ノーベル平和賞の授賞式が日本時間の今夜、行われます。日本被団協を代表し受賞演説を行うのが、92歳の田中煕巳さんです。被爆者の高齢化が進むなか、新しい世代に託したメッセージとは。
【動画】ノーベル平和賞授賞式で世界に発信へ 13歳で奇跡の生還「使命を背負わされた」 92歳の被爆者“20分の演説”が新世代へ伝えること 田中煕巳さん
開催地オスロ入りして3日目。連日分刻みのスケジュールをこなしている日本被団協の代表委員・田中煕巳さん。
日本被団協 田中煕巳 代表委員(92)
「最大限の力を振り絞って、核兵器は人類と共存させてはならない兵器だと若い人たちに伝えていきたい」
このあとの授賞式では受賞者を代表し、演説を行います。その原稿を執筆中だった先月。これまで被団協の活動に奔走し続けたワケを話してくれました。
日本被団協 田中煕巳 代表委員(92)
「結果として、そういうことをやらなくちゃいけない使命を背負わされたのかなと」
田中さんは13歳の頃、長崎で被爆。爆心地から3.2キロ。家は損壊しましたが、ガラス戸が割れずに覆いかぶさり、「奇跡的に無傷」でした。
日本被団協 田中煕巳 代表委員(92)
「『お前はずっとこれからも元気に生きて、こういう状況を話さないといけないんだぞ』と言われたのかもしれない」
実は7年前のきょう、田中さんの姿はオスロにありました。ともに核兵器の廃絶を訴える国際NGO「ICAN」がノーベル平和賞を受賞したためです。
日本被団協 田中煕巳さん(2017年)
「涙が出ちゃったですね。やっぱり来てよかった。みんなの気持ちを背負ってきているなという思いがして、特に亡くなった人たちをすごく思い出しちゃった」
日本被団協は結成68年。多くの先人が核廃絶を訴えてきました。
1982年 国連軍縮特別総会
日本被団協 山口仙二 代表委員(当時)
「ノーモア ヒロシマ! ノーモア ナガサキ! ノーモア ウォー! ノーモア ヒバクシャ!」
“核のタブー”を世界に伝える。日本語の「HIBAKUSHA」は、いまや世界の共通語です。2016年にはアメリカの現職大統領が初めて広島を訪問。核なき世界へ、「一緒に頑張りましょう」と伝えたそうです。
そして世界が再び核の脅威にさらされる今、日本被団協へノーベル平和賞が授与されます。
現在、被爆者の平均年齢は85歳。夕食は自分で作り、スマホやパソコンも操る田中さんも92歳です。
日本被団協 田中煕巳 代表委員(92)
「(5年前に)女房がいなくなってからもう全部、もう5年間かな、全部、晩飯自分で」
田中さんは、被爆者の記憶を新しい世代に引き継いでほしい、そう強く思っています。
「田中煕巳です。92歳、元気なほうですね」
10月、田中さんは高校生たちに被爆の瞬間を語り、「言葉ではなく感性で受け止めて」と訴えました。
日本被団協 田中煕巳 代表委員(92)
「突然ね、身の周りが真っ白になっちゃった。音も何も聞こえないです。本当に真っ白、これは何だと思って。(家の)2階にいましたので厳しいと思って。階段を下りている時に白い光が青になって、黄色になって、橙になって、赤になった。そのあと気を失っちゃった」
そして。
日本被団協 田中煕巳 代表委員(92)
「私たちは伝承者になります。皆さん方は継承者になって、継承をきちっとしていただきたい」
授賞式は、日本時間の今夜9時。田中さんの語る“20分の演説”は世界へと発信されます。