一定の給与がある高齢者の厚生年金を減らす「在職老齢年金」について、厚生労働省は年金が減らされる収入の基準額を引き上げるか、制度を廃止する案を示しました。
「在職老齢年金」の制度は一定の給与がある高齢者の厚生年金を減らす仕組みで、現在は、65歳以上で働いている人は賃金と年金をあわせて月50万円を上回る場合に減額されます。減額の対象となっている高齢者はおよそ50万人です。
この制度が高齢者の働き控えに繋がっているとして、厚労省はきょうの年金部会で見直しの案を示しました。
▼制度を廃止する案のほか、▼減額される基準を月50万円から月62万円、または71万円に引き上げる案が示されました。廃止や引き上げにより、働く高齢者が受け取る厚生年金の額は増えますが、将来世代が受け取る年金の給付水準は低下することになります。
一方、現役世代の厚生年金保険料についても見直し案が示されました。
保険料は収入に応じて負担額が決まっていて、現在は基準となる月収の上限が65万円となっています。所得の高い人がより多くの保険料を納めることで年金の財源を安定させるため、基準となる上限を75万円~98万円の間に引き上げる案が示されました。
さらに、きょうの年金部会では基礎年金の将来の給付を底上げするための議論も行われています。厚生年金の積立金の一部を基礎年金の給付に充てることで、将来の基礎年金の給付水準がおよそ3割引き上げられる見通しです。
これにより、国民年金だけでなく、厚生年金受給者の基礎年金部分も引き上げられることになりますが、基礎年金の引き上げに伴い、将来的には数兆円規模の国庫負担が生じることになります。
厚労省はこれらの案について、年末までに議論を取りまとめたい考えです。