シリアで取材を続ける中で出会ったのは、サイドナヤ刑務所の元収容者。「光がないため何を食べているか見えない」と過酷な実態を証言しました。
生存者が証言 シリア「死の収容所」で一体何が?
私たちの取材に応じたのは、「政治犯」としてサイドナヤ刑務所に収容されていたエリアス・アブドラさん。
元収容者 エリアス・アブドラさん
「サイドナヤの中を歩いていることが信じられない。それも自由に」
アブドラさんは2008年、シリアに入国しようとした際に、アサド政権に反対する人物との関連を一方的に疑われ、3年4か月の間、この刑務所に投獄されていました。
シリアで「死の収容所」とも呼ばれるサイドナヤ刑務所。刑務所の中で、一体何が行われていたのか。
元収容者 エリアス・アブドラさん
「ここが…」
足を止めたのは、自身が投獄されていた場所です。
元収容者 エリアス・アブドラさん
「何もないだろ。寝るときにはこれ(布)を使っていました。ここは寒かった。洋服がない人もいた」
この部屋で、わずかな食料を25人ほどで分け合っていました。
元収容者 エリアス・アブドラさん
「これ(容器)は食べるときに使っていた。看守はカートで食べ物を持ってくる。僕らがこれを渡すと、この中に食べ物を入れた」
「皮膚を焼いた後に、皮を剥がされた」数々の拷問
取材中に出会ったのは、4日前に開放されたばかりだという男性。
アブドラさん「私はここにいたエリアス・アブドラです」
カーリドさん「カーリドです」
アブドラさん「どのぐらいいたのですか?」
カーリドさん「7年です」
2人は、この刑務所で受けた拷問について証言しました。
アブドラさん「看守は水槽の中に頭を入れるように命じました」
カーリドさん「『魚を探せ!』と言って電気を流すんです」
人権団体が集めた証言によると、サイドナヤ刑務所で行われていた拷問はわかっているだけで72種類あったといいます。
報告書
「皮膚を焼いた後に、その皮を剥がされた」
「針やネジなどを鼻や唇・耳・背中・手や足の裏など、いたるところに刺された」
刑務所の地下に広がるのは真っ暗な独房。この部屋で、わずかな光を頼りに過ごしていました。
元収容者 エリアス・アブドラさん
「看守がドアを開く音がしたら、立ち上がってこんな体勢をとらなくてはいけないんだ。目を瞑っていなくてはならず、彼らは入ってくると、何度も殴ってくる。何度も、何度も。それでも、言葉を発してはいけない」
食事のときも…
元収容者 エリアス・アブドラさん
「これが私たちの食べ物です。ここには光がないため、何を食べているのか見えません。食べ物の中に虫がいると、虫も一緒に食べることになります。でも虫を食べていると分かった時は嬉しくなります。唯一のタンパク質だから」
アブドラさんが収容されていた数か月の間に、40人から50人が死んでいったといいます。
元収容者「魂を奪い取ってと祈った」 最上階には“処刑器具”も
刑務所の最上階にあったのは、処刑に使われていたとみられる器具でした。
元収容者 エリアス・アブドラさん
「看守は1週間に2回、朝の礼拝が終わるとやってきて、収容者を連れていった」
国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」は、2011年からの5年間だけで、実に1万3000人が処刑されたと報告。実際の死者はさらに多いとみられています。
元収容者 エリアス・アブドラさん
「魂を奪い取ってくれと神に祈った。これ以上、生きていたくなかった」
シリアでは、各地の刑務所に投獄されていた大勢の行方が、今も分かっていません。
アブドラさんは、「収容者にも家族がいて、帰りを待っている」とし、生きて見つかるよう祈ってます。