猫はなでた後に、すぐに体を舐めはじめることがありますよね。これを見て「え、もしかしてなでられるのが嫌だった?」とショックを受ける人もいるかもしれません。実はこの行動、多くの猫に共通した本能的な習性からきている行動なのです。今回は、猫がなでた場所をすぐ舐める・グルーミングをする理由について解説します。
1.毛並みを整えたい
猫が「なでた場所をすぐにグルーミング」する理由のひとつは、毛並みを整えたいからです。
猫をなでているときは、被毛の表面だけをなでるので、自然に表面の毛(オーバーコート)と内側の毛(アンダーコート)との流れが乱れてしまうことがあります。
特に毛の流れに逆らって逆毛でなでたり、ワシャワシャとかき回すようになでたりすると、猫にとっては自然な毛の流れではないと感じるため、すぐに整えたいと感じるのです。
猫の毛は、外部からの刺激を皮膚に直接伝えるため、毛並みが整っていることがとても大切なのです。猫の背中の毛の先に触れると、皮膚がピクッと波打つのを見たことがある人も多いでしょう。
毛の向きが乱れていると、この感度が低下してしまうので、猫はなでられるとすぐに毛並みを整えようとするのです。
2.ニオイを取りたい
猫の嗅覚は、人間の5倍ともいわれています。犬にはかないませんが、それでも、人間には一種類としか感じられない多種多様なニオイの中から、あのニオイこのニオイを分類できるほど優れています。
猫がなでられた場所をすぐにグルーミングするのには、なでられた人のニオイを取り去りたいという本能的な行動があります。
野生猫は、捕食者に自分の存在がバレないように、できるだけニオイを消しておくことが生き延びるために必要でした。この本能は、現在のイエネコにも残っているため、猫は頻繁に毛づくろいをしているのです。
人間が猫をなでると、皮脂や汗などの分泌物が猫の毛皮に付着し、その場所に人間特有のニオイが残ります。猫にとって、人のニオイをつけておく必要がないために、なでられるとすぐに舐めてニオイの管理をしようとするのです。
3.触れられた感覚のリセット
人に慣れている猫は、なでられることが大好きな子が多いでしょう。信頼している人から優しくなでられることで、安心感を得ることができます。これは親しい仲の猫同士が、お互いにグルーミングしあうのと同じ感覚なのです。
しかし、猫の毛は感覚器官としても優れています。猫同士のグルーミングとは異なり、人からなでられた後には「ベタッと触れられた感覚」が残ってしまい、猫にはすこし違和感があるものかもしれません。そのため、なでられた後は感覚をリセットするためにグルーミングをするのです。
興味深いことに、ブラッシングの後は、急いでその場所を舐めることはありません。これは、ブラシの毛が、猫の舌に近い感触を与えるからかもしれません。
なでると急いでグルーミングをされてショックだと感じてしまう人は、なでた後はブラッシングで仕上げてあげるといいかもしれませんね。
まとめ
猫がなでたあと、すぐにグルーミングをはじめるのは、猫が自分の被毛や皮膚感覚の状態を「最適化」するための自然な行動です。
特に不快感やストレスを示しているわけではありません。なぜなら、自分に正直な猫は、もしなでられるのが嫌だった場合には、なでている最中に嫌がるはずだからです。
猫自身は、大好きな飼い主さんになでられてイイ気持ちになり、それをいつもの行動で締めくくることで快適さや安心感を維持しているのです。
私たち人間にとってはすこし不思議ですが、猫にとって、かつては生き伸びるために身につけた行動だと考えると、よりいっそう猫と暮らすありがたみを実感するのではないでしょうか。
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