党4役が辞意表明も石破総理は"想定内"? “総裁選の前倒し”迫るも…「やるもやらぬも茨の道」 自民党が向かう先とは【edge23】

参院選敗戦をめぐる総括を終えた自民党は、党4役が辞意を表明した。そして9月8日には、“総裁選の前倒し”実施を求める署名が提出される。
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いま、石破政権はどのような選択を迫られているのか。
「やるもやらぬも茨の道」。総裁選の前倒し実施の要件と手続き、そして自民党幹部たちの思惑と動きを、TBS政治部で自民党・森山裕幹事長担当として日々取材をしている原尉之記者が詳しく解説する
"すべて想定内"党4役辞意は新たな政局の始まりか
9月2日、参議院選挙の総括を終え、自民党の党4役が辞意を表明した。森山裕幹事長、鈴木俊一総務会長、小野寺五典政調会長、木原誠二選対委員長の4人だ。
この党4役の辞意表明について、原記者は「我々からしたら想定内、特に驚きがあったわけではない」と話す。森山幹事長は8月28日の両院議員懇談会で「自らの責任を明らかにしたい」と発言していたからだ。
一方、石破総理はこれらの辞意を「預かり」、慰留の意向を示した。原記者は「石破さんはある程度想定していた部分と、『4役全員か』という驚きもあったのではないか」と分析する。特に森山幹事長の存在は石破政権にとって大きく、この1年間、「一蓮托生」「一心同体」と言われるほど重要な関係だった。
しかし、この辞意表明を受けても石破総理の姿勢に変化はない。原記者は「石破総理に辞める意思は全くなく、続ける覚悟というようなものを強く感じる」と指摘する。
石破内閣からは副大臣が7人、政務官が5人と、計12人が総裁選の前倒しに賛成する意向を表明している(JNN調べ※9月4日午後7時時点)。この背景には、総会での石破総理自身の発言がある。「副大臣、政務官は辞める必要ない」「自らの意思を表明してもらって構わない」と述べたことで、日を追うごとに賛成表明者が増えているという。
「提出すると決めている」麻生氏の一言の波紋と影響
いよいよ9月8日、総裁選前倒しの実施を求める書面が提出される。前倒し実施の要件は、「衆参両院の国会議員295人と都道府県連の代表47人を合わせた342人の過半数=172人以上」の賛成だ。
注目される各都道府県連の判断について、JNN調べ(9月4日午後7時時点)では、▼北海道や兵庫、愛媛など6つの道県が賛成する方針を決定。▼岩手、山梨など5県が賛成する方向で調整を進めていることがわかっている。一方で▼岡山、大分など4県は実施を求めないとしていて、今週末にかけて多くの都道府県連が会議を開き、その結果を見て国会議員も判断するケースが増えそうだ。
注目されるのは麻生太郎最高顧問の動きだ。9月3日、派閥の研修会で麻生氏は所属議員に対し「堂々と胸を張って説明できるような行動をお願いしたい」と述べた上で、「私自身については総裁選挙の前倒しを要求する書面に署名、そして提出をすると決めている」と明言した。
自民党内で唯一残る麻生派(43人)への影響は大きい。原記者は「派閥の領袖が『今回は誰々を支持するぞ』と宣言することで、派閥に所属する議員もそれに従って動いていた歴史もある」と説明する。麻生氏の発言は、所属議員に対して間接的に前倒しへの賛成を促す効果があるとみられる。
一方で高市早苗前経済安保担当大臣は、2日の両院議員総会で、参院選敗北の要因としてポスター貼りなどの広報活動に言及するにとどまり、石破総理の責任には触れなかった。これには過去の総裁選で高市氏を推薦していた議員からも「何を話すんだろうと期待していたが、がっかり」という声も出ているという。
小泉進次郎農水大臣は「解党的出直しが必要だというふうに位置づけたということは重いこと」と述べるにとどまり、前倒しの賛否は明言していない。原記者は「判断がすごく難しいのではないか」と分析する。
小泉氏は、神奈川県連の会長であり、石破内閣の現役の大臣でもあるほか、総裁選への出馬もささやかれる複雑な立場だ。署名するのか、しないのか、いずれにしても大きな責任を伴う決断であり、その態度表明に注目が集まっている。
やるもやらぬも…「茨の道」が待ち構える理由
前倒しが実施される場合、大まかなスケジュールとしては、9月8日の結果を受けて1週間程度でルール作りを行い、その後1週間で立候補者の決定、そして総裁選本番という流れになる。ただ、石破総理は自ら辞める意思がなく、総裁選が前倒しとなった場合でも「出馬する可能性はある」と原記者は指摘する。その場合、20人の推薦人を集められるかが焦点になる。
一方、前倒しが実施されない場合、石破政権は続くことになるが、9月末には党役員人事を行わなければならない。今回辞意を表明した森山幹事長らに代わる幹部を誰に任命するかが難題となる。
原記者は「石破さんを支えたいという人たちがいるかどうか。いたところで受けてくれるかどうか」と説明する。さらに、前倒しを求めた議員の名前は公表されるため、「前倒しを求めた人を一切排除したような人事になると、それはそれでまた党を二分することになる」と指摘する。
署名提出当日の9月8日は、記者たちも大忙しだ。署名は午前10時〜午後3時までの5時間、自民党本部で受け付けられる。議員本人が提出するのが原則だが、どのように現れるかは様々なパターンがある。
取材する記者たちは、自民党本部の1階のエントランスで待機することになっている。原記者によれば、▼本人が堂々と登場して取材に応じる、▼本人は登場するが取材には応じない、▼別の出入り口からこっそり入退室する、▼(特別な事情がある場合のみ)秘書が代理提出する、という4パターンが考えられる。
特に提出の開始時間となる午前10時は、「みんなが行くから自分も行こう」と提出に訪れる議員が集中する可能性が高いという。
前倒しを求める署名を出すということは「一国のリーダーを下ろす決断」であり、その是非が公表されることで「自民党の中で意思が真っ二つに割れる」状況につながる可能性がある。原記者は「日本国のため、国民のためといったところを考えて署名を書くのか書かないのか、考えてもらいたい」と締めくくった。
自民党にとって前例のない状況が続く中、石破政権の行方は依然として不透明だ。総裁選が行われても行われなくても、党は「茨の道」を歩むことになりそうだ。