なり手不足に高齢化、そして殺人事件…転換期迎える「保護司」に密着「外れかけたレールを元に戻してくれた」“元不良”保護司が考える更生とは?【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-10-16 14:59

新たな視点と独自取材でお伝えする「eyes23」。罪を犯した人の立ち直りを支える「保護司」についてです。保護司はボランティアですが、今年5月には保護司が殺害される事件も起きました。制度はどうあるべきか。不良から保護司になった男性を通じて考えます。

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「事件があったからといって身構えたり、距離が広がったりもしない」

事件は今年5月、滋賀県大津市で起きました。保護司をしていた新庄博志さん(60)が自宅で殺害され、新庄さんが保護観察を担当していた男が逮捕されたのです。

罪を犯した人の立ち直りを支える保護司。当事者たちは事件について、どのように感じているのでしょうか。

電気工事会社で働く十島和也さん。保護司歴6年の42歳です。

保護司としての活動は、いつも仕事終わり。この日、十島さんのもとにやってきたのは10代の兄弟。兄弟は傷害などの非行行為で保護観察処分となり、今年の初めから十島さんとの面談を続けています。

十島さん
「アルバイトは週5でいけているの?」

兄弟
「いや、今は週2になっちゃって。先週ちょっと休んでしまったんですよ」

十島さん
「微妙だよな。無理に働きたいだろうけど、無理に働いて倒れてもしょうがない。だから、体調と相談しながら」

兄弟の体調に気を配る十島さん。この日は、兄弟と母親との関係に話が及びました。

十島さん
「お前らが支えていかなきゃなって、そう簡単なことは言えないけど」

兄弟
「お母さんを助けたいと思っても、素直になれないんですよね」

十島さん
「そう。分かるんだけどさ」

兄弟
「反抗しちゃうんですよ」

十島さん
「ここで言っていることや思っていることを素直にお母さんに向けられるようになったら、最高じゃない?そういう気持ちがあるんだったらやってくださいよ」

兄弟にとって十島さんは…


「自分と年齢が近い人と話しても適当に聞かれたりしていた。怒るときはちゃんと怒ってくれるので、感謝でしかないです」


「真面目にやっていけたらいいなって。良いことや悪いことはいろいろあると思うけど、更生して続ければいいかなと」

十島さんとの面談は兄弟の支えになっていました。

十島さん
「本人が懲りて、真っ当に生きたいと思わないと、まず何ともならないと思う。それで思っていたってできないやつだっている。ちょっと横ぶれするのに少しでも支えぐらいになれればいいかな」

支える立場の保護司が殺害された事件について聞くと…

十島さん
「事件があったからといって別に身構えたりもしないし、距離が広がったりもしないし全く変わらず。『こいつに何かやられるかもしれないな』と思って話していたら、いつまで経っても心なんか開けないですよね」

保護司は非常勤の国家公務員ですが、実は報酬の無いボランティアです。十島さんはなぜ保護司になったのでしょうか。

自らも対象者だった過去 “元不良”が保護司になった理由

それは、16歳の時のこと。

十島さん
「バイクに乗っていて、パトカーに追いかけられて仲間が2人が捕まった。2人を逃がして公務執行妨害で、その時にお巡りさんが転んで怪我したみたいで、傷害とかもいろいろついて」

保護観察処分を受けた十島さんは、中沢照子さんと出会います。20年にわたり、100人以上の保護観察を担当してきた元保護司です。

元保護司 中沢照子さん(83)
「みんな気合いが入りすぎ、元気がありすぎ、迷惑かけすぎ、そんな感じだった」

十島さん
「最初は行かなきゃいけない約束だから行くってね」

面談を繰り返す中で、十島さんは少しずつ心を開いていきました。

十島さん
「やって当たり前と言われるようなことを『あんた偉いじゃない』と褒められた。だから話していて気持ちよくなる」

1年間の保護観察期間が終わっても、交流は続きました。

十島さん
「年に何回か集まりがあるときに中沢さんに声をかけて、気づいたら縁は切れなかった」

そして6年前、引退する中沢さんの推薦で十島さん自身も保護司になったのです。

十島さん
「間違いないなく私の外れかけたレールが方向修正して、人に迷惑かけない程度には生きていけているので感謝しています」

対象者との信頼関係が基本にある「保護司」制度が今、大きな課題に直面しています。

担い手不足と高齢化…減り続ける保護司 解決の一手は?

大津市の事件の後、法務省が行った調査では、全国の保護司の約2割が「不安を感じている」と回答。

また、一部の対象者について、育成歴や性格などの情報が「事前に得られていない」という不満の声が上がりました。

法務省はこうした不安や不満を解消するため、3か月を目安に、心理学などの専門性を備えた保護観察官が直接、保護観察を行う取り組みを今年9月から試験的に始めました。

 東京保護観察所 箕浦聡 首席保護観察官
「3か月間のアセスメントに基づきまして、再犯のリスクですとかそういったものが可視化されますので、保護司さんたちの不安の解消に繋がるものと考えております」 

しかし、課題は安全対策だけではありません。 

保護司の数はこの10年で1000人以上減少。高齢化も進み、今後10年で4割が退任します。

こうした課題を克服しようと、全国のモデルとなる取り組みが東京・荒川区で行われています。

小原実さん(63)は荒川区の職員として勤務しながら、これまでに7人の保護観察を担当してきた保護司です。

荒川区・日暮里区民事務所 小原実所長
「当時、保護司の担い手不足を聞いた区長が私達に声をかけていただいたのがきっかけです」

現在も小原さんを含む4人の職員が保護司として活動していて、区では仕事と保護司の活動が両立できるようサポートしています。対象者にとってもメリットがあります。

小原さん
「対象者の住宅問題や仕事、就労のことも含めて行政の守備範囲が広いので、仕事上のいろんな人脈を生かしながら適切な支援に結びつけることができる」

転換期を迎えている保護司制度。十島さんたちが描く理想の社会とは。

十島さん
「保護司がやらなくてはいけないではなくて、社会が全部受け入れられるようなシステムになっていけばいいのかなと」

減り続ける保護司 問われる更生のあり方とは

小川彩佳キャスター:
保護司のみなさんは無報酬のボランティアです。そもそも明治時代に民間の有志から始まったという世界でも珍しい制度ですが、高齢化やなり手不足が課題となっています。

法務省の有識者検討会では、無報酬ではなく報酬を支払うべきだという報酬制の導入も話し合われましたが、委員会からは「無報酬だからこそ対象者が心を許してくれる」という意見が出て見送られたという経緯があります。

小説家 真山仁さん:
今は社会に余裕が無くなってきている。誰かのためにボランティアをするという尊い仕事が難しくなっているということが1つある。複雑化しているので、デリケートな若い人たちに対応する人に最低限の知識や資格があった方がいい。尊いから無報酬でやるというのは、私は国として非常に酷いことを言っていると思う。ここまで尽くしている人に対しては報酬を払うべきであり、ちゃんと資格としてリスペクトすることからしか社会に貢献できない。日本はこういうところに甘えがあって、是非選挙で争点にして欲しい。

藤森祥平キャスター:
一方であまりハードルを上げすぎてしまうと、なり手が集まらないですよね。

真山さん:
あまり難しくする必要はないのですが、最低限の研修を受けるだけでもいいと思います。それによって報酬をいくらか払うことが保護司のモチベーションや誇りになる。お金を貰っているからといって若い人たちは金儲けしていると思わないのではないでしょうか。

小川キャスター:
どう持続可能にしていくか考えていく必要があります。

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<プロフィール>

真山仁さん
小説家 「ハゲタカ」「ロッキード」など
最新著書に「疑う力」

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