猫の被毛にはさまざまな色柄があり、特定の色柄に特別な思い入れを持っている方も少なくないようです。そんな中、日本では少し地味なイメージを持たれているのがサビ猫です。色柄から付けられた「サビ」という呼び名で損をしているかもしれません。しかし、サビ猫はたくさんの魅力を持っています。今回は、そんなサビ猫の魅力をご紹介します。
1.サビ猫ってどんな猫?
サビ猫とは、三毛猫から白い部分を抜いた、黒と茶の2色の被毛を持つ猫です。日本ではよく見かけますが、エキゾチックショートヘアーやラガマフィンなど、この色柄を認定している純血種もあります。
日本では金属の錆に似ていることから「サビ猫」と呼ばれていますが、海外ではウミガメの甲羅を装飾品に加工した「べっこう」のように美しいことから、「tortoiseshell cat(トーティシェル・キャット:べっこう猫)」と呼ばれています。
2.サビ猫の性格
猫の性格は、遺伝、性ホルモン、生活環境や経験などの影響で形成されるため、サビ猫の性格が皆同じになるわけではありません。
しかし、総じてサビ猫は穏やかで頭が良く、他の猫にも優しく愛情深い面を持っているといわれています。遊びに夢中になり興奮しすぎるようなことも、飼い主が嫌がるイタズラをすることも、少ない傾向にあるようです。
後で述べる通り、サビ猫のほとんどはメスです。これらの性格は、メスであることに起因しているのかもしれません。
3.サビ猫の美しい柄ができる仕組み
動物の細胞には、両親から受け継いだ遺伝子が入っています。遺伝子とは、身体の構成や機能、性質などを決める設計情報のようなもので、細胞の核の中にある常染色体や性染色体上にあるのです。猫の毛柄も、遺伝子によって現れ方が決まります。
猫が持つ基本の毛の色は、黒、茶、白の3色です。ただし、アグチ毛を作る遺伝子を持っている場合、黒い毛はアグチ毛(根元と先端が黒色で中央部が茶褐色という3層の縞模様になっている毛)になります。
なお黒色は、遺伝子の型によって黒、チョコレート、シナモンと若干異なる色味が出ますが、ここではまとめて「黒系の色」と表現します。
この基本の毛の色を決める遺伝子に、他の遺伝子を無視して白猫にする、白い斑らを加える、全身に縞模様を出す、全体の色を薄める、などのアレンジを施す遺伝子が組み合わさり、最終的な色柄が決まります。
つまりサビ猫は、「白猫や白い斑らを作る遺伝子を持たず、黒系またはアグチ毛を作る遺伝子と、茶色い毛を作る遺伝子を持っている猫」ということになります。ちなみに、サビ猫の遺伝子に「白い斑らを加える」遺伝子が組み合わさると、三毛猫になります。
4.オスのサビ猫はほとんどいない
三毛猫にオス猫がほとんどいないというのは有名ですが、サビ猫も同じ理由でオス猫がほとんどいません。その理由は、猫の色柄に関する遺伝子の内、茶色の毛を作る遺伝子だけが、性染色体のX染色体上にあるからです。
性染色体とは、名前の通りオスかメスかの性別を決定する染色体です。X染色体とY染色体の2種類があり、XXの組み合わせだとメスに、XYの組み合わせだとオスになるため、オスかメスかで持っているX染色体の数が異なります。
X染色体上にある茶色の毛を作る遺伝子には、Oとoという2つの型が存在します。Oは、黒系の出現を抑止して茶色の毛にします。oは、黒系の色をそのまま出します。
X染色体が1本しかないオス猫は、黒系か茶色のどちらか一方の毛色しか持てません。しかし、1本のX染色体にはO、もう1本のX染色体にはoを持っているメス猫だけは、1匹で黒系と茶色の2色の毛を持てるのです。
ただし、ごく稀にXXYという組み合わせを持つ猫が生まれることがあります。この猫は性染色体異常なので繁殖能力は持ちませんが、外見はオス猫です。そして2本のX染色体を持つため、オスなのにサビや三毛の毛柄になることもあるのです。
5.全く同じ柄のサビ猫はいない
ここまでの説明を読んで、「黒系と茶色の毛が生える場所はどうやって決まるの?」と思われた方も多いのではないでしょうか。1つの細胞に2種類の型の遺伝子があるのですから、どちらが優先されるのかを疑問に思うのはもっともです。
実は、XYの組み合わせのオスが何の支障もなく生きていけることからも分かるように、X染色体が2本存在する必要はないようです。それどころか、2本あることで問題が生じることもあるそうです。
そこで組み込まれたのが、X染色体の不活性化という仕組みです。受精卵は何回も分裂を重ねて数を増やしますが、その数が数十個になった時にどちらかのX染色体が不活性化され、遺伝子の能力が封印されるのです。
つまり、それぞれの細胞が分裂を重ねる段階で行われた不活性化の結果、残った方のX染色体上の遺伝子型が働き、どの色になるかが決まるのです。
そのため、毛柄を決める遺伝子が全く同じ組み合わせのサビ猫がいても、決して同じ柄になることはありません。不活性化されるX染色体がどちらになるのかは、その時々で変わるからです。
クローン技術で亡くなったペットのクローンを作り出すビジネスがありますが、サビ猫や三毛猫のクローンは、元の猫とは全く異なった柄の出方をすることが分かっています。
まとめ
猫の魅力の一つに、バリエーション豊かな毛柄を挙げる方も多いでしょう。また、猫への興味が高まり、遺伝の勉強をし直した方もいるかもしれません。それ程興味のつきない猫の毛柄の中でも、特にユニークなのがサビ猫や三毛猫です。
よく似てはいても全く同じ柄にはならない美しい模様や、穏やかな性格の子が多いことも、ファンを惹きつける魅力です。一見地味かもしれませんが、一緒に暮らしてみると暮らしやすくて魅力満載なのが、サビ猫なのです。
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