難病の子らに届ける“生の歌声”…元タカラジェンヌが奮闘「子どもの心に笑顔を」 入退院繰り返す17歳も舞台に…師弟で挑んだ“命のダンス”【news23】

ミュージカルのプロの俳優たちが、劇場に足を運べない難病の子や障がい児、その家族らに公演を行う活動を続けています。発起人の一人は宝塚歌劇団で活躍した“元タカラジェンヌ”。「子どもの心に笑顔を届けたい」と奮闘する姿を追いました。
【画像を見る】舞台に立ち自らが考えた踊りを披露する、入退院を繰り返す17歳
経済的余裕なくとも…難病の子らに“生のパフォーマンス”を届けたい!
横浜市内の特別支援学校では2025年6月、児童・生徒が待ちに待ったイベントが開かれました。
「風のとおり道」や「サークル・オブ・ライフ」などの歌やダンスを披露するのはプロの俳優たち。難病や障害のある子らに向けて公演を行う団体「心魂(こころだま)プロジェクト」です。
発起人の一人が、有永美奈子さん(47)です。
心魂プロジェクト共同代表 有永美奈子さん
「心の笑顔を届けていけるような活動を続けていけたらと思っています」
実は有永さんは“元タカラジェンヌ”。16歳で宝塚音楽学校に入学し、宝塚歌劇団の花組で8年間、男役を務めました。
有永さんについて、同期の元花組トップスターで俳優の蘭寿とむさんは...
元宝塚・花組トップスター 蘭寿とむさん
「ものすごく努力をするという人だなと。自分の理想とする美学というか、男役像みたいなものに向かって進む、そのパワーはすごかったです」
宝塚退団後、劇団四季で活躍した有永さん。2014年、劇団四季の元同僚で夫の寺田真実さん(53)とともに、「心魂プロジェクト」を立ち上げました。
心魂プロジェクト共同代表 有永美奈子さん
「(俳優として)自分ができることは何だろうと考え続けていたんですけど、劇場に来ることが難しい子どもたちがいる、(公演を)その子たちのところに届けたい、体験してもらいたいと思ったのが、この活動をスタートした原点です」
しかし、経済的な余裕はありません。有永さんは出演だけでなく、経理などの“裏方仕事”も担っています。
会場には寺田さんが運転する車で向かい、積み込んだ機材は有永さんも運び入れます。
心魂プロジェクト共同代表 有永美奈子さん
「普通の劇団だと運転手がいて、(スタッフが)舞台の装置や機材を運んでくれる。公演料が上がってしまうので無理かなと」
「父母以外にもいる頼れる存在」入退院を繰り返す17歳との絆
有永さんらが始めたもう1つの取り組みが、6年前に始めた「キッズ団」です。
難病の子や障害児ら18人が在籍し、有永さんらが歌やダンスを教えています。
心魂プロジェクト共同代表 有永美奈子さん
「本日最後の出演者になります。キッズ団のジャスミンです」
「キッズ団」の創設メンバーで、17歳の重宗果歩さん。先天性の心臓の病気などを抱えながら、「ジャスミン」の愛称で舞台に立っています。
重宗果歩さん
「皆さん、こんにちは。いろんなことがあるけど夢に向かって頑張っていこう、そんな思いを込めて歌わせていただきます」
「翼をください」を歌う果歩さんを、有永さんは優しく見守っていました。
元気そうに見える果歩さんですが、その体はいつ入院してもおかしくない状態です。
医師
「体調はどうですか?」
重宗果歩さん
「体調はぼちぼち。むくみは強くなっているけど」
検査結果などを踏まえ医師は…
医師
「19日から入院にしときましょうか」
果歩さんの母親
「きょうは泣かないんですね」
ペースメーカーが必要な果歩さんの心臓。他の難病も抱え、体の不調が頻繁に起きます。
医師
「ある程度入院で(体調を)整えて、また普段の生活に戻るというのを繰り返している現状がある」
辛い入院生活を支えるのが、有永さんです。
重宗果歩さん
「(病気のため)小学校もほぼ行っていないので友達も少ない。眠れない日は(有永さんに)文章を書いて送って、『入院中にできる事を探すでもいいし、一緒に考えていこう』って。お父さん、お母さん以外にも頼れる存在」
師弟の挑戦 テーマは「命」
そんな2人がこの夏、ある公演に挑みました。果歩さんが考えた踊りを1人で披露します。
前日のリハーサルでは…
心魂プロジェクト共同代表 有永美奈子さん
「前奏がかかる、踊り出すまでの時間にどれだけ意識して、自分がストンといられるかで、その日の勝負が決まる」
踊りのテーマは“命”です。
重宗果歩さん
「人はいつ死んじゃうか分からないし、後悔しないように、やりたいことは全部やろうって思ってやるので、私が。だからそれをみんなにも分かってほしいなって思って。そんな思いでやります。生きている長い命を表している振り付けなので」
迎えた本番。いくつもの歌を披露し、有永さんは会場を盛り上げます。
そして果歩さんが舞台に立ちました。
重宗果歩さん
「きょうは恩返しとして、私が振付した『いのちの歌』を踊らせていだだきます」
果歩さんは表情豊かに、堂々と踊りを披露しました。その様子を見守る有永さん。
心魂プロジェクト共同代表 有永美奈子さん
「宝塚に入らせていただいたことも、劇団四季の舞台に立たせていただいたことも、全てがこの心魂(プロジェクト)の活動で、子どもたちと出会うためにつながっていた道だとすごく思います。これを命が続く限りやっていきます、やり続けて行きます」
印象的な元タカラジェンヌの“子どもたちを見つめる目”
喜入友浩キャスター:
有永さんは、これまで約1500回の公演を行ってきたそうですが、子どもたちを見つめる目が印象的でしたね。拍手や言葉などで感情を表現するのが難しい子どもたちがいる中で、有永さんはしっかりと目を見て、目から感情を読み取ってパフォーマンスをして、一対一の時間を大切にされているそうです。
上村彩子キャスター:
本当に優しい眼差しでしたね。移動の問題や感染のリスクなどがあるため、劇場になかなか行くことができない子どもたち、そして、その家族にとっては、生身のパフォーマンスに触れることができる機会はとても貴重だと思います。
また、果歩さんのように自分の可能性を信じて挑戦する。パフォーマーを後押しするなどの活動が、本当の意味でのインクルーシブな、包括的な社会を作っていくことに繋がるのではないかと思います。
心魂プロジェクトは、全国700以上の病院や学校などで講演を行い、オンライン配信も行っています。