岸田総理「私が身を引く」なぜ今?総裁選不出馬の背景は【ひるおび】

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2024-08-14 16:25
岸田総理「私が身を引く」なぜ今?総裁選不出馬の背景は【ひるおび】

岸田総理が自民党総裁選不出馬を表明しました。
なぜ今のタイミング?背景には何があるのでしょうか?

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「重い決断をした」記者会見で語られたこと

岸田総理の会見(14日午前11時30分頃)
「今回の総裁選挙では、自民党が変わる姿、‟新生”自民党を国民の前にしっかりと
示すことが必要です。そのためには、透明で開かれた選挙。そして何よりも自由闊達な論戦が重要です。
その際、自民党が変わることを示す最もわかりやすい最初の一歩は、私が身を引くことであります。
私は、来る総裁選には、出馬いたしません。
政治と金の問題を巡っては、派閥解消、政倫審出席、パーティー券購入の公開上限引き下げなどの判断についてご批判もいただきましたが、国民の信頼あってこその政治であり、政治改革を前に進めるとの強い思いを持って、国民の方を向いて重い決断をさせていただきました。
残されたのは自民党トップとしての責任です。
もとより、所属議員が起こした重大な事態について、組織の長として責任をとることにいささかの躊躇もありません。
今回の事案が発生した当初から思い定め、心に期してきたところであり、当面の外交日程にひと区切りがついたこの時点で私が身を引くことで、けじめをつけ総裁選に向かっていきたいと考えています。」

TBS政治部長 岩田夏弥:
自民党幹部も今日電話を朝受けたということで非常にびっくりしたと話していまして、やはりかなりの人にとって相当衝撃で、これから先の秋の総選挙が一挙にこれで現実的に見えてきましたね。

恵俊彰:
今年はアメリカの大統領選挙もあって、11月5日には世界のリーダーが決まるんでしょうけど、民主党でも大きな動きがあってバイデンさんが辞めました。それでハリスさんということになりましたけども、どこかその民主党を救うためにみたいなところもあったような気がしますが。

ジャーナリスト 鎌田靖:
私も全く同じことを考えていて、バイデンさんが先日CBSのインタビューを受けてるんですよね。その中でなぜやめたかという理由について、このままだったらズルズル最後まで拮抗が続くと。そうなると同じく行われる上院と下院の選挙に影響する、つまり民主党の同僚に対してマイナスの影響が出るから、だから私は身を引くというふうに考えたんだということを言っていました。
実際はわかりませんけど、次の選挙のときに、なるべく自分が責任を取ったということで、次の選挙の目減りをなるべく減らしたいという、バイデンさんと同じようなことも考えられたんじゃないかなという気はしました。

「身を引く」決断の背景

岸田総理はけさ自民党幹部に対し、
「旧統一教会の問題や自民党派閥の裏金問題の話もあり、どこかで自分が責任を取らないといけない」
と電話で伝えています。
派閥の裏金事件でトップが責任をとらないといけないことへの批判は自民党議員や地方組織の間で根強く、身を引く決断の大きな要因になったとみられています。

弁護士 八代英輝:
責任はいつか何らかの形で取る必要があったと思っているんですけど、どうしてこのタイミングになったんだろうというのが興味深いですね。

恵俊彰:
(オリンピックの)選手の皆さんが帰ってこられて「お疲れ様でした」ってねぎらった。その次の日ですもんね。

コメンテーター 高橋みなみ:
本当になぜこのタイミングだったのかなっていうのは驚きましたよね。個人的には「出馬への意欲が強いのかな」と思っていたので、ここで責任を取るというのはダブルで驚きました。

恵俊彰:
幾度となく解散風を吹かせながら、やはり総裁選の前までに解散をして選挙に勝って無風で勝ち抜くというのがずっとビジョンだと言われてはおりましたけれどもね。

TBS官邸キャップ 川西全:
岸田総理は先ほどの会見で裏金事件が発生した当初から責任を取ることは考えていたということで、当面の外交日程にひと区切りがついたこの時点で表明する考えだったと説明しています。
このタイミングでの表明ということでやはり内外で驚きをもって受け止められています。
ほとんどの自民党幹部は今朝知らされたということで、一様に驚いた様子でした。
今思い返してみると、昨日の夜岸田総理がホテルでちょっと不自然な夜会合を開いていて、そこにひょっとしたら自民党の腹心の木原幹事長代理が来てるんじゃないかとかそういった噂はあったんですけども、具体的に動きとして「やめる」ということを掴んでいた人はほとんどいなかったのではないかと思われます。
最後まで自分1人で決断するということで、やはりサプライズのやり方だったのかなという印象です。
ただ岸田総理は内閣支持率が低迷している中で、あくまで続投に向けた考えは崩していなかったんですけども、周囲に対して「もし自分が出ないとするならば、その理由は自分がいると総選挙で皆に迷惑をかけるから」と語っていました。
やはり総選挙で勝つか負けるかを考えたときに、自分としても責任の取り方というものをずっと考えていたと思われます。

恵俊彰:
今、自民党の皆さんが驚かれているという情報でしたけれども、ぶっちゃけて言うと、このまま岸田さんで勝てない、だから次は誰なんだといういう話が小林(鷹之)さんであったりとか小泉進次郎さんも含めていろんな名前が取り上げられていたわけじゃないですか。
内心どうなんですか?自民党の中で驚きなのか、それともほっとしてるかどっちなんですか?

TBS官邸キャップ 川西全:
最近内閣支持率を見てみますと、直近ではまた微増にあったんですね。周辺では必ずしも勝てないとは言えないという見方もありました。
あと、今回総裁選に4人とか5人とか6人とかたくさん出てくるんじゃないかと。たくさん出てきたら岸田総理も団体とか抑えてますので、議員票も宏池会という岸田派を持ってたりなど、決選投票にさえ残れば、みたいな希望的観測は実際ありました。
しかしやはり現実に状況を見極めて、特に地方は圧倒的に厳しいわけで、「地方では一票も取れないよ」みたいな声も散々聞こえてきたわけですね。
そういったことを諸々考えた結果として、やはり勝ち目がないというか、ここは身を引いた方が自民党のためになるだろうという岸田総理の判断だと思われます。

恵俊彰:
いろんな責任はお取りにならなきゃいけないということはお感じになっていたが、一方で状況としても、総裁選に向けての自分を支える皆さん、その数を数えていったときにこれはという部分もあった、ということでしょうか?

TBS官邸キャップ 川西全:
ギリギリまで、例えば麻生副総裁と会談したり、働きかけ自体はずっと続けていて初めから諦めていたわけではなかったと思います。
やはり客観的に考えてそれがちょっと往生際が悪いと映るかもしれないなど、いろいろ考えはあったと思うんですね。ただ岸田総理としてもまだ経済がこれから実質賃金などが上がってきて今年の後半以降良くなってくる、その見通しを示したいんだということをさんざん強調していましたので、ここでやめること自体に関してやはりちょっと無念な思いもあったと思います。

なぜこのタイミング?

恵俊彰:
タイミングとしてはこの8月お盆休みの真っ只中になぜという疑問があるんですが、そこに関してはどう感じていますか?

TBS官邸キャップ 川西全:
私も相当驚きました。
動き出すのはお盆があけてから、出馬表明もしくは進退の表明は8月下旬になるんじゃないかと当初言われていました。
この後総裁選が注目されることになるわけですから、前倒したこのタイミングでサプライズを仕掛けて、最後に打ち上げ花火を自らあげられたのかなという印象を受けます。

タイミングについて、総理は会見で次のように述べています。

岸田総理の会見
「残されたのは自民党トップとしての責任です。もとより所属議員が起こした重大な事態について、組織の長として責任を取ることにいささかの躊躇もありません。
今回の事案が発生した当初から、思い定め心に期してきたところであり、当面の外交日程にひと区切りがついたこの時点で私が身を引くことでけじめをつけ、総裁選に向かっていきたいと考えています。」

恵俊彰:
外交日程に一段落ついたというところがお盆の時期と重なっているということなのでしょうか。

TBS政治部長 岩田夏弥:
やはり大きいのは、自民党、特にベテランの議員たちは2009年の政権交代で野党になったことがものすごいトラウマとして残っていて、政権を維持する、自民党政権を続けるということへの意欲やエネルギーにものすごいものがあるんですよね。
岸田さんもそれを当然わかっていますから、自分がどう判断することが一番自民党政権を維持するのに一番有効かを考えて、あえてズルズル延ばさずにここでポンとやめるということで一気にまた自民党に注目が集まっている状況だと思いますね。

弁護士 八代英輝:
今回岸田総理が外交日程で一定のめどが立ったのは、外遊の予定をこなされたからではなく、南海トラフ地震の臨時情報が出て外遊を取りやめたからですよね。
確かに電話等で会談はされていましたけど、ちょっと唐突な印象を拭えないですね。

TBS政治部長 岩田夏弥:
確かにお盆の時期ですから唐突ではありますけれども、ただ何日延ばしたところで多分変わらなかったと思うんですよね。
20日まで行くのか、その後になるのか、それよりも今サッと決めてしまった方が自民党総裁選自体はかなり盛り上がりますよね。

‟ポスト岸田”レースの展開は

TBS政治部長 岩田夏弥:
顔ぶれで言いますといろいろなお名前が出てますけれども、特に言われたのが現職の閣僚ですとか、あるいは幹事長の茂木さんですとか、今岸田さんに選ばれた人です。岸田さんが出る中で出るのは批判が起きそうなので、みんなちょっと様子を見ていたわけですね。
これで岸田さんがもう自分は出ないと言ったので、ある種手の挙げ放題というか、遠慮せずに堂々と出てこられるという環境にはもうなりましたよね。

ジャーナリスト 鎌田靖:
一つ考えたのは、岸田さんが立候補しないことについて「自らの責任で」ということを強調されてますけども、これで少なくとも「岸田氏は自ら身をひいた、立派だ」ということになれば、自民党内での自分の影響力もあり“院政”のような形は取れるんじゃないかなという気もちょっとしますけどね。

今後の日程として、総裁選の投開票日が8月20日に決定され、実際の投開票は9月20日または27日といわれています。

TBS政治部長 岩田夏弥:
今回のことでもう一つ注目しなきゃいけないと思うのが、立憲民主党の代表選なんですよね。9月23日に代表選があるんですけど、ここで選ばれた立憲民主党の新しい代表と、自民党総裁選挙で選ばれた新しい総裁が秋の衆議院の解散総選挙で顔として戦うことになる可能性がぐっと高まってるわけですよね。
つまり自民党総裁選にどうしても集中しがちなんですが、今度の立憲代表選は野党の選挙の顔を選ぶ選挙になってくるので、あと1か月立憲の代表選がどうなっていくのかはものすごく大事な選挙ですね。

立憲民主党の泉健太代表は、岸田総理の不出馬表明について
「総理が辞めたとしても、それは自民党の体質が変わったわけではない。
党が危機になると、総理総裁を変えて心機一転、過去を忘れてもらうと。そういう手法に国民がいつまでも引っかかっていてはいけない」
と話しています。

恵俊彰:
自民党の総裁選挙もそうですけれども、派閥がほとんど解体されている中誰を選ぶのか。
いわゆる旧安倍派という意味では‟コバホーク”、小林さんも相当人気があるって言われていますし、小泉進次郎さんも手を挙げるのかどうかわかりませんけれども。
それからいわゆる「ガラスの天井」日本版という意味では上川さんがどういう動きになるのか、岸田さんが出ないということになると、上川さんは当然動きやすくなるでしょうから。石破さんに20人集まるのかどうかも含め、そして立憲民主党側が誰になるのか、注目が集まる1か月になるかもしれません。

(ひるおび 2024年8月14日放送より)
==========
<プロフィール>
岩田夏弥
TBS報道局政治部長 元官邸キャップ
小渕総理以来、主に政治取材を担当

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