猫の突然死は、年齢とは関係なくやってきます。猫を亡くした飼い主さんの精神的な苦しみは、言葉では言い表せません。しかし、猫の突然死は、日頃からの注意とケアで、そのリスクを大幅に減らせます。猫の突然死の原因を知って、さっそく対策をはじめましょう。
猫が突然死に至る4つの原因
猫が突然死に至る背景には、飼い主が気づきにくい症状や、見落としがちな生活習慣に関わるものもあります。
突然の別れを防ぐためにも、注意が必要な原因を確認しておきましょう。
1.心疾患
猫の突然死の原因のひとつに心疾患があります。特に猫に多く見られる心疾患が、肥大型心筋症です。心臓の筋肉が何らかの理由で厚くなり、心臓の機能が落ちて血液をうまく全身に送れなくなる病気です。
肥大型心筋症が進行すると、心臓の中で血液が停滞して血栓(血の塊)を作りやすくなります。血栓は心臓の押し出す力によって血管内へ出ていきますが、この血栓が血管に詰まってしまうことで突然死につながるリスクが高くなります。
肥大型心筋症は症状が出にくいことが多いため、異常が見られた時にはすでに重症化していることも少なくありません。
2.中毒
猫の突然死のなかで、心疾患の次に多いのが中毒です。特に0〜3歳くらいまでの若い猫は探索行動が活発なので、誤飲・誤食による中毒事故に遭いやすい傾向があります。
猫に中毒を起こす植物は多数あります。特にユリ科の中毒は使用している水でも中毒になるため、飼い主さんが気づかない間に花瓶の水を舐めてしまい急性腎不全を引き起こし、死に至る可能性があります。
また、除草剤や殺虫剤、洗剤にも猫が中毒を起こす成分が含まれています。猫の手が届かない場所に保管してあっても、何らかの原因で中身が漏れ出してしまう、使用後の包装などで遊んでしまうようなアクシデントが考えられます。
3.感染症
感染症のなかでも、猫伝染性腹膜炎(FIP)は進行が非常に速い病気で、成猫では発症後に数週間~数ヵ月、幼猫ではほんの数日で致命的な結果になる危険があります。
FIPは猫コロナウイルスの突然変異が原因ですが、このウイルスの保菌率は、外にいる猫で40%以上、多頭飼いをしている環境では80~90%ともいわれています。ただしこの菌を持っている猫すべてがFIPになるわけではなく、そのウイルスがFIPウイルスに変異した場合に起こります。
猫コロナウイルスを持っていても実際にFIPを発症するのは数パーセントですが、有効なワクチンが存在しないため、万が一発症した場合には迷わず速やかな対応が必須になります。
4.事故
最近は室内飼いの猫が多いため、交通事故に遭う確率は高くはないかもしれませんが、室内での事故は突然死の原因として考えなければなりません。誤飲や転落は家庭内でも起こります。
好奇心旺盛な若い猫は、おもちゃの一部、ヒモ状の物、キッチンにある食べてはいけないものを飲み込んでしまうことがあります。留守番中などで飼い主さんの知らないところで誤飲してしまうと、腸閉塞や窒息から死につながることがあります。
また、宅内でも高所からの転落は危険です。窓やベランダ、階段の吹き抜けなどからの転落事故はあとを絶ちません。
猫が予期しない落下で着地に失敗した場合、外から判別できるような傷がなく、脳や内臓の損傷によって突然死する可能性があります。
愛猫を突然死でなくさないために
突然死は、それまで健康に見えた猫が予期せず亡くなることを指します。愛猫の健康を守るには、「早期発見」「環境の管理」「日常的な観察」の3つが有効です。これらは飼い主としてできる最善のケアになります。
定期的に健康診断を受ける
年に1〜2回の定期検診でチェックしましょう。進行性の疾患や潜在的な病気の発見に役立ちます。ただし、心筋症は通常の健康診断でも検出されにくい病気です。
心筋症はどの猫種でも起こりますが、特定の猫種に多く見られます。ラグドールやメインクーン、ノルウェージャンフォレストキャットのような大型種やアメリカンショートヘアー、ブリティッシュショートヘアなどです。これらの猫種は、健康診断の際にエコー検査をしてもらうとよいでしょう。
動物病院では、ちょっとした不安でも気軽に相談できることが重要ですので、愛猫が元気なうちから健康診断を通して、信頼できる獣医師をみつけることも大切です。
危険な要因を排除する
家庭内の安全確保については、エアコンの上や階段の吹き抜けなど、危険な高所に登らないような対策や転落防止策を講じましょう。猫は本来高い場所が好きなので、可能であれば安全策を講じたキャットウォークを設置するのもよいでしょう。
もちろん有害な物質にも注意すべきです。台所や洗面所などの水回りには、洗剤や漂白剤のような危険なものが日常的に使用されています。あまりにも厳重にしてしまうと日常生活が不便になってしまいますが、できるだけ猫が触れられない場所に置いておいたり、猫が入らないようにしておく方が安全です。
またつい忘れがちになりますが、夏の暑さや真冬の寒さは心臓に負担をかけることもあるため危険要因です。人間は服装で調整しているので気づきにくいときもありますが、室内は猫にとっての適温を保つようにしてあげましょう。
細やかな観察を続ける
愛猫の健康に関する予防策で、最も大切になるのが毎日の細やかな観察です。わずかな変化も見逃さないように、よく確認しておくようにしましょう。はじめのうちは、ノートなどに記録しておくと、異常に気づきやすくなります。
また、次のような体調不良が見られたら要注意です。
- 突然の食欲不振
- 呼吸が速い、荒い
- 極端な元気消失
- ふらつき、歩行困難
- 嘔吐(特に連続で繰り返す場合)
- 下痢
- けいれん
- 発熱
- 排尿困難
これらの症状が複数同時に見られる場合、あるいは症状が急激に悪化する場合は、非常に緊急性が高いため、迷わずすぐに獣医師に相談しましょう。吐きやすい猫がいる家庭では、嘔吐を軽視してしまうことがありますのでご注意ください。
まとめ
猫の突然死は、心筋症など体内の変化と中毒や感染症、あるいは事故など外部からもたらされるものがあります。どちらも、ありふれた日常に潜んでいるため、定期的な健康診断や生活環境の安全性を保つことで、突然死のリスクを回避しましょう。
ただ、毎日の小さな注意力は愛猫の健康を守る上で重要ですが、猫のお世話を負担に感じてしまうほどやりすぎないことも大切です。
基本的に猫は体調不良があっても隠す動物ですし、睡眠中や外出中までずっと見張っておくのは現実的ではありません。予期せぬ事態を完全に防ぐことは難しいかもしれませんが、飼い主としてできる範囲で最善を尽くしましょう。
気になることがあればかかりつけの獣医師に相談して、安心できる環境を整えていくことが大切です。
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