パリ五輪 弾圧や紛争を乗り越え出場した選手たち「故郷の惨状を知ってほしい」パレスチナの選手が世界に訴え 3年前、東京五輪の時に亡命したあの選手は?【news23】

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2024-08-13 13:46

パリオリンピック™が開催されている最中も、ウクライナやパレスチナ自治区ガザでは戦闘が止むことはありませんでした。紛争や弾圧に直面しながら参加した選手たち、東京五輪の時にベラルーシから亡命した選手は祖国への思いを語りました。

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競技中に「女性を解放せよ」

マニザ・タラシュ選手(21)は、パリ大会の新競技「ブレイキン」に難民選手団として出場しました。

祖国・アフガニスタンではイスラム主義勢力のタリバンが実権を掌握しています。

女性の人権が抑圧され、女性が音楽やダンスを楽しむことも認められなくなり、タラシュ選手はスペインに逃れました。

8月9日に行われた予選では、ダンス中に上着を脱ぎ、水色のマント姿に…

マントの文字
「FREE AFGHAN WOMEN」(アフガニスタンの女性を解放せよ)

オリンピックでは「政治的な宣伝活動」が禁止されているため、タラシュ選手は失格処分になりましたが、試合後のインタビューでは…

タラシュ選手(BBCより)
「私は人々に可能性を示したかったんです」

失格になることはわかった上で行ったと明かしました。

ミサイルが撃ち込まれる様子の刺しゅうのシャツを着て…

「平和の祭典」と称されるオリンピックには、その言葉とは裏腹に、弾圧や紛争の恐怖に直面しながら、大会に出場した選手も少なくありません。

パレスチナ代表としてボクシングに出場したワシム・アブサル選手(20)は、2023年10月、ガザで戦闘が始まり、コーチから直接指導を受けることができなくなりました。

ワシム・アブサル選手
「コーチはガザ出身でエジプトに住んでいますが、パレスチナに来ることが出来ず、トレーニングは大変でした。お互い(練習内容を)電話でやり取りをしていました」

練習もままならない状況を乗り越え出場したオリンピックは、初戦敗退という結果になりました。

さらに気がかりだったのは、大会期間中も続いたガザへの攻撃です。

ロイター通信によると、8月10日にはイスラエル軍がガザ北部の学校を空爆し、子どもを含む100人以上が死亡したと伝えられています。

ワシム・アブサル選手
「オリンピック中も戦争は続いているんです」

ワシム選手は、開会式でパレスチナ選手団の旗手も務めました。

そして、IOCの許可を得て着たというシャツには、子どもたちにミサイルが撃ち込まれる様子が刺しゅうで描かれていました。

ワシム・アブサル選手
「私がオリンピックに来たのは、故郷で起きていることを知ってほしいからです。シャツを着たのもそのため。ガザだけでなく、世界のどこであっても、子どもに対してこんなことがあってはならない」

「強制的に出国させようとしている」 東京オリンピックで亡命

“祖国への複雑な思い”を抱えながら出場した選手もいます。

ツィマノウスカヤ選手
「みんな自分が生まれた国を代表して出場することを望んでいます。しかし、できない状況もあるのです」

今回の大会でクリスツィナ・ツィマノウスカヤ選手(27)は、ポーランド代表として陸上女子200メートルやリレーなどに出場しました。

3年前の2021年、東京オリンピックに出場するため来日した際の国籍はベラルーシでした。

競技の直前に…

ツィマノウスカヤ選手(2021年8月投稿)
「IOCに助けを求めます。圧力を受けていて、私を強制的に出国させようとしているのです」

チームの方針を批判したことでコーチから強制帰国を命じられたのだといいます。

当時の報道では、スポーツを国威発揚に用いているベラルーシのルカシェンコ大統領が、東京オリンピックでの自国選手の成績不振に不満を抱いていたとも伝えられています。

そのためツィマノウスカヤ選手は、「帰国すれば危険が及ぶ」としてそのままポーランドへの亡命を決断したのです。

ツィマノウスカヤ選手
「この3年間は精神的にとてもつらいものでした。この間、ベラルーシにいる家族に一度も会えていません。家族のもとには定期的に警察が来るので、心配でなりません」

東京オリンピック以降、一度も祖国に暮らす両親と会えないままポーランドで練習を続けてきました。

この3年の間、ロシアはウクライナへの侵攻を始め、ベラルーシもロシアを支持する姿勢をとるなど、祖国を取り巻く環境は一変しました。

ツィマノウスカヤ選手
「ベラルーシで戦争を迎えていたら陸上選手をやめていたと思います。戦時下の国でナショナルチームの一員を担いたくないからです。だから私は他の国の代表にならざるを得ないのです」

2025年に東京で行われる世界陸上にもポーランド代表として出場したいと話す一方で、祖国への思いを断ちきることはできません。

ツィマノウスカヤ選手
「ベラルーシを離れた多くの人が望んでいるのは、祖国の自由と、愛する人と再会することです。私は多くの人たちに決して諦めてはいけないと伝えたい」

IOC会長「オリンピックがあらゆるデモの見本市に」

藤森祥平キャスター:
オリンピック憲章の第50条では、政治的宗教的人種的な宣伝活動を禁じています。

IOCは、会場や選手村や表彰式など、政治的なメッセージやジェスチャーは認められないとしています。いかなる主義・思想の宣伝も身体や競技ウェア、アクセサリーに表示してはならないとされています。

IOC バッハ会長
「オリンピックがあらゆるデモの見本市になり、世界を分裂させる」

また、競技よりも宣伝活動をメインに参加する選手が出てくる可能性もあると指摘があります。

小川彩佳キャスター:
オリンピック憲章の中で、政治的メッセージの発信が明確に禁じられている中、今回の大会で政治的、人種的主張を選手たちが行うという場面がありました。

日本総研主席研究員 藻谷浩介さん:
オリンピック自体が、古代ギリシャでやっていたときも、近代オリンピックでヨーロッパで再開したときも、戦争している国同士が集まって、戦争を一旦止めて、競技で戦うという状況で作られたものなので、いろんな国があるわけです。

「みんなで集まってやろう」ということを最優先するたてつけで作られているので、こういうルールが使われています。

ただ、政治的、宗教的、人種的、に関して、例えば女性の参加を認めていないのは宗教的とは言えません。イスラムの国でも女性チームが出ています。アフガニスタンだけが特殊だと思います。

国以前に、性差別や人種差別などに関わることは、(第50条には)「当たらない」としていくべきではないかと思います。

ルールを守る日本人は「ルールだからしょうがない」と言うだろうが、ルールは長い間かけて変えていかなければいけないでしょう。

「政治的なメッセージ」IOCの対応“少しずつ変化”

藤森キャスター:
ただ、第50条の「政治的なメッセージ」という点について、IOCの対応が少しずつ変わってきているようです。

前回の東京オリンピックの女子サッカーでは、なでしこジャパンの選手たちが人種差別に抗議して片膝をつく行為を見せました

2020年の黒人の暴力や差別に抗議するブラック・ライブズ・マターの運動の高まりが各スポーツ界に広がり、日本だけではなく、イギリス他、各チームで連帯を示すポージングをとりました。

小川キャスター:
容認という形で、対応も少しずつ変わってきているようですね。

日本総研主席研究員 藻谷浩介さん:
1968年のメキシコオリンピック当時は、アメリカで公民権運動が本格化する前でした。黒人差別に抗議した選手が追放されてしまうということが起きました。現在は認められています。

オリンピックは、本来いろんな人が超えて、集まって、戦うものです。本質的に性差別や人種差別とは相いれないじゃないですか。第二次世界大戦時や現在のロシアなど、戦争状態の国だけは参加できません。ですが、それ以外の理由では参加できるべきなので、容認されてきているわけです。

やはりルールというのは、ずっと同じものではなく、少しずつ揺さぶりながら変えていくものです。日本人は真面目なので、一度ルールが定まった以上は真面目に常にフォローしようと思うかもしれないのですが、明らかにおかしいことについては変えていく意識も必要です。

今回の大会で、アフガニスタン出身の選手は「アフガン」(アフガニスタンの女性を解放せよ)と名指しで書いたので、まさに政治的主張になりました。子どもにミサイルが撃ち込まれる様子の刺しゅうのシャツを着た選手ですが、シャツには文字が書かれてなく、ギリギリ認められたんだと思います。

性別、人種、子ども、無実の人が、「戦争だから」といって殺されることは昔はありましたが、もう認められない時代になっていくのではないでしょうか。

あと何年、何十年先かわかりませんが、「戦争するのもダメだよ」というメッセージが認められるオリンピックに向けて、いろんな運動しながらゆっくり変えていくという考えが必要ではないでしょうか。

小川キャスター:
ルールがあるので、沿う・沿わないというのはあると思います。しかし、なぜその選手たちがその行為に及ばなければならなかったのか、その本質から目を背けないということですよね。

日本総研主席研究員 藻谷浩介さん:
この機会を生かさなければいけないと思っている選手の気持ちを大事にしたいですね。

政治的主張で失格…「みんなの声」は

NEWS DIGアプリでは『オリンピック』について「みんなの声」を募集しました。

Q.五輪 政治的主張で失格 どう思う?
「失格は当然」…10.0%
「やむを得ない」…50.3%
「厳しすぎる」…35.3%
「その他・わからない」…4.4%

※8月12日午後11時23分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは13日午前8時で終了しました

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