パリオリンピック™で日本の金メダル第1号を獲得した柔道の角田夏実選手に、スタジオにお越しいただきました。
日本勢 金メダル第1号 伝家の宝刀 「巴投げ」で掴んだ頂点
井上貴博キャスター:
パリオリンピックで、日本勢の金メダル第1号となった柔道女子48キロ級の角田夏実選手。必殺技“巴投げ”は対戦相手から「分かっていてもキメられる」といわれています。
【“必殺の巴投げ”で金メダル第1号】
・2回戦(45秒)巴投げ 腕ひしぎ十字固め
・3回戦(1分8秒)巴投げ 腕ひしぎ十字固め
・準々決勝(1分)巴投げ
・準決勝(6分55秒)反則勝ち
・決勝(4分)巴投げ
柔道混合団体戦で日本は決勝でフランスと対戦し、角田選手は2階級上(57キロ級)のシジク選手を相手に巴投げで一本勝ちを決めました。階級が上の人との対戦はけがのリスクもあると思いますが、怖くなったりしませんでしたか?
角田夏実選手:
すごく怖くて試合前に足が震えて、どうしようかなと思いました。
ホラン千秋キャスター:
階級が違うと、投げたくても投げられないということもありますか?
角田夏実選手:
腕力だけで持ち上げられてしまうこともあります。
相手が受けてくれたら、100キロくらいは投げることはできます。
世界制した「巴投げ」 特徴は?
井上キャスター:
角田選手の巴投げの特徴を教えてください。
角田夏実選手:
通常の巴投げは相手の下にもぐりこみ、片足で相手を蹴り上げます。
しかし、私は各国の選手に対策をされてしまっているので、通常のように投げることができません。
巴投げをかけようとすると、相手選手は技を受けられないようにグッと力入れてこらえるのですが、そこを私は両足で持ち上げ、逃げようとする相手選手を横に投げます。
井上キャスター:
両足を使うように改良をしたのですか?
角田夏実選手:
そうですね。両足で挟んだり、コントロールして、重心がかかっている方に落としたりしています。
対策をされてしまって「投げられない」、「ここからもう少し持ち上げたい」というときは、逆の足を使ってそのまま後転する勢いで投げています。
スポーツ心理学者(博士) 田中ウルヴェ京さん:
足の指で道着を掴むとも聞きました。
角田夏実選手:
特に寝技の時に足の指を使うことがあります。巴投げの場合は相手が逃げる方向に、骨盤をおさえて、手で持っているような感じで支えます。
井上キャスター:
両足で投げるリスクはありますか?
角田夏実選手:
あまりないですが、巴投げの全般的なリスクとして、相手の下にもぐりこんで引き込むので、相手選手がそれをさばいて横にこられると、そのまま抑え込まれてしまったり、寝技で攻められてしまうリスクがあります。
そのため両足が浮いてる中で、避けられてしまったら、リスクは大きくなります。
劇的変化 1か月で6キロ減量 減量後半は「水でいいから下がぶ飲みしたい」
井上キャスター:
角田選手の減量も話題になっています。YouTubeで公開された映像では、▼試合1か月前:体重54キロ、ウエスト66センチから、▼試合直前(1か月後):体重48キロ、ウエスト59センチと、劇的に変化した様子を見ることができます。
映像では「(減量後)あばら同士が当たって痛い」と話しています。どのように減量をされているのですか?
角田夏実選手:
食事制限もしながら運動量を増やしています。いつも練習にウエイトを取り入れているのですが、それを少し減らしながら有酸素系の運動を増やしていきます。
井上キャスター:
減量していて、戦う力は出ますか?
角田夏実選手:
計量前は全然動けなくてヘロヘロになので、「今回失敗かな」「試合できないかな」と思うのですが、計量が終わって、水分や食事をとった瞬間にめっちゃ元気になって「戦える!」ってなります。もう全然違いますね。
ホランキャスター:
減量しているときに一番食べたくなるものはありますか?
角田夏実選手:
減量を始めて2週間くらいの、体重が少し落ちてきたときは、お米が食べたくなります。
減量の後半、朝にお米を少し食べることができるのですが、最後の方には、またお米を食べることができなくなります。
水分も減らしていくので、そのときは“お水”をがぶ飲みしたくなります。「水でいいから下がぶ飲みしたい」という気持ちですね。
倒れたことはありませんが、お風呂あがりに立ちくらみのような、ブラックアウトをしそうになったことはあります。
井上キャスター:
お酒がお好きと聞きましたが、オリンピックのあとは飲みましたか?
角田夏実選手:
試合が終わったあと、パリで両親と軽く飲みました。
“決めごと”だらけ 実は「心配性」「ネガティブ思考」な角田選手
井上キャスター:
実は「心配性」「ネガティブ思考」「プレッシャーに弱い」と聞きました。(克服する)ルーティーンがあるということですね?
角田夏実選手:
決まりごとはとても多いです。
Tシャツ・スパッツ・下着はいつも使っているもの、試合場には同じブランケットを持っていきます。
食べ物も決まっていて、カステラは絶対必要です。朝は自分で作ったおにぎりを持っていきます。
間食のゼリーも種類が決まっていて、それ以外だとスイッチが入らない、不安になってしまいます。
食べて調子よくいったときのものなどを取り入れるので、1日中ルーティーンづくしです。
スポーツ心理学者(博士) 田中ウルヴェ京さん:
実はネガティブ思考って、それだけ心理的な準備ができる人なのでとても大事なポイントです。
角田夏実選手:
諦めずここまで戦ってこれたのは皆さんの応援があったからだと思っています。
金メダルを取って日本に帰ることができて、少しでも皆さんの力になれたら嬉しいです。応援ありがとうございました。
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<プロフィール>
田中ウルヴェ京さん
スポーツ心理学者(博士) 五輪メダリスト 慶應義塾大学特任准教授
こころの学びコミュニティ「iMiA(イミア)」主宰