絵巻物や浮世絵などにもあるように、大昔から動物を擬人化し、表現する文化はありました。もちろん、我らが猫も主要なモチーフとして、数々の名作に登場。今回は、もし猫が人間だったら…という想像の世界を、猫の行動や生態に即して紹介します。面白おかしく読んでいただければ幸いです。
1.ドタキャンも平気
猫の代名詞と言えば、「気まぐれ」な性格です。人間と暮らすようになった現在の猫たちは、「子猫」「飼い猫」「親猫」「野生猫」、4つの気分を使い分けていると言われています。
この分類を「猫人間」に当てはめてみると、「ベイビー」「カップル&ファミリー」「パパママ」「ハンター」の4つに分けられます。
猫は通常、4つの気分を瞬時に切り替え、行動しています。超甘えモードから、何の前触れもなく、ハンターモードに「猫変」するのも日常茶飯事です。
「気まぐれ」に見える気分の変化は、実は、単独で狩りする猫の行動スタイルと深く関わっています。
野生の世界では、獲物と遭遇するチャンスはごくわずかです。たとえ出会ったとしても、いつも成功するとは限りません。狩りの失敗が続くと、飢えで苦しみ、最悪の場合、命を落としてしまいます。
数少ないチャンスを活かすためには、どんな状況であっても、獲物を見つけた時点で、すぐに戦闘態勢になる必要があります。モタモタしていたら、せっかくのごちそうに逃げられてしまいます。肝心なのは、切り替えです。
獲物と対峙したら、雑念を排し、狩るために100%集中力を注ぐ。これが、ハンティング時の猫の基本方針です。
この考え方をもとにすれば、「猫人間」がなぜ悪びれずにドタキャンを重ねるのか、何となく理解できるようになります。
大事なデートを直前ですっぽかすのは、「猫人間」の気分がハンターモードに切り替わったからです。断りの連絡を入れながらも、今まさに何らかの獲物(夢や希望、ロマンを追う人も立派な狩人です)と対峙しています。デートどころではありません。
縁あって、「猫人間」と出会い、恋に落ちてしまった人は、何度となくドタキャンされても、おおらかに受け止めてあげましょう。「命がかかっているんだから、しょうがないか…」と。
そうすれば、いつかのデートには、とびっきりの「ベイビー」モードで甘えてくれるかもしれません。
2.自分の気持ちに従う
猫は暗くて狭いところが好きです。野生時代で言えば、岩場の穴ぐらや木の洞などを休息&狩りの拠点として重宝していました。
みなさんの愛猫が家具の下や買い物袋、段ボール箱、脱ぎ捨てたジーンズなどに嬉々として頭を突っ込むのは、その頃の名残です。怖い目に遭ったら、避難場所にも使えます。
もしそんな「猫人間」が会社の同僚にいたら、どうなるでしょうか。
同僚の「猫人間」は、100m走を7秒台で走り、ビルの2~3階までジャンプできまるほどスポーツ万能ですが、デスクワークは苦手です。気まぐれゆえに、長いこと集中力が持ちません。
しかも、居眠り癖もあって、凡ミスを連発。シェパード好きの上司に注意されます。
諸々のストレスのせいで、「猫人間」は、椅子の背もたれに爪を立てた後、持ち前の柔軟性を活かし、デスクワゴンのいちばん下にこもります。
いくら他の同僚が取りなしても、いっこうに出てきません。鈴付きのおもちゃボールを転がしても、反応はゼロです。ちょっと高めのランチに誘ったら、すぐに出てきます。
嫌なことがあって安心できる場所に避難するのも、美味しいゴハンにつられるのも、「猫人間」(猫)からすると、同じリクツです。他人の目を気にせず、その時々の自分の気持ちに従い、思うようにふるまう。それが、猫のマイルールです。
多くの人たちが猫独自の行動原理に憧れてしまうのは、自分にはとても真似できないと痛感しているからでしょう。
3.肉しか食べない
完全肉食動物の猫は、野生時代から、ウサギを筆頭に、ネズミ、鳥、昆虫などを主食としてきました。雑食性の犬や人間と異なり、野菜を摂取しなくても平気です。
猫が摂取すべき栄養素の中で、いちばん重要なのは、タンパク質です。タンパク質は、筋肉や内臓、被毛になるほかにも、エネルギー源としての役割を兼ねています。その必要量は、犬の1.5倍、人間の5~6倍ほどです。
捕らえた獲物を噛まずに丸飲みするのも、猫の特徴です。猫の胃酸は強酸性なので、骨や筋肉も過不足なく消化できるようになっています。
猫ならではの食生活が「猫人間」に置き換わったら、おそらく、まわりの人たちは驚かずにはいられないはずです。
焼き肉屋さんに行けば、ロース、ハラミ、レバー、タンなどを焼かずに丸飲み(人も猫も生肉は厳禁)します。友人たちが熱心に野菜を勧めても一切スルーしますが、道端に生えている草だけは例外らしく、会食後、むしってはムシャムシャ食べます。
ちなみに、「猫人間」同士が集まると、「タウリン、ちゃんと摂れてる?」と確認し合うのがいつものルーティンです。
人間と共生するようになって以降も、猫はいまだに、本質的には完全肉食性を貫いています。途中で雑食派へ転向した犬とは大きな違いです。
その徹底したこだわりの背景には、たとえ飼い猫になっても、失うことのないハンターとしての顔があります。
まとめ
いっしょに暮らしていると、愛猫の姿にふと人間っぽさを感じる瞬間があるかもしれません。今回の記事では、猫が人間としてふるまったら、どうなるのか、架空の話を交えて紹介しました。
人間の視点で猫を改めて見つめ直すと、やはり、猫は猫であって欲しい、というのが正直なところでしょうか。
もし人生の奇妙な巡り合わせで「猫人間」と出会ったら、本文の内容をヒントに、面白おかしく向き合ってみてください。
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