「第5回アトツギ甲子園」に向けたSUMMER CAMPが開催 地域の後継者たちに新たな道を示す

2024-09-13 08:00

9月9日(月)~10日(火)、東京のステーションコンファレンスで「アトツギSUMMER CAMP」が開催され、各地の若手後継(予定含む)、支援機関が一同に会しました。このイベントは今年で第5回目を迎える「アトツギ甲子園」に向けてのキックオフイベントとして行われ、自身の家業を継ぐ予定の若手後継者たちがビジネスのノウハウや心構えを学ぶ機会として企画されものです。この事業を通した地域活性化への期待がますます高まっています。

各地の産業を担う人不足 アトツギ人材の育成が急務

近年日本では、中小企業や小規模企業の後継者不足が深刻な問題となっています。2023年の帝国データバンクの調べでは、国内企業の社長の平均年齢は約60.5歳に達し、高齢化は33年連続で最高を更新しています。そのなかでも中小企業の経営者の率は高く、70歳以上の経営者の数は245万人といわれ、特に厳しい状況です。この事態が続くと、企業倒産や雇用、GDPへの影響が懸念され、なんと650万人の雇用と22兆円のGDPが消失する可能性があります。特に地方では人手不足や高齢化がより進んでおり、問題は顕著です。

これを打開しようと、経済産業省は若手後継者の支援・サポートの充当を図っています。2021年からは「アトツギ甲子園」を開催し、若い経営者の将来設計プランやアイデアに対して補助金を出す試みを始めました。今回のキックオフイベントでは、後継者支援を担う金融機関や行政機関との壁打ち相談会も行われ、約150人に及ぶ参加者は盛んにディスカッションを行い、質問を支援者たちにぶつけていました。

アトツギ成功者4人のトークセッション

イベントでは、それぞれの地域で活躍する先輩アトツギ経営者たちがトークセッションを行い、自身の経験や課題について語りました。

2016年から父親が運営する綿材加工製造の会社を引き継いだ株式会社友安製作所の友安啓則氏は、父親や他の従業員たちとの経営方針や考え方の違いでぶつかったことを語りました。

セッションで話をする友安啓則氏

「当初は何をやるにしても全部反対されました。努力を重ねて実績を積み周りに味方をつくることで、徐々に反対されなくなりました。3年くらい前からいい距離感がつかめるようになったと思います」
また、彼らと膝を突き合わせて話をすることは、アトツギ事業者にとっての義務だと思っているとも話しました。

「アトツギっていうのは既存の資源・財産を古い世代の方々からもらっているのですから、反対意見に耳を傾けることは当然やらなきゃいけないこと。それに、その意見を取り入れて事業を練り直すことで、企画がより内容がブラッシュアップされ、結果的によい結果につながることもあると考えています」

経営について語る河田亮一氏

加和太建設で代表取締役を務める河田亮一氏は先代からの会社の課題に直面したときの経験を話しました。
「売上は30億ぐらいありましたけど、同時に借金も相当ありました。新規の借入れを断られたり、取引先を失ったり私が会社に入った当時は相当なピンチでした」
河田氏はそうした会社の状況を打開するのは社員一人ひとりが問題意識をもって働くこと、つまり意識改革が重要だと考えました。2年ほど社員たちと話し合いを重ね、会社のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を統一させることを目指しました。
「結局ぶつかって辞めていってしまった社員もいましたが、残ってくれた社員もいる。その人たち一緒に成長していっている、今はそんな状態です。いろんな課題はありますけど、みんなでチャレンジしていける仲間でありたいなと思っています」

セッション会場では多くの質問があがった

そして小平株式会社小平勘太氏は質問者から「成功の秘訣」を聞かれ、こう答えていました。
「これはメンタル面での話ですが、『ここの会社辞めても、今より稼げる』と思っている人は割と成功しやすい傾向があると思います」

質問に応える小平勘太氏

『自分はこの会社で成功するしか道がない』そんながむしゃらな思考よりも、自分で他の事業を始めたり、海外の会社に就職したり、「自分には他にも成功する道がある」そう柔軟に考えられることができれば、逆に思い切った決断がしやすいのではないか、ということでした。

参加者に向けてメッセージを送る山中大介氏

最後にこのSUMMER CAMPの参加者に向けて株式会社SHONAI代表取締役の山中氏はこう語りました。
「そもそもアトツギの会社じゃなかったとしても、自分は社会的ニーズがあって活躍できるという人が成功していくというのはある種当たり前のことです。

大切なことは、自分に与えられた環境を周りのせいにしない。いいわけをしないことです」当事者意識をもって自身の会社の課題に向き合えば必ず答えは見つかる。そうエールを送りました。

このイベントでは今年初の試みとして、全国の後継者たちを対象にオンラインコミュニティサイト「ACTーアクトー」の立ち上げも告知されました。このサイトは事業の後継者や継承を迷っている人ならだれでも参加可能で、さまざまな悩みや問題に関して多くの人と交流することができます。事業経営者にとっては大きなサポートになることでしょう。

アトツギ甲子園エントリー受付開始 経営のチャンスに

「アトツギ甲子園」は、39歳以下の中小企業後継者を対象とした全国大会で、企業の未来を描いたプレゼンテーションを競います。地方予選を勝ち抜くための高いレベルのプレゼンが期待され、経済産業大臣賞や補助金などの特典があります。エントリー受付は12月6日(金)までなので、興味がある方はぜひ参加を検討してみてください。

公式HP:https://atotsugi-koshien.go.jp/

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