80年海底に眠っていた飛行機を発見! 小関裕太が飛行機の謎に迫る 最新技術で明かされた“悲劇”とは【戦後80年】

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2025-08-15 12:00
80年海底に眠っていた飛行機を発見! 小関裕太が飛行機の謎に迫る 最新技術で明かされた“悲劇”とは【戦後80年】

TBS戦後80年特別番組『なぜ君は戦争に?綾瀬はるか×news23』の取材班は、鹿児島湾で深さ70メートルの海底に沈む飛行機を発見。
最新技術で機体を3D化すると、ある“悲劇”が明らかに…俳優・小関裕太さんが鹿児島で飛行機の謎を解き明かします。

【写真を見る】海に眠る筒状の物体には操縦桿のようなものが

「終戦の日」に落ちた飛行機を追え…最新技術で3D化

ことし7月、俳優・小関裕太さんが訪れたのは、鹿児島市の南部・喜入前之浜町。

小関さん
「とても静かな集落にやってきました。ここの沖に飛行機が不時着したそうです」

小関さんがここを訪れた理由は、ある『飛行機』の謎に迫るためです。取材班は、前之浜に住む住民の1人から、核心に迫る証言を得ていました。

ーー終戦の日に飛行機が不時着したと聞いたことがある?

前之浜の住民

「親父から聞いた話ではね、飛行機が落ちて親父が船から助けに行ってね、一人助けたっていう話は聞いたけどね」

真相を解き明かすため、取材班は海洋調査会社「ウインディー ネットワーク」の協力で海底に音波を出して届く時間の差から海底の凹凸を記録しました。

すると…

ウインディーネットワーク 杉本裕介さん
「羽根のように見えますね」

水深70メートルの海底に水中ドローンが向かうと…。

ウインディーネットワーク 杉本裕介さん
「あった!」「当たりかもしれない」 

現れたのは…筒状の物体。コックピットとみられる場所には、操縦桿でしょうか。さらに「翼」らしきものも。

ウインディーネットワーク 杉本裕介さん
「間違いない」「見た感じ飛行機だと思います。機種までは分からないです」

暗い海の底でつかめなかった全体像を明らかにするため、鹿児島水産高校の協力も得てあらゆる方向から機体を撮影しました。そして、7868枚の写真を組み合わせて3Dモデルを作りました。

明らかになった“正体” 悲劇の飛行機の搭乗員は

この飛行機は、いったい何なのか…専門家に見てもらうと。

南九州文化研究所・稲田哲也さん
「前の方から1、2、3と区画がありますね」「3人分ありますね」「3人乗りであると」「零式水偵という機体に似ているな」

この機体は『零式水偵』=『零式水上偵察機』と呼ばれる飛行機だったのです。
『零式水偵』の主な任務は「偵察」。滑走路で使う車輪の代わりに、大きなフロートを備えた水上飛行機です。

しかし…見つかった機体にはフロートがありません。また、敵の機関銃に撃たれたような穴もあります。
専門家は、この機体が敵に攻撃されて不時着し、衝撃でフロートが折れて失われたのではないかと指摘します。

取材班が更に調べを進めると、この状況とピッタリ一致する戦闘記録が残されていました。

機体の発見場所から10キロ南の鹿児島県指宿市。
記録には、そこにあった水上飛行機の基地に向かう途中、零式水偵が敵の戦闘機と交戦し不時着、2人が戦死したと記されていたのです。海に眠る零式水偵は、この時の機体だった可能性があります。

小関さん
「あの方かな」

小関さんが訪ねたのは、戦死した搭乗員の遺族・梶原五昭(かじはらいつあき)さん。五昭さんとともに、旧海軍の航空基地の跡地にある慰霊碑を見ると…

梶原五昭さん
「私のおじです」

小関さん
「本当だ。梶原龍三(かじはらたつみつ)さんって書いてあります」

梶原龍三さん。五昭さんの父の弟にあたります。
龍三さんは鹿児島の離島・甑島で生まれました。甑島は大きな産業がない漁業の島。

龍三さんは6人兄弟の3男、やんちゃ坊主で知られていました。
父親は大けがをして働けず、一家は、物乞い同然の日々を強いられたこともあったそうです。

梶原五昭さん
「食うや食わずの生活で虐げられて『俺はこんな生活は嫌だ』と。小学校を卒業したら海軍に志願して出て行った」

小関さん
「海軍に入るとお金がもらえるものだったんですか」

梶原五昭さん
「というより食いぶちを少なくできる」

「利用されている」貧しかった少年を“英雄”扱いで戦意高揚

自分がいなくなれば、その分家族の生活費が浮く。龍三少年は、海軍通信学校に入り、飛行機の偵察員になります。そして…

1942年1月、フィリピン。
日本軍が勢いに乗る中で、龍三さんは、大きな功績を挙げます。
敵6機を相手に水上偵察機で空中戦を繰り広げ1機を撃墜。

搭乗員2人が戦死しますが、3列目にいた龍三さんが前の席に身を乗り出し、操縦桿を握って着水させ生還したのです。

顔に大やけどを負った龍三さんですが、この勇敢な戦いが称えられ『故郷に報告してこい』と、凱旋するよう命じられました。

「貧しかった少年が“英雄”として帰って来た」と、今も語り継がれています。

甑島の住民
「その時代では特別ですよ。僕なんかは完全にあこがれていた」
「海岸にいっぱい人が出ていた。みんな興奮していた」

島の図書館に、凱旋の記録が残っていました。そこにはこんな記述が。

「区民も好意と好奇の目で歓迎し、特に戦時中の戦意高揚と少国民の憧れの的となることであった」

小関さん
「戦意高揚というワード、この文字、どう思われます」

梶原五昭さん
「なんか複雑ですよね、利用されている。負け戦ではないよ、打ち勝つんだと鼓舞したいような状態で凱旋も計画されたんじゃないかな」

戦況の悪化に伴い、甑島は繰り返し、アメリカ軍の戦闘機の空襲を受けるようになっていきます。

島の暮らしはさらに貧しく、苦しくなっていきます。

そんな島の人たちに「戦争を続ける気力」を持ち続けさせるために龍三さんは、利用されたと、五昭さんは感じています。

小関さん
「龍三さんは、英雄だと思われますか」

梶原五昭さん
「ではないと思います。成り行きで軍のシナリオで仕立て上げられたもの」

遅い飛行機まで特攻に・・・ 零式水偵がたどった悲劇

凱旋を終えた龍三さん、そして零式水偵には、ともに悲劇的な運命が待っていました。

アメリカ軍機に取り付けられたカメラには零式水偵が攻撃され、機関銃の弾が命中する映像が。

零式水偵は大きなフロートがあるためスピードが遅く、敵の戦闘機に見つかるとすぐに撃ち落とされてしまうのです。

アメリカ軍の報告書にも、こんな記述が…

「零式水偵は遅かった」

この足の遅い零式水偵を軍は無謀な作戦に投入していきます。

小関さん
「こんにちは」

小関さんは、その様子を見ていた人を訪ねました。
指宿基地の近くで育った大吉通子さん、95歳。

大吉さんは、ある日、知り合いの女性からこんな話を聞きました。

大吉通子さん
「若い男の子が『僕は明日向こうに飛んでいくんだよ』、『爆弾を積んでいったんだよ』とかね」
「飛行機の音がし出したら外に出て、ハンカチを振って見えなくなるまで一生懸命振った」

何と軍は、偵察が任務だった水上偵察機を特攻に使いはじめたのです。戦況の悪化で、特攻に使える飛行機が足りない状況でした。

大吉通子さん
「まだ10代のはず、かわいそうにってね。特攻という飛行機があるんだっていうのを実感として知りましたよ」

戦うはずのない飛行機が無謀な作戦に 23歳の“英雄”の最期

そして、龍三さんにも運命の日が訪れます。

1945年4月7日。
それは、あの「戦艦・大和」が敵の集中砲火を浴びて沈没した日。大和は乗組員たちの死を前提にした特攻作戦に出たのです。

記録によるとこの大和を掩護するため、龍三さんが乗った零式水偵は飛び立ちました。

スピードの遅い零式水偵で敵の攻撃が集中する戦艦大和の特攻を掩護するという、あまりにも無謀な作戦でした。

零式水偵は、鹿児島湾上空でアメリカ軍の戦闘機の攻撃を受け不時着、龍三さんは戦死しました。まだ23歳でした。

あのとき、英雄として凱旋した龍三さん。
飛行機で島を去るときの様子が、語り継がれています。

梶原五昭さん
「島の上を通るときに翼をゆすって行ったという。さよならの合図だったんだなと」

小関さん
「五昭さんに見てほしい映像があって。龍三さんが乗ってらっしゃった零式水偵かもしれない」

小関さんは、五昭さんに、鹿児島湾に沈む零式水偵の映像を見てもらいました。
そして、思いを尋ねると…

梶原五昭さん 
「すごいよな、本当に…なんか帰ってきて欲しいな。静かに置いておくのもいいか」

(2025年8月14日放送 戦後80年特別番組『なぜ君は戦争に?綾瀬はるか×news23』)

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