14日、岸田総理が来月おこなわれる自民党総裁選に立候補しない意向を表明しました。トップの顔を代えることで、自民党は変わるのか。有権者からは厳しい声もあがっています。
【写真を見る】「人が代わればいいわけじゃない」岸田総理が総裁選不出馬を表明 “ポスト岸田”は誰に? 麻生氏「引き続き岸田・麻生・茂木の3人で…」【news23】
“裏金問題”で「けじめ」 岸田総理が総裁選不出馬を表明
岸田文雄 総理
「自民党が変わることを示す最もわかりやすい最初の一歩は、私が身を引くことであります。私は来たる総裁選には出馬いたしません」
緊急会見で、総裁選不出馬の意向を示した岸田総理。総理周辺によると、最終的に決断したのは14日朝だったといいます。
その理由として挙げたのが、現職の国会議員が逮捕される事態にまで発展した「派閥の裏金問題」でした。
岸田総理
「組織の長として責任を取ることにいささかの躊躇もありません。今回の事案(裏金問題)が発生した当初から思い定め、心に期してきたところであり、当面の外交日程に一区切りがついたこの時点で、私が身を引くことでけじめをつけ、総裁選に向かっていきたいと考えています」
突然の表明に、岸田総理の地元・広島では…
広島県民
「ちょっと残念ですね。広島から出た総理ということで、ちょっと期待していたので、まだまだ」
広島県民
「人を変えればいいという問題ではなくて、ちゃんと禊ぎをしたのかと。お金の問題にしろ、裏金の問題にしろ全くしていない」
石破氏は“出馬”明言 「ポスト岸田」加速
――どうしてご自身の支持が得られなかったと思われますか?
岸田総理
「支持率の高い低いについて何か申し上げるつもりはありません。政策を進めるためにも信頼回復に努めなければならない。その第一歩として私自身の身の処し方を決断した」
一方、野党は総裁が誰になっても「自民党の体質が変わるわけではない」と批判しています。
立憲民主党 泉健太 代表
「旧統一教会の問題もはっきり決着がついていない。そして政治改革も政治資金規正法をやったとは言え、事実上はほとんど実際の改革には至っていなくて、自分の力ではこれ以上の改革が進められないと、そんな思いもあったんじゃないか」
共産党 小池晃 書記局長
「自民党全体が責任を取らなければいけない問題ではないでしょうか。自民党の中での政権のたらい回しでは、何も変わらない」
岸田総理が不出馬を決めたことで、今後、動きが加速しそうな総裁選レース。そのひとりである、台湾を訪問中の石破元幹事長は早速…
自民党 石破茂 元幹事長
「総裁選に推してやろうという方々が20人おられれば、是非とも総裁選挙に出馬したいと思っております」
新しいリーダーに、有権者が求めることは…
「若くて先を見据えていける人に頭を張ってもらった方が、日本も変わるんじゃないかなと思います」
「未来の子どもたちに向かって、いろいろとやってくれる政治になってくれればいいかなと思います」
――変わると思いますか?
「変わってくれないと困ります、ねっ」
「岸田さんの不出馬は残念だ」茂木幹事長と麻生副総裁が会談
小川彩佳キャスター:
最新情報について国会記者会館から官邸キャップの川西記者に伝えてもらいます。
官邸キャップ 川西全 記者:
14日夜、東京都内のステーキハウスで自民党の茂木幹事長と麻生副総裁が約2時間にわたって会談しました。
関係者によりますと、会談では麻生氏が「岸田さんの不出馬は残念だ」と語ったうえで、これまで政権運営の要であった「岸田・麻生・茂木」の3人で引き続きまとまってやっていきたい、と語ったということです。
また、自民党関係者によりますと、河野デジタル大臣も、総裁選に向けた政策集を作ろうと動き始めたということです。
菅前総理の意中の候補とも言われている小泉進次郎元環境大臣や、小林鷹之前経済安保担当大臣も中堅・若手を中心に待望論が出ていますが、自民党内の一部からは林官房長官の出馬を望む声もあり、今後、動きが活発化しそうです。
本音は「勝機ナシ」と判断?なぜこのタイミングで不出馬表明をしたのか
小川キャスター:
岸田総理が不出馬を表明しました。その背景に何があったのか。まず、この岸田総理の不出馬表明のタイミングは、なぜ今だったのでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
15日の終戦記念日の後に方向をはっきりさせるのではないか、と思っていました。しかし、お盆明けになるといろんな候補が手を挙げます。そうなると、そういう人たちに抑え込まれて不出馬、ということになりかねません。そういった動きが出る前のタイミングを選んだ、ということのようです。
ただ、自民党内に広がる岸田総理に対する不信は払拭できないままの退陣になった、ということです。
藤森祥平キャスター:
14日の会見を見て、星さんは本音の部分が見えてきたそうですね。
星浩さん:
「今回の事案(裏金問題)が発生した当初から思い定め、心に期してきた」と会見で述べていました。しかし、現実に岸田総理がやったことは再選を目指して麻生副総裁との関係修復に動いたり、最近になって、憲法改正を打ち出して保守派の取り込みを狙ったり、再選を考えていたことは明らかでした。
しかし「自民党が変わることを示す最初の一歩」と言ってはいましたが、全体として厳しい状況を改善することができなかった。つまり、今回の総裁選に出ても「勝機ナシ」と撤退を判断した、というのが本音だと思います。
小川キャスター:
一方で14日の会見で総理は、総裁選から撤退するにあたり、「(政治家としてやりたいことやるべきことを示す)政治家の意地みたいなものはあった」と語っています。この“意地”という表現を繰り返し述べていましたが、これにはどんな思いがあったのでしょうか。
星浩さん:
「政治家の意地」という言葉は岸田総理の本音が出たと思います。
最近、岸田総理の周りを取材していると、「岸田政権の3年というのは、言ってみれば安倍政治の尻拭いだった」ということを岸田総理は周囲に漏らしているようでした。
旧統一教会をめぐる問題、安倍派を中心とした派閥の裏金問題、さらにアベノミクスの金融政策によって生まれた歴史的な円安に今苦しんでいるという面もあり尻ぬぐいに追われた、ということです。
しかし、逆に岸田総理が安倍政治に対して、きっぱりと決別を宣言することができなかった、ということが岸田総理の限界だったと言えると思います。
「新総裁のもとで真のドリームチームを…」
トラウデン直美さん:
「過去の尻拭い」というところは、少しモヤっとしてしまいます。党の不透明で、国民に対して誠意のない内状を変えられなかった人達が今も自民党にたくさんいる。次の総裁候補になる人もそうかもしれない、となったときに「そのままで何か変わることはあるのかな」と正直思ってしまいます。
星浩さん:
本質的な疑問だと思います。“ポスト岸田”としてみなさん名前が挙がっていますが、要するに結局、自民党の中で例えば「政策活動費という不透明な制度を温存しましょう」とみんな一致しているわけですから、「本当に抜本的な改革ができるのか」ということはもちろん疑問が出ます。
それから、この人たちを支えて投票する議員からすると「とにかく誰でもいいから次の選挙で生き残りたい」というのが本音です。「生き残りさえすれば、元の制度に戻せばいい」とみんな思っています。なので、そういう環境の中で“表紙”だけ変えても本当に自民党は変わるのか、というのは非常に大きな疑問だと思います。
藤森キャスター:
岸田総理は会見で“新総裁のもとで真のドリームチームを作って、国民の共感を得られる政治を実現すること”という旨を述べていました。これは、自身が“ドリームチーム”を作れなかったことをほのめかしてるようにも聞こえます。
星浩さん:
バスケットボールにしても“ドリームチーム”というのは、底辺の選手がたくさんいて、それの一番上のベストくらいですから。いま、底辺の人たちはとにかく政治とカネの問題などを元に戻したくてしょうがないわけです。
なので、“ドリームチーム”といっても支えてる人たち、つまり本の中身を変えないと、表紙だけ変えても駄目だ、ということをこの間の動きはむしろ物語っていると思います。
トラウデン直美さん:
岸田総理の思う“真のドリームチーム”はわからないですが、国民から見た“ドリームチーム"と思える人たちはちゃんといるのでしょうか。
星浩さん:
自民党の中だけで選ぶ、というよりも近く行われる総選挙で国民が選挙権を行使するということになると思います。
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<プロフィール>
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身 政治記者歴30年
トラウデン直美さん
慶応大学法学部卒
環境問題やSDGsについて積極的に発信