自民党総裁選の投開票まであと2日。争点の一つが「解雇規制の見直し」です。これまでに2回、会社を「クビ」になったという男性を取材しました。
兵庫県に住む佐藤大輝さん(33)。Uberの配達員やライターの仕事をしていますが、以前は正社員として働いていました。ところがある日…
佐藤大輝さん
「これが2社から渡された解雇通知書。2回、クビになったことがあります」
1回目は美容関係の会社で、月に100時間の残業もしていましたが、勤務態度不良などを理由に解雇。2回目は運送会社で、休日に業務電話に出ないなどとして、解雇されました。
佐藤大輝さん
「クビになる前に残業代を請求していて、所長から呼び出しがあって、『残業代の計算が終わりました』と言って渡された茶封筒の中に残業代計算書と一緒に解雇通知書が入っていました。正直、最初の3秒ぐらいは訳がわからなくて、固まっていた」
佐藤さんは「違法労働をさせられていた」「不当解雇だ」などとして、2社とも裁判を起こし、あわせて4700万円の解決金が支払われました。しかし、解雇は「地獄」だったと振り返ります。
佐藤大輝さん
「めちゃくちゃつらかったですね。地獄みたいな生活でした。経済的・精神的にも削られて」
この解雇をめぐる規制が争点となっているのが、自民党の総裁選です。
河野太郎 デジタル大臣(今月5日)
「一方的な解雇をされたときに、金銭補償をするルールがあれば、そのルールが適用されて補償を受けることができる。そして、次の仕事に余裕を持って向かうことができる」
小泉進次郎 元環境大臣(今月21日)
「多様な働き方の時代にあわせた、より働き手のリスクが減るようなサポートができるように、労働市場の改革をやっていきたいということなんです」
その上で、小泉氏は「リスキリングや再就職支援を義務付ける」としています。
社員を簡単にクビにできないとされる日本。経営難などによる整理解雇では、▼人員削減の必要性や、▼解雇回避の努力など、4つの要件を考慮する必要があります。
労働法に詳しい 神戸大学 大内伸哉 教授
「4要素というのは、特に法律に書かれているわけではない。(裁判では)とりわけ解雇回避努力というのを非常に企業に求める傾向がある」
一方、この解雇規制の見直しが「解雇の自由化につながるのでは」との見方も広がりました。
高市早苗 経済安保担当大臣(今月9日)
「解雇規制の見直しに反対。日本の解雇規制がきつすぎるかというと、そうではない」
上川陽子 外務大臣(今月13日)
「お金で一方的な解雇が自由である、これは決してあってはならない」
各候補者のなかでも、見直しに前向きな立場と慎重な立場でわかれています。
労働法に詳しい 神戸大学 大内伸哉 教授
「解雇の議論は、冷静な経済政策的な観点とか、引いた目で見ると正しいと思われる政策でも、現場の労働者の感覚・心情も考えなくては駄目」
「2回クビ」を経験した佐藤さん。それでも、解雇規制の見直しには賛成で、解雇された後のセーフティネットについてもっと議論してほしいと話します。
佐藤大輝さん
「明らかにこれは不当解雇だよねっていう解雇でも、裁判所が『これは不当解雇だ』っていうまでの期間は不当解雇として処理されないので。もし、クビにされちゃったときに何とかする仕組み、生活だったり、そこをもう少し議論してほしい」