源域などでは8日の震度6弱が発生した後、12日正午までに、震度1から3の地震をあわせて23回観測したということです。
地震活動は徐々に減衰しているもののまだ活発な状態だとして、揺れが強かった地域では引き続き、最大震度6弱程度の非常に強い揺れを伴う地震に注意するよう呼びかけています。
気象庁と内閣府は関東の太平洋側から沖縄にかけての南海トラフ巨大地震で被害が想定されているエリアでは、揺れや津波への備えの確認や自治体などの呼びかけに応じた防災対応などを続けるよう呼びかけています。
防災対応の呼びかけは15日に終了
政府は15日、南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」に伴う防災対応の呼びかけを終了しました。
8日の地震を受け気象庁は同日、「巨大地震注意」の南海トラフ臨時情報を発表し、政府はこれまで関東から沖縄までの29都府県707市町村に、警戒度の高い防災対応を行うよう呼びかけていました。
しかし、地震発生の後、15日午後5時までに通常とは異なる地震活動や地殻変動が観測されなかったことから、松村防災担当大臣は「政府としての特別な防災対応の呼びかけは終了する」と発表しました。
一方、大規模地震の可能性がなくなるわけではないとして、「日頃の地震への備えを定期的に確認してほしい」と改めて呼びかけています。