2025年日本経済の課題と展望 人手不足による倒産と物価高は解消されるのか【Bizスクエア】

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2025-01-23 06:00
2025年日本経済の課題と展望 人手不足による倒産と物価高は解消されるのか【Bizスクエア】

今、日本経済で深刻な問題となっている人手不足による倒産と物価高は解消されるのか。

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景気悪くないのに倒産増加 2025年日本経済 課題と展望

建設業界の深刻な人手不足を解消するため、2019年から人材マッチングサービスを展開する「助太刀」。

登録事業者数21万人のなかで、新しい取引先を見つけたい職人と、職人を集めたい工事会社をケータイアプリ上でマッチング。建設業界の救世主として注目されている。

コロナ禍が明けて、建設需要が回復した2023年頃からは職人不足に悩む工事会社の登録が急増したという。取引先から寄せられる声からは、厳しい現実が浮かび上がる。「人手不足で案件の取りこぼしがある」「ツテ中心の人探しではうまくいかず、仕事はあるのに受けられない…」

帝国データバンクによると、2024年の「人手不足倒産」は342件。2年連続で、過去最多だ。なかでも、建設業と物流の倒産が全体の半数近くに及ぶ。助太刀の北川CFOは倒産増加の背景に人件費や資材の上昇分を価格転嫁できない多くの中小・零細企業の存在を指摘する。

助太刀 取締役CFO 北川憲二郎氏:
世の中的には建設業界の職人さんの給料、労務費(人件費)は上がっているといわれているが、(助太刀に登録している)約7割の方の収入は変わっていない。そして25%の方はむしろ減ってしまった。どうしてもプロジェクトが始まって完工まで3年ぐらいかかる。この間に労務費(人件費)も建材費も上がり、発注者がそれを吸収できないと、どんどん下請けにしわ寄せがきてしまう。そういう意味では実際に(価格)転嫁できる業界や発注者に人が集まる。業種間の競争=人材の取り合いが(労務費の)単価の差でシビアに出てくるところが顕在化している。

人件費の上昇分を価格転嫁できる企業だけが生き残れる状況が進んでいる。そして物価高は2025年も続きそうだ。企業間で取引されるモノの価格を示す企業物価指数は2024年12月、対前年比で3.8%上昇し、4か月続けて過去最高となった。さらに追い打ちをかけそうな事態も…

このガソリンスタンドでは、1リットル175円で売っていたレギュラーガソリンを、今週180円に値上げした。給油客は「きのう来ればちょっと安かった。失敗した。忘れていた」「もう自転車に変えます。これじゃやっていけない」と話した。

政府は1月16日、ガソリンの補助金を1リットル当たり5円縮小した。今後、平均価格は185円程度と過去最高の水準に迫る見通しだ。宅配便などの運送費やハウス栽培の野菜など様々なモノの値段が上がる可能性がある。

物価上昇率2%を大きく超える状況が続くなか、日銀の次なる利上げの有無に関心が高まっている。

次の利上げのタイミングは!?

日本銀行 植田和男総裁:
次の利上げの判断に至るには、もうワンノッチ(1段階)欲しい。

2024年12月、日銀の植田総裁は利上げを見送った理由として「賃上げの勢い(モメンタム)」とトランプ次期政権の「不確実性」を挙げていた。1月14日、日銀の氷見野副総裁の会見が行われた。決定会合の1週間前というタイミングでの発言に市場の注目が集まった。

日本銀行 氷見野副総裁:
(賃上げの勢いについて)12月の時点で得られた情報に比べれば、前向き度が同じか強いくらいのものが多かった。

そして日銀が懸念するトランプ次期政権の「不確実性」については…

日本銀行 氷見野副総裁:
トランプ氏の(就任)演説を見て、(会合)2日目の朝出るCPI(消費者物価指数)を見てしっかり判断していきたいと考えている。

日銀「利上げ議論し判断」円安に歯止めかかるか?

日銀の植田総裁は1月15日、次週の金融政策決定会合で利上げを行うか議論し、判断したいと述べた。その前の日には氷見野副総裁が「トランプ氏の政策については就任演説で方向性は示されるだろう」と述べた。

――利上げはどうなるか?

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
1月は利上げすると思う。逆にやらなかったら、いつやるのという感じの情報発信の仕方だ。ここ数か月を見ると日銀は、急に強気になったり、弱気になったりを繰り返している。市場からすると「どうしてくれるの」という感じがすごくする。

――12月に利上げせずに、1月にする理由は?

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:

いくつか解釈があるが、去年利上げしたときに8月に株が暴落したことがトラウマなっている。自分たちが動いて市場が反応したらどうしようとなっていたのではないか。そういう意味ではみんなが「どうぞやりなさい」という雰囲気が出るまで待ちたいという防衛本能で、政治的にプレッシャーがかかると引くということが繰り返されたのではないか。

日銀が利上げに踏み切るだろうということで為替相場が大きく動いている。1ドル=158円前後だったが一時155円台まで円高に振れた。ただ12月は利上げをするのではと、140円台に入ったこともあった。それで結局利上げしないということになり、その間に158円まで円安が進んでしまった。

――結果的に、日銀が動かなかったことが円安を助長・誘導したと言えるか。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:

本当はもっと進んでいたかもしれない。というのは、この過程でユーロが撃沈し始めたので円安の部分をユーロ安の部分で吸収してくれたので160円に行かなかった感じになっていたと思うが、12月はドタバタで為替を円安に振ってしまったのは、日銀がやったことではないかと思う。

――日本の今の政策で見た場合に、円安を容認したり、あるいは誘導・助長してしまうということは絶対やってはいけない政策ではないか。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
そう思う。円高か円安かどちらがいいみたいな議論を延々やっているが、一つ言えることは過度に動かすことは良くないと思う。過度にどっち側に動きやすいかというと、明らかに円安の方なので、日銀自体が円安のバイアスを急激に出すということは絶対得策ではないと思う。

2025年日本経済の見通し カギは「投資」と「消費」

日本経済の2025年の課題をフリップにまとめてもらった。「『トランプ2.0』『中国低迷』で輸出は期待できず」「消費は国内消費が伸びるか」そして「企業利益に見合う設備投資ができるか」。

――海外経済は不透明要因が多い。今年は国内で頑張らないとということか。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
端的に言うと、トランプ氏がどうなるかわからない。人のことではなくて、自分の中の消費と投資で頑張りましょうというのが、今年のテーマ。

GDPの半分以上が個人消費。ところが消費は低迷している。2024年11月の家計調査を見ると、2人以上の世帯が消費に使った金額が、実質で0.4%減少した。マイナスは4か月連続で続いている。

――マクロの統計を見ると、富裕層の消費が活発ということもあり悪くないが、ミクロで見ると、消費支出はほとんど2年間ずっとマイナス。

名目賃金は上がっているが、物価が高いので実質賃金がマイナスのまま。2024年のニッセイ基礎研究所の予想では、2024年の最終期10-12月期はプラスに転じると予想されていたが、マイナスのままだった。予測では2025年夏、7-9期ぐらいになればプラスになるだろうとしている。

――予想より、3四半期後ずれているということか。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
予想が外れている理由はすごく単純で、名目賃金の伸びは予想通りか予想より上回っていたが、それ以上に物価の上昇が止まらないことをなんとか抑えないと消費が弱いままだ。消費の中で起こり始めていることは、過去もずっと実質賃金がマイナスなので、消費が弱くなって、消費の中身が変わってきている。必需品をものすごい削り始めている。今、防衛という意味で正念場になっている。

――実質賃金がプラスにならないと消費が伸びない。消費が伸びなければ景気も良くならない。景気が良くならなければ物価上昇率2%目標も達成できない。だからこそ円安を修正しなければいけない。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
いま物価が上昇しているが、寄与度で見てみると、輸入から来るものが圧倒的に多くて、その部分をある程度抑えないと、物価自体が収まらない。為替の部分を何とかしなければならないという声が大きくなってきたのは事実だ。

――もう一つのポイント、設備投資は比較的堅調だという声も聞かれるが、どうか。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
2つ事実があって、1つは「名目」で見るとすごく伸びている。「設備投資」はこれからもガンガン伸びるのではないかという予測が立つ一方で、「実質」は設備投資の数がどれくらい出ているのか見ると、予測のところで、落ち始めている。

――機械の代金や、建設費・作業費などが高騰しているから、「名目」ベースも高騰しているということか。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:

そうだ。ただ「実質」のところが落ちている理由が、今いろんなものが高いし、人手不足なので、計画を少し先送りしているだけだったらよいが、一部では「収益に見合わないのでやめる」というのも少しずつ出ていることは事実。設備投資の中で、強い部分と弱い部分が両方出ていると思う。

――いろんな現場で人手不足があって、発注しても設備がなかなかできないという事実もある。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
ここ20年、30年と日本は、供給制約に対して対応をしてこなかった。景気が良くなってきたときにその問題に直面し始めて、日本の成長のネックになり始めている。運送などいろんな業界で出始めている。

――設備投資が本当に伸びていくためには、なぜ「実質」で伸びてないのかという原因を因数分解して、きめ細かい対応をとっていくべきか。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
2つ重要で、ひとつは企業の方が設備投資をするということは10年、20年のお金を使う。将来的な拡大傾向という期待が大きくなっていないといけないので、国の政策が非常に重要だと思う。もう一つはその供給制約や人手不足に対して何ができるかというところを、業界とか個社でどう頑張れるかというところ。この2つの問題が起きている。

そういう中で、2025年の日本経済の成長率をどう見るか、ニッセイ基礎研究所の予測を出してもらった。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
日本の潜在成長率が0.7%ぐらいなので2025年~26年はそこを上回る成長を一応予想はしている。これがメインシナリオだが、今起こっている話は、そのメインシナリオの確率が非常に下がっている。

――2024年はほとんどゼロ成長だったが、成長を実現するためには「消費」と「設備」が伸びないといけないのか。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:

そういうことだ。

(BS-TBS『Bizスクエア』 1月18日放送より)

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