不登校に不当解雇、逆境を乗り越え国政へ 立憲の新人が自民ベテラン候補にまさかの勝利【衆院選2024・東京30区】

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2024-11-02 08:06
不登校に不当解雇、逆境を乗り越え国政へ 立憲の新人が自民ベテラン候補にまさかの勝利【衆院選2024・東京30区】

「これまでたくさん聞いてきた市民の声を、国会でしっかり届けるという仕事に全力を費やしていきたい」

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花束を手にこう語ったのは、東京30区で当選した立憲民主党・五十嵐衣里氏(40)だ。約9万8000票を獲得し、2位の自民党・長島昭久氏(62)との差はわずか6000票あまりだった。

東京30区は、区割り改定で今回新たに新設された選挙区。府中市、多摩市、稲城市の3つの市から構成され、前職の長島氏に新人4人が挑む構図となっていた。

五十嵐氏と長島氏はあらゆる面で対照的だ。

中学時代にいじめが原因で不登校になった五十嵐氏は、飲食店やトラック運転手など様々な仕事をしながら高卒認定資格を取得。その後、夜間大学に通い30歳で司法試験に合格して弁護士となり、2021年からは都議会議員を務めた。

対する長島氏は2003年に初当選して以来、衆議院議員を7期務めた大ベテラン。民主党、希望の党などを経て2019年に自民党に移った。防衛副大臣の経験もあり、外交・安全保障のスペシャリストとして石破政権では首相補佐官に起用された。

五十嵐氏の出馬表明が公示直前だったこともあり、当初は長島氏が優勢と見られていた。こうした中で五十嵐氏はいかにして票を伸ばし、勝利したのか。

「知名度ゼロ」からの戦い 自らの経歴を武器に無党派層から多くの支持

選挙戦が始まる前、「長島氏の横綱相撲の中で、知名度ゼロの状態からどれだけ知ってもらえるかが勝負」と語っていた五十嵐陣営。実際、3年前の都議会選挙では隣の武蔵野市から選出されており、30区における知名度は決して高いとはいえなかった。

選挙戦に突入すると、野田佳彦代表や菅直人元総理などが次々に五十嵐氏の街頭演説に駆けつけた。集まった大勢の聴衆を前に、自民党の政治とカネの問題を非難すると同時に「彼女なら国の政治を変えられる」と五十嵐氏のクリーンさ、フレッシュさをアピール。

五十嵐氏本人は、不登校だったことや、不当解雇された経験などを交えて、子育てや介護、進学、就職に不安を感じる人々や、物価高で生活がままならない市民の声に寄り添う政治を演説で訴えた。

それが多くの有権者の心に響いたのか、JNNの出口調査によると五十嵐氏は無党派層からの票を半分以上獲得。立憲民主党を支持する人々の9割以上の票を固めたうえ、もともと自民党、公明党を支持している有権者からも約2割の票を得た。

また、幅広い年齢層から万遍なく票を得ているのも特徴だ。特に高齢者層からの支持が厚く、70代以上のおよそ半分が五十嵐氏を支持する結果となった。

実績アピールに「握手作戦」も 予想以上に強かった自民党への逆風

一方、長島氏は安全保障分野での実績や、政治家としての安定感をアピール。

加えて力を入れたのが、有権者一人ひとりの手を握りながら、目を見て言葉を交わす「握手作戦」だ。毎日駅や街頭に立ち、選挙戦を通して一万人を超える人々と握手を行った。決して手ごたえは悪くなかったというが、一部の地域ではあまりビラを受け取ってもらえず、陣営は「想像以上の逆風だった」と振り返る。

敗北が決まった後、長島氏は支援者に対し「すべて私の力不足。逆風ではあったものの、何かが自分の活動や姿勢には足りなかったと自問自答している」と険しい表情で語った。

長島氏は比例で復活当選を果たしたが、結局自民党が東京都の小選挙区で獲得したのは30のうち11議席のみで、立憲民主党の15議席を下回った。裏金問題が国民にもたらした不信感と失望感、それを払しょくできなかった代償はあまりに大きなものとなった。

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