「性別は2つ」「パリ協定から離脱」就任式から大統領令“連発”でロケットスタートのトランプ新政権 どうなる今後の日米関係【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2025-01-22 14:59

「性別は男女の2つのみ」「連邦政府職員のリモートワーク禁止」など、大統領令連発でロケットスタートを切ったトランプ新政権。“反発の声”もあがる中、黄金時代の幕開けとなるのでしょうか…。「就任初日は独裁者になる」とも話していたトランプ氏と日本はどのように向き合っていけば良い?

【写真を見る】トランプ氏に見立てた人形に火も…

トランプ新大統領“黄金時代”を宣言 支持者に“ファンサ”も

黄金時代の夜明けとなるのでしょうか。

歴代の大統領や大手IT企業のトップらが集まる中、あの人物が帰ってきました。

トランプ新大統領
「アメリカ国民のみなさん。アメリカの黄金時代がいま始まります」

そして、バイデン氏の目の前で前政権との決別を宣言します。

トランプ新大統領
「シンプルに言えば、アメリカのことを第一に考えるつもりです」
「きょう、国家エネルギー非常事態を宣言します。掘って、掘って、掘りまくれ」

バイデン氏の環境保護政策を否定。多様性重視の政策については…

トランプ新大統領
「人種とジェンダーを社会的に組み入れようとする政府の政策も終わらせます」
「性別は男性と女性の二つだけであることが米国政府の公式方針となります」

その頃、支持者が集まる会場近くでは、セキュリティの観点から会場に持ち込めなかった無数のバッグが捨てられていました。

演説のあと、約2万人の支持者の前に現れたトランプ氏。ここからは、さながら大統領令の“サイン会”に。

司会者
「トランプ大統領が署名する最初の項目は、バイデン時代の78の大統領令や大統領覚書等の撤回です」

トランプ新大統領
「バイデンにこんなことができると思うか。私は思わないね」

司会者
「次の項目は、パリ協定からの離脱です」
「連邦政府職員が直ちにフルタイムの対面勤務に戻る」

次々に大統領令に署名し、観衆からは「そのペンください!」という支持者の“おねだり”に応え、会場を沸かしました。このあとも、署名ラッシュは続きます。

「独裁者ですか?」の問いに「いいや、その逆だ」

4年ぶりに戻った大統領執務室では…

スタッフ
「世界保健機関からの脱退です」

トランプ新大統領
「おー、これは大きいね」

「就任初日は独裁者になる」と話していたトランプ氏。公表されたものだけで、40以上の文書に署名しました。

記者
「就任式初日ですが、あなたは独裁者ですか?」

トランプ新大統領
「いいや、その逆だ」

存在感が際立っていたのが、イーロン・マスク氏。

トランプ新大統領
「米国の宇宙飛行士を火星に送り、火星に星条旗を掲げる使命を追求を追求するのだ」

演説で火星探査について触れられると、マスク氏は大喜び。トランプ氏の支持者の前でも…

実業家 イーロン・マスク氏
「他の星に最初の旗を立てるのが、またアメリカの宇宙飛行士だったら、凄くないか」
「お前ら最高だ」
「死ぬ気で働くよ」

最後に開かれた舞踏会で、トランプ氏はメラニア夫人とダンスを披露。トランプ大統領就任を祝う、長い一日が終わりました。

ロケットスタートを切ったトランプ新政権。しかし、急激な変化は混乱をうみそうです。

「性別は男女の二つ」発言にLGBTは反発 

LGBTに優しい都市とも言われるロサンゼルスでは、トランプ氏の「性別は男女の二つしかない」との発言に反発の声が上がりました。

デモ参加者
「私はLGBTなのでトランスジェンダーの人々に対する攻撃を恐れている。だからこそ声をあげ、戦わなければなりません」

メキシコのアメリカ大使館前では、トランプ氏に見立てた人形がしばかれ、火をつけられていました。トランプ氏が不法移民対策として南部の国境に軍隊を派遣することや、メキシコ湾を「アメリカ湾」に改称することなどに反対しています。

反トランプ活動家
「我々はトランプが国境を軍事化することは許さない。私たちの湾の名前を変えることはできない」

トランプ大統領再び就任 大統領令連発は“独裁”に?

23ジャーナリスト 宮本晴代 氏:
21日、トランプ氏が次々に大統領令にサインしました。その一部、例えば▼性別は「男性と女性」のみ、▼連邦政府職員はリモートワーク禁止、気候変動に関する▼パリ協定からの離脱、こういうものに次々と署名をしました。

藤森翔平キャスター:
アメリカは、地球温暖化対策の国際的な枠組みからも離れるということですね。

23ジャーナリスト 宮本 氏:
実は、アメリカは過去に1回パリ協定から離脱したことがあります。それは前回のトランプ政権のときでした。ただ、気候変動はより深刻になってきています。先日はロサンゼルスで大きな山火事がありました。これから温暖化がひどくなるのに大丈夫?というところです。

小川彩佳キャスター:
パリ協定離脱も含め、就任直後に大統領令を連発しています。この動きをどう見ていますか。

プチ鹿島さん:
恩赦はちょっとありえないと思っていて、それこそ司法に対する怨念と復讐が始まったのかなと思っています。

なぜ僕が覚えているかと言ったら、1年前に宮本さんが「もし今年、トランプさんが大統領になったら2期目は大統領権限を強化する」と、おっしゃっていました。やっぱりその通りになってきていますが、このような“独裁”を進めていくのでしょうか。

23ジャーナリスト 宮本氏:
トランプ氏は、「独裁者に憧れがある」とよく言われています。
ただ、邪魔になっているのが三権分立です。そのうち議会は、トランプ氏の共和党が多数を握っていますけれども、2年後には中間選挙が控えています。ここで共和党が少数派に転落してしまうとやりたいことがやれないから、この2年間でやりたいことをやるのではないかと思っています。

今回の就任式を見てて非常に強く感じたのが、「王朝の交代」です。トランプ氏は、前回大統領を退いた後に刑事訴追をされていて、いわば王座を明け渡した瞬間に迫害されたという被害者意識を強く持っています。

バイデン氏も同じことを恐れていて、退任したら自分や家族が逮捕されるようなことがないように、実は就任式の数時間前に自分の家族を“予防的”な恩赦をしました。これは王朝の交代みたいなもので、私たちの知っている民主主義の手本という国ではなくなってきたんだなと強く感じました。

小説家 真山仁さん:
もうそろそろアメリカを手本にする時代は終わったということでしょうね。

「史上最大の強制送還作戦」標的の街は

藤森キャスター:
不法移民に関して、トランプ氏は大統領令で不法移民についてメキシコ国境に「非常事態」を宣言し、「史上最大の強制送還作戦」だと挙げました。標的になると名前が挙がった街がシカゴです。シカゴは全米で3番目に人口が多い大都市です。

ニューヨーク支局 大橋純 記者:
シカゴでは、まだ調整総会を巡る動きは始まっていません。この辺りは、メキシコからの移民が多いエリアで、「リトルメキシコ」と呼ばれています。メキシコのレストランや両替所、スーパーなどが立ち並んでいます。

トランプ新政権は早ければ21日にも強制送還をスタートさせる方針です。まずは「犯罪歴のある不法移民が強制送還になる」という見通しを示すアメリカメディアもありますが、実は具体的なことはほとんどわかっていません。

近くのメキシコ料理店で話を聞いたところ、「“仕事に行くと捕まってしまう”という噂が広まり、出勤を控えている移民もいる」そうです。

周辺の工場や飲食店は移民の労働力で支えられていることから、こうした混乱が続けば街全体に大きな影響が広がることは確実です。

今後の日米関係は“さよならアメリカ”?

真山さん:
日本とアメリカの関係を見ていると、これは明日は我が身になるかもしれない。

日本でそこまでの介入はできませんが、日米関係が昔のままうまくいくとはとても思えない。例えば日本製鉄とUSスチールのような問題や米軍撤退などを言いかねない。我々はこの4年間、どうやって日本が新たなページをめくるということを考えないと、とんでもないことがおきそう。

23ジャーナリスト 宮本 氏:
アメリカが私たちが知っている、かつての“頼れる兄貴”という国ではなくなったってことですよね。

日本政府の関係者に今後どうしていくかを聞くと、「アメリカへの心理的な依存を減らしていかなければいけない。ある種“さよならアメリカ”だ」と。他の国とうまく手を組みつつ、トランプ氏の機嫌を決定的に損ねないように、したたかにやっていくしかないんだという認識でした。

プチ鹿島さん:
石破さんの今までのキャラクターを考えると、空気の読めなさが売りの一つだから、日米地位協定改定など社交とか抜きでやってもいいかなと思う。

小川キャスター:
相当戦略的な高度な向き合いが必要になってくる気がしますね。

真山さん:
真っ向から向き合うと「お前いらない」と言われかねない。大事なのは、ずっとアメリカには「愛している」と言い続けなければいけない。この愛は終わっているので、例えばアジアにもう少し重きを置くとか、次を生きようかっていうことを考えなければならない。それがバレた瞬間にひどい目に遭うだろうから、ここが日本の正念場ですね。

藤森キャスター:
面従腹背的な動きはアメリカ国内でも近いようなことが起こっています。

就任式にはGAFAのトップが皆参加しました。前回のトランプ政権時には距離をとっていたにも関わらず、就任式の当日に350億円以上の寄付が集まったそうです。

プチ鹿島さん:
アメリカのメディアも気になっていて、トランプ大統領に取り入ろうとするIT企業への批判を描いた風刺画が「ワシントン・ポスト」では掲載されなかった。こういったものがアメリカらしさだと思いますが、これすらも許されなくなってくる。日本もですが、メディアもちゃんと報道できるのか、チェックできるのかということは気になります。

真山さん:
とりあえずはしっぽを振っておこうと。やれるところまでやるけど、逃げる準備と攻撃する準備はしておこうと考えているはず。最初から敵対したら潰されますから。その辺りはアメリカは必ずビジネスを背景に動く。逆にお手並み拝見、日本もそれを真似すればいいのかもしれない。

小川キャスター:
いずれにしても新しくて難しい未知の時代に突入していくということを、私たちは識しなければならないということです。

アメリカの大統領令について「みんなの声」は

NEWS DIGアプリでは『アメリカの大統領令』について「みんなの声」を募集しました。

Q.トランプ氏の大統領令や政策 最も関心があるテーマは?

「パリ協定離脱」29.8%
「WHO離脱」15.2%
「不法移民対策」9%
「関税対策」26.8%
「軍事力強化」5%
「領土拡大」10.3%
「その他・わからない」…3.8%

※1月21日午後11時11分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません

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<プロフィール>

宮本晴代 記者
元NY支局記者
2016年、2020年の米大統領選を取材

プチ鹿島さん
2024年11月の米大統領選を現地で取材
時事ネタを得意とする芸風

真山仁さん
小説家 「ハゲタカ」「ロッキード」など
最新著書に「疑う力」

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