5年に一度の年金制度の見直しに向けて、厚生労働省の年金部会では全ての人が受け取る「基礎年金」について将来の給付を底上げするための議論が行われました。
基礎年金の給付水準 将来約3割引き上げの見通し
高齢者の生活を支える「年金制度」。現在、年金の給付額は将来世代の負担を減らすために、賃金や物価の上昇幅よりも抑えられる仕組みが導入されています。
会社員が受け取る「厚生年金」(報酬比例部分)は、女性や高齢者の社会進出が進んだことなどにより財政が比較的好調なため、給付額を抑える仕組みが2026年度に終了する見通しです。
一方、全ての人が受け取る「基礎年金」については、今後30年以上にわたり給付の抑制が続くため、将来もらえる年金額が低くなることが懸念されています。
そんななか、11月25日に厚労省の年金部会が行われました。
厚生年金の積立金の一部を、基礎年金の給付に充て、給付を抑える仕組みを終える期間を、「厚生年金」と「基礎年金」で一致させる案が示されました。
これが実現すれば、将来の基礎年金の給付水準が約3割引き上げられる見通しです。
将来世代では、ほぼ全ての人の受け取る年金額が増えるということですが、財源の問題が指摘されています。基礎年金の引き上げによって、将来的には数兆円規模の国庫負担が生じることになるというのです。
年金部会 委員
「将来世代の税負担の増加に繋がる」
「財源の確保の時期があいまいだ」
厚労省は、年末までに議論を取りまとめたい考えです。
在職老齢年金“50万円の壁” 見直しの方向で一致
井上貴博キャスター:
若い世代ほど、年金は当てにならないものとも言われています。25日、3つの議論が行われました。
1つ目は、「基礎年金」について、給付水準を将来、約3割引き上げることです。
2つ目は、「在職老齢年金」です。ここには“50万円の壁”があります。基本的な考え方として、65歳以上の人を対象に賃金と年金で、月50万円を超えた分を半分減額するというものです。
例えば、賃金が40万円で、厚生年金が20万円の場合は、月に60万円ということになります。50万円までは満額を受け取れますが、超えた分は(厚生年金のうち)半分の5万円を減額します。受け取れるのは、60万円から55万円になります。
そのことにより、働き控えになることもありました。この減額対象の高齢者は約50万人で、見直しの方向で一致したということです。
3つ目は、「標準報酬月額の上限」についてです。これは、保険料の計算に必要な基礎金額ですが、現在の上限は65万円で、32の等級に分けられています。
年金の財源を安定させるということで、見直しの方向で一致したそうです。厚労省は、金額については今後も議論するとしています。