「『注意』を出すか、何も出さないかが議論に」 南海トラフ地震 「巨大地震注意」山岡教授に聞く【Nスタ解説】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-08-09 22:27

九州・四国で最大震度6弱を観測した地震、各地で被害が出ています。
気象庁は、巨大地震への注意を呼びかけていて、交通にも影響が出ています。

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「日向灘でこの程度の地震は、過去も割と頻繁に発生」

加藤シルビアキャスター:
改めて、8月8日に発生した地震を整理していきます。

宮崎県・日向灘を震源とする、最大震度6弱の地震が発生しました。震源の深さは31キロ、地震の規模を示すマグニチュードは7.1と推定されています。負傷者は12人で、家屋の倒壊もあったという被害情報が入ってきています。

ここで、南海トラフ地震評価検討会の委員であり、名古屋大学名誉教授の山岡耕春さんに伺います。発生から1日が経ち、今回の地震をどのように分析されているでしょうか。

名古屋大学 山岡耕春 教授:
これは日向灘の地震です。日向灘の地震というのは、過去だいたい20年ぐらいおきぐらいに頻繁に起きてきました。マグニチュード7クラスで最後に起きたのが1984年だったので、そういう意味では40年ぶりに起きた地震です。

さらに、それはプレート境界で発生した地震ということで、日向灘では時々起きるタイプの地震であることがわかっています。

南波雅俊キャスター:
40年間発生していなかったということですが、今回は初めて「南海トラフ地震臨時情報」が発表されました。この規模の地震の発生というものは、想定されていたのでしょうか。

名古屋大学 山岡耕春 教授:
日向灘だと、この程度の地震は、過去も割と頻繁に発生しています。日向灘でマグニチュード7クラスの地震が起きて、それが南海トラフ地震や「巨大地震注意」という情報につながることは、ある程度は想定されていたと思っています。

南海トラフ地震臨時情報 「警戒」と「注意」の違いは?

加藤キャスター:
今お話にも出ているように、注目されているのは、今回の地震の震源が南海トラフの想定震源域内にあったということです。

南海トラフ地震といえば最大震度は7、津波の高さは最大で34メートル、死者は最大で32万人を超えると想定されている地震です。

この南海トラフ地震に関連があるとして、気象庁は8日、南海トラフ地震臨時情報の「巨大地震注意」というものを初めて発表しました。聞き慣れない方もいらっしゃるかと思いますので、解説していきます。

「南海トラフ地震臨時情報発表」までの流れを今一度おさらいすると、マグニチュード6.8以上の地震がある、もしくは、通常とは異なるゆっくりすべりが観測されると、5分から30分をめどに、南海トラフ地震臨時情報が「調査中」ということになります。

山岡教授も参加されたという有識者による検討会で、南海トラフと関連があるかどうかが精査されるわけですが、「関連がない」と判断されると調査は終了になります。

関連がある場合は「巨大地震警戒」か「巨大地震注意」に分かれます。

▼「巨大地震警戒」が発表されると
・避難の準備を始める
・発生後に避難が間に合わないと判断される場合、事前の避難を呼びかけられることも

▼今回発表「巨大地震注意」は
・地震への備えを再確認を
・地震の発生に注意しながら生活を

南波キャスター:
「警戒」ではなく「注意」になった理由は何でしょうか。また「注意」の場合は、どういう私たちの対策と考え方が大事になってくるのでしょうか。

名古屋大学 山岡耕春 教授:
今回は「警戒」か「注意」かを議論したというより、むしろ「注意」を出すか、あるいは何も出さないかが議論になりました。

モーメントマグニチュード、いわゆるもう少し正確なグローバルスタンダードなマグニチュードで計算したところ約7.0だったので、それで「巨大地震注意」という情報を出すことになったわけです。

この場合には特段、普段の生活に制限を加えることは推奨せずに、普段の地震への備えを再確認してくださいということをお願いしています

お盆休み、帰省してもいい? 海水浴への影響は?

加藤キャスター:
それではこのあと、私たちはどのように過ごしたらいいのかという点です。気象庁は、今後1週間は巨大地震に注意してくださいと呼びかけています。

カレンダーを見てみると8日に地震が発生し、そこから1週間というと14日までなので、お盆の時期に差しかかっているわけです。

SNSでも「九州帰省予定だったけど地震で帰るべきか残るべきか迷う」「お盆旅行の予定あるけど新幹線乗ってるとき地震起きたらどうしよう」といった声が届いています。

南波キャスター:
お盆休みに、旅行先や帰省先で気をつけなくてはいけないポイントはどのようなところにありますか。

名古屋大学 山岡耕春 教授:
特に帰省を止めることを推奨しているわけではないので、普段どおりに帰っていただければいいと思います。

ただ、たとえば帰った先にどういうハザードがあるかマップで確認したり、津波浸水域である場合には、帰省されたあとにその場所の避難経路を確認したりなどを、ぜひやっていただきたいです。

そのうえで、普段の生活を送っていただくことが大事だと思っています。

加藤キャスター:
そして、海水浴に行っても大丈夫なのかという声もあふれています。実際に和歌山県・白浜町では、全ての海水浴場が9日から1週間程度、閉鎖されるということです。

南波キャスター:
海水浴に関しては、どのような考え方が大事になるでしょうか。

名古屋大学 山岡耕春 教授:
基本、特に海水浴をやめることは必要ないかと思います。ただ、海水浴場にいらっしゃる場合には、仮に地震が起きたときに、どういうルートで避難をするか、あらかじめ確認してから楽しんでいただくことが大事かなと思っています。

南波キャスター:
恐れすぎず、ただ、しっかりと準備をしておくことが重要になると思いますが、斎藤さんは改めてどのように感じていらっしゃいますか。

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
日常生活に制限は特に必要ないとおっしゃっていただいたのはよかったと思いますし、そうすると白浜町での閉鎖というのは、もしかしたら少し行き過ぎかなと思いました。

あとはやはり、私は原発が動いていることが心配なので、そのあたり今後私たちがどう注意しながら生活していくかが大事だと思います。

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<プロフィール>
山岡耕春さん
名古屋大学教授 日本地震学会元会長
南海トラフ地震評価検討会委員

斎藤幸平さん
東京大学 准教授 専門は経済思想・社会思想
著書『人新世の「資本論」』50万部突破

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