公明は与党内議論を「見える化」し、もっと有権者に伝えていく…国民民主「手取り増やす」には“やられたな”と【国会トークフロントライン】

年度末が迫り、予算案の審議は最終局面を迎えています。ただ、企業・団体献金の規制をめぐっては与党の自民・公明がそれぞれ別の案をまとめるなど、いまだ先が見えない状況です。少数与党となった今、どのように政策を議論して行けば良いのか。ビジネスマン出身、元ゴールドマン・サックスのマネージングディレクターでトランプ氏にも会ったという公明党・岡本三成政調会長に聞きました。(聞き手:川戸恵子 収録:3月26日)
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経営者・トランプ氏は「人の話を遮らず、よく聞く方」だった…トランプ政権の今は“アメリカ以外との関係強化するチャンス”
――岡本さんはゴールドマン・サックス所属のころにトランプさんにも会ったとか。トランプさんになってから日本も大変ですが。
岡本三成 公明党 政調会長:
私が勤めていた会社が、トランプ氏がやっていた不動産会社のアドバイザーの1社をやっていて。私は30代でまだジュニアだったんですが、シニアの担当者から提案をするような会議に連れて行っていただいたことが何回かあって。そのときにお目にかかって、プレゼンをやらせていただいたこともあります。
もう2期目の大統領ですから皆さんよくご存知な中で、ちょっとイメージとは違うところを申し上げると、人の話はよく聞かれます。向こうはオーナー経営者ですから、提案の内容の途中で止めたり、質問したり、反論したりがあるんですけれども。私、プレジデントトランプ…社長としてのプレジデントトランプがですね、話の途中で相手の話を遮った記憶がないんですね。最後までよく聞かれた後に質問されるので、人の話をずっと聞かれる方だな、と。ちょっと今のイメージとは違うかもしれませんよね。
トランプ大統領という個人がどうというよりは…アメリカ合衆国という国が日本にとっては唯一の同盟国であって、経済上も安全保障上も最も大切な国であることは間違いなくて。その同盟国の国民の方が直接、選挙で選んだのが大統領なので。プレジデントをリスペクトするというよりは、同盟国のアメリカ国民が選ばれた大統領なので常にリスペクトして対峙していくことが大事だと思ってるんですね。
ただ、同盟国とのみ私達は仕事をしているわけではなくて、同じような志の同志国の皆さんとかもあるので、日米同盟をもとにやることはやりながら。なのである意味、トランプ大統領の下でのアメリカとも向き合いますが、それ以外の国との関係をよりよく強固にするチャンスなんじゃないかなと思っています。トランプ大統領の後の大統領はもっとユニークな大統領の可能性だってあるわけですから。相手がどういう方であっても、ちゃんと日米関係も強くし、その他の国とも今まで以上の外交的な関係を作り上げるのがすごく大事だと思います。
企業・団体献金規制で自公の案割れる 立憲・維新らは“原則禁止”案だが…「例外が柔軟、規制でも何でもない」
――政治資金、企業団体献金をめぐり3案がまとめられています。自民は企業団体献金OKで透明性を高める。立憲など5党派は原則禁止。公明党は国民民主党との共同案を。
岡本三成 公明党 政調会長:
企業団体献金をどのように規制していくかという法律案で、3月末までに一定の正論を得るというふうになってるんですけれども。自民党案と、野党案と一番最後、公明と国民民主が共同で作っている素案がありまして。どこかがどこかと合意しなければ過半数を取れないんですね。何も決まらないってことになっちゃうので。0か100かで100点満点になった方がいいですけれども、私はそれが80点でも90点でも、今よりも前進するんだったら絶対やった方がいいというふうに思っています。
その上で自民党案は、今までよりも若干厳しくしますと。5党派の案は、野党の方の日本語の使い方が「奇跡的に上手」で。「原則禁止」ではなくて「政治団体というものを作れば皆さんできます」という。これは規制でも何でもありません。皆さんできます。会社や業界で政治団体って、総務省ですぐ作れます。労働組合でも作れます。そこを通せばいくらだってできますという案で、規制なんか全くしてないんですね。「例外は認める」って…その例外がものすごく柔軟な例外ですから。
3月末までに方向性を決めてやっていくという約束ですので。国民の皆さんよくご覧になってらっしゃいますから、誰がどういうふうな発言をして行動したかをご覧になってますので、なるべくこの議論も公にしながら。公にすればするほどですね、つっぱれない方々が出てくるんですよ。それで正しい形にリードしていきたいと思います。
「手取りを増やす」は究極の表現、「率直に『やられたな』と思った」 公明党も政策として前に進めてきたが、有権者に伝えていけず…
――そういう意味で有権者に理解してもらうには、国民民主党の玉木さんの「手取りを増やす」なんてのも。
岡本三成 公明党 政調会長:
国民民主党が去年「手取りを増やす」というロゴ、スローガンを掲げられたときに、私は率直に「やられたな」と思ったんですね。というのは公明党の様々な政策の中で、手取りを増やすための政策、手段、法律でもいっぱい議論してやってきたところもあるんですけれども。どう伝えるかっていうことにおいて「手取りを増やす」という、あのシンプルで、贅肉のない、究極の表現を思いついたところが、奇跡的な発見だったんじゃないかなというふうに思っていて。
手段に関して言うとですね、103万円の壁のみならず、私達はもっといっぱいやってます。はっきり言って、国民民主党と比べても、私達がやってきたことの方が自信を持って語れるものも多いし、個数も多いと思ってるんですが。やっぱり政治家ってどうお伝えするかということも。それは国民の皆さんにご理解いただかなければいけませんから、その意味で、そこで私は大きな気づきをいただきまして。やってることをただ自分の中で前に進めるだけではなくて、どう伝えるか、どうちゃんとお見せできるかもやっていること以上に大切に思いながらやっていくことがすごく重要だなと思っています。
なので最近、今日も呼んでいただいてありがたいんですが、機会を捉えて発信しようとしてるんですね。どんなにいいことをしていても、こっちがお伝えする努力をしなければ、わかってくださらない。国民、有権者の皆さんが悪いとかじゃなくて、お伝えする努力が私達に足らなかったってことを反省すべきだと思って今やっています。
衆院選の敗北以降、自民に「物申す」公明党 党独自の活動を“見える化”している
――自公連立から26年、悪い言い方では「下駄の雪」とも言われた公明党ですが、去年の衆院選で大きく負けて以降、ずいぶんいろんなことを言うようになったと思っています。
岡本三成 公明党 政調会長:
去年の衆院選は大変厳しい結果で、それ以降大きく何か戦略を変えたということではないんですけれども…やはり全ての選挙の結果というのは自分たちに原因があると受けとめるべきだというふうにみんな思っています。
なので、確かに自民党のいろんな不適切なことがあって、その逆もあったと思いますが、それはそれとして私達がもっと有権者の皆さんに訴えて、ご理解いただいて、評価をいただけるように、独自の活動をもっとしていくべきなんじゃないかというふうに思っていまして。
なので、自民党に今まで以上に何か強く言っているということよりは、今までも言ってきたのを「見える化」しているんだと思うんですね。今まではいろんなメディアがいないところでお伝えするのが慎ましやかだし、連立与党としての矜持でないかと思っていたところもあるかもしれません。
――自民・公明は今、少数与党で苦労されていますが。
岡本三成 公明党 政調会長:
私はすごくポジティブで、国会で議席をお預かりして13年になりますけれども、「もっと前からやっとけばよかった」と思いました。今、現実には与党だけでもものが決まらないし、けれども実際昨年の衆議院の結果は自民党が第一党ですから。立憲ではありませんので。何を国民の皆さんは意思表示されたかというと、今まで通り与党でたたき台を作ったりリードはしていきなさいと。ただそれだけではものは決まらないので、広く野党の皆さんにもご意見を伺いながら、より良いものにできるんだったらそれをどんどん取り入れていきなさいと。
なので、それが高額療養費であっても、教育の無償化であっても、103万円の壁の修正であってもやってきました。かなり時間はかかりますけれども、政策は実は結構ご評価いただいてると思ってまして。103万円は160万円にみんな上がってますから。いずれ178万円にも上がるように、物価が上がればこれも上がっていくような仕組みを作るということを法律で決めましたので。
有権者の方は本当に冷静で中身をよくご覧になってらっしゃるんですよ。高額療養費も紆余曲折ありましたけれども、やっぱり凍結したことを評価されています。そのプロセスはもしかしたら不十分だったかもしれませんけれども。やっぱり、時間がかかっても、またはいろんな方とやる中で議論が右行ったり左行ったりってすることがあっても、結果的に国民の皆さんが期待されている近いところにしっかりとまとめていくということが大切だし、ご評価されてると思ってるので。多分何年か前の政調会長に比べると、政調会長として使ってる時間ってものすごく多いんだと思うんですが、ただこれが期待されてるんだ、と思って今やっています。