大逆風にさらされる石破政権。連立をめぐる駆け引きが続く中、総理大臣の指名選挙が来月11日に行われる方向です。ただ、与党が過半数に満たない状態で行われるのはおよそ30年ぶりのこと。指名選挙で誰の名前を書くか。国民民主党を中心に政局が揺れ動いています。
【写真を見る】国民民主中心に揺れ動く?「誰の名前を書くか」約30年ぶりに与党過半数割れで総理指名選挙【news23】
全国で当選証書付与式 女性当選者は過去最多に
全国各地で行われた小選挙区の当選証書の付与式。
――当選証書の重みは?
初当選・立憲民主党 青森3区 岡田華子さん(44)
「重いですね。県民、国民の期待が集まったものだと思うので、当選証書に恥じない仕事をしたい」
実は今回の衆院選挙、女性の当選者が過去最多の73人でした。前回より28人増えています。
愛知県庁では、今回の選挙で政党要件を満たした日本保守党の河村たかし前名古屋市長が当選証書を受け取りました。
――市長と心持ちは違いますか?
日本保守党 愛知1区 河村たかし 名古屋市長(75)
「だいぶ違いますわね」
――名古屋弁はどうしますか?
河村たかし前名古屋市長
「同じだが何言っとんの。わしが総理になったら国語の教科書に『せぁた、せぁた、桜がせぁた』と」
今回の選挙で躍進した国民民主党の日野紗里亜さん。4人の子供を育てながらの立候補で、60万円の不記載で総務大臣を辞任した鈴木淳司さんを相手に、4万票差で初当選を勝ち取りました。
国民民主党 愛知7区 日野紗里亜さん(36)
「子どもに国会議員のお仕事は何?と聞かれるたびに『みんなの幸せのためにルールを作るお仕事だよ』と答えているので、『ママはその仕事をしてくる』と伝えたい」
水面下で駆け引き続く “総理指名”誰の名前を書く?
当選者たちが国会に登院するのは、11月11日の召集で最終調整されている特別国会。そこで行われる総理大臣の指名選挙をめぐって、水面下で駆け引きが続いています。
国民民主党 玉木雄一郎代表
「首班(総理)指名選挙がまだいつになるかよくわかりませんけれども、その際に書くのは『玉木雄一郎』です。決選投票はどうすんだという更問いがあると思うが、『玉木雄一郎』と書きます」
総理指名選挙で誰の名前を書くか。
今回の選挙で大きく議席を減らした与党の全議員が「石破茂」と書いても、過半数には届きません。一方で、立憲民主党の全議員が「野田佳彦」と書いても過半数には届きません。
そこで今回の選挙で躍進した国民民主党がどちら側につくか、双方がラブコールを送っている状況ですが、玉木代表は自分を指名させると強調しています。
立憲民主党の野田代表は30日、日本維新の会、共産党と党首会談を行いますが、国民民主党の玉木代表との会談は開催のめどが立っていないといいます。
29日夜、BS-TBSの番組に出演した国民民主党の榛葉幹事長は…
国民民主党 榛葉賀津也幹事長
「党首会談の目的が首班指名で野田代表の名前を書いてほしいというお願いのご挨拶ということで、『玉木』と1回目、2回目書くので来ていただいても我々は変わらないと。我が党との党首会談はなくなった」
議席増加の国民民主党 SNSで若者の支持拡大
多くの有権者が自民党政権に“NO”を突きつけた今回の衆院選。しかし、投票率は53.85%と、戦後3番目に低い結果となりました。
そんな中でも議席を大幅に増やしたのが、国民民主党です(公示前7議席→選挙後28議席)。
投票1週間前に実施した調査では、多くの20代~30代が投票先として国民民主党を選んでいます。
20代
「投票先は国民民主党。一番政策が現実的で、地に足がついてる」
今回の選挙で、なぜ国民民主党は若い世代から支持を得られたのか。
独自のデータで選挙を分析する専門家は、国民民主党の戦略について、こう分析します。
JX通信社 代表取締役 米重克洋氏
「『若者を潰すな』」ということで、若い世代の社会保険料などの負担が高齢者に比べて非常に重くなっていること、若者・現役世代の現実的な課題に対して語りかけていく戦術が非常に効いている」
若い世代へのアプローチとして国民民主党が多用したのが、SNSのショート動画です。
国民民主党 インスタグラムより
「賃金上がっても手取りが増えない。ガチで危機感持った方がいい」
国民民主党 YouTubeより
「全ての働く人の減税効果を生み出すのが私たちの政策です」
思い出されるのが7月の東京都知事選。候補者の石丸伸二氏が、SNSを駆使して急速に知名度を広げました。
40代
「玉木氏が有権者に訴えている動画を見た。共感できる内容だったなと」
20代
「日頃自分が見るSNSの中に、政策の動画や広告が出てくるのは自然と目につく」
毎回、選挙のたびに課題となる若い世代の投票率。国民民主党などのSNS戦略が、1つのヒントになるのではないかと専門家は話します。
米重克洋氏
「都市部においては地域の繋がりよりも、インターネットを通じて地域の壁を越えたコミュニケーションや情報収集をしている人が多くなってきている。若い世代においてはそういう傾向が強い」
具体的な戦略を訴える戦術が功を奏したか いろんな媒体の意見を判断することも重要
小川彩佳キャスター:
国民民主党の躍進の背後にはSNS戦略があったということですが、どう分析されますか。
データサイエンティスト 宮田裕章氏:
ターゲットマーケティングというのはアメリカ大統領選挙でも常套手段です。若者がどんな政策を欲しているのか。そういった具体的な政策をYouTubeやSNSを通じて訴えかけていく戦術が、今回功を奏した。伸び悩んだ政党は裏金問題を批判しても、ポジティブな面や票を入れてもらうような部分が足りなかったと思います。
こうした中で、SNSでは都合の良い部分だけが提供されてしまうので、その候補者あるいは政党がどのようなことを考えているのかを中立的なマスメディア等の色々な媒体を通して判断していくのも重要です。
藤森祥平キャスター:
自分の考えに近いものだけでなく、色々な視点の意見を取り入れながら決めていくということですね。
「白票」SNSで賛否 無効票扱いも
藤森祥平キャスター:
今回の衆議院選挙投票率は53.85%、戦後3番目の低さでした。この投票に関して、何も書かずに1票を投じる「白票」について考えていきたいと思います。
「投票したい人がいないときは白票を投じよう」といった声がある一方で、「誰かにどこかに投票しよう。白票に意味はない」という否定的な声などSNS上でも議論になりました。
白票というのは、投票用紙に候補者の名前などを書かずに投じると「無効票」として扱われます。一方で、投票率には反映されます。
今回の選挙では、白票を含む無効投票の割合は小選挙区で全体の3%程度でした。数にすると167万票程です。前回の衆議院選挙では、無効投票のうち6割ほどが白票だったということです。
小川キャスター:
今回はこうした呼びかけが多かったです。賛否が分かれています。この白票の意味というのはどう見ますか。
宮田裕章氏:
まず投票に行かないよりは、投票に行く。白票を投じたとしても、投票に行くことに意味があると思います。白票は文脈によって、どういう意味を持つのかが違ってくるので、そこをしっかり考える必要があります。
今回のように事前の議席が与党が多い局面だと、白票を投じるということは政権交代を狙う野党ではなくて、やや与党寄りの判断になるということです。投票するよりは消極的ではありますが、賛成という意味を今回は持ちます。これはしっかりデータとしても残るので、各政党の政策にも反映されていくわけです。
一方で重要なのは、国民として政治的関心を持つことだと思います。例えばある海外の人と話をした時に、その国では教育格差を解消せずに政治的関心を持つ国民を増やさなかったそうです。自分たちのことだけ考えて格差を放置した結果、何が起こったかというと、政治の中でまともな選択肢が残らなくなってしまいました。気づけば、政治というものがぐちゃぐちゃになってしまったということです。
私たちも無関心が何をつくるのか。関心を持ち続けながら政治をどう変えていくか。色々な投票の仕方、声のあげ方があると思いますが、自分自身だけではなくて、周囲も関心を持つような社会を作っていくことが大事だと思います。
小川キャスター:
政治の緊張感にも繋がっていくということですね。
宮田裕章氏:
政治や行政に対して、“ちゃんと見ている”と示すことが透明性にも繋がります。
藤森キャスター:
なかなか決めるのが難しい、名前を書きたくないということがあるかもしれないが、ちょっとした共通点を見出して誰かを選んで書いていくことで次回に繋がります。
小川キャスター:
実際ブースの前に立って何も書かない白票を投じるというのは勇気がいることだと思います。その時のモヤモヤを是非次の選挙に活かして欲しいですね。
「みんなの声」は
NEWS DIGアプリでは『白票を投じること』について「みんなの声」を募集しました。
Q.選挙で白票を投じることに意味はある?
「かなりある」…7.5%
「それなりにある」…26.8%
「投票率は上げられる」…13.7%
「全くない」…50.0%
「その他・わからない」…2.0%
※10月29日午後11時20分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
========
<プロフィール>
宮田裕章さん
データサイエンティスト 慶応大学医学部教授
科学を駆使して社会変革に挑む