なぜ中国発「ラブブ」は世界を席巻したのか? 2000万円以上の高値も…ポップマートの巧みな4つの戦略

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2025-09-16 07:30
なぜ中国発「ラブブ」は世界を席巻したのか? 2000万円以上の高値も…ポップマートの巧みな4つの戦略

街中で、ウサギのような長い耳とギザギザの歯が特徴的なぬいぐるみをカバンにつけている人を見かけたことはないでしょうか。その名は「LABUBU(ラブブ)」。少し「ブサカワ」とも言える個性的なルックスで、今、世界を席巻しています。

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このラブブを制作・運営しているのが、中国の玩具メーカー「ポップマートインターナショナルグループ」です。同社が先月8月20日に発表した決算によると、上半期の売上高は138億8000万円(約2850億円)で、これは前年同期比204.4%増です。純利益は47億1000万円(約970億円)で、こちらも同様に362.8%増となりました。創業者の王寧(ワン・ニン)氏は、この決算発表の場で、通期の売上高が300億円(約6160億円)に達する見通しだと語りました。

なぜラブブはこれほどまでに人々を熱狂させるのか。その成功の裏にある巧みなビジネス戦略と、急成長企業が抱える課題に迫ります。

<東京ビジネスハブ>
TBSラジオが制作する経済情報Podcast。注目すべきビジネストピックをナビゲーターの野村高文と、週替わりのプレゼンターが語り合います。今回は2025年8月31日の配信「運営企業の売上6000億円。 中国発のバズる人形「ラブブ」って何だ?!(野村高文) 」を抜粋してお届けします。

K-POPスターが火付け役 二次流通では2200万円の値も

ラブブはもともと、香港出身のイラストレーター、カシン・ルン氏が2015年に出版した絵本『The Monsters』に登場するキャラクターです。北欧神話から着想を得た妖精の女の子というユニークな設定を持ち、約10年の歴史があります。

当初はそれほど有名ではありませんでしたが、近年、K-POPスターであるBLACKPINKのリサさんがSNSで「ラブブがお気に入り」と投稿したことをきっかけに、人気が爆発。一気に世界中の注目を集めることとなりました。

この人気はビジネス面にも大きな影響を与えており、特に二次流通市場での価格高騰は凄まじいものがあります。元々の単価は1500円から2000円程度ですが、ブランドのVANSとコラボした限定モデルは、二次流通市場で1万ドル(約133万円)近い高値を記録。さらに、一体しかない131cmの大きなミントグリーンの限定モデルが、今年6月に108万元(約2200万円)という衝撃的な価格で取引され、大きな話題となりました。

なぜ人々は熱狂するのか?ポップマートの巧みな4つの戦略

ラブブ人気の背景には、運営企業であるポップマートの巧みな戦略があります。
一つ目の戦略は、「ブラインドボックス」形式という売り方の巧みさです。これは、中身が見えない箱にキャラクターをランダムに封入し、開封するまで何が入っているか分からない販売方法です。トレーディングカードのように、何が出るか分からないワクワク感が若者の心を掴みました。

二つ目は、ビジネスモデルの転換です。ポップマートはかつて、様々なキャラクターを高額なコレクター商品として販売していましたが、ある時点から事業をブラインドボックス形式に特化。単価を1500円程度に設定したことで、購入者層が一気に若返りました。

三つ目は、自社IP(知的財産)開発へのシフトです。創業当初はサンリオのハローキティやディズニーといった有名IPのライセンス商品を扱っていましたが、2016年頃から自社開発の方針へ転換。現在では、売上の9割以上を自社開発IPや専属契約アーティストのキャラクターが占めています。これにより、ライセンス料に依存しない高い利益率を確保できるビジネスモデルを築き上げました。

そして四つ目が、出店戦略と店舗のメディア化です。キャラクタービジネスでは代理店経由の販売が一般的ですが、ポップマートは直営店の展開にこだわりました。中国全土に400店以上、海外にも120店以上を展開し、その内装をSNS映えするように作り込むことで、店舗そのものをメディアとして機能させたのです。通常、メーカーと小売業はビジネスモデルが異なるため両立は困難ですが、同社は強い意志を持って両方に投資し、成功へと繋げました。

創業者は22歳で創業 雑貨店から始まったポップマートの軌跡

このポップマートを率いるのは、1987年生まれの創業者ワン・ニン氏です。彼が22歳だった2010年に創業しました。商売人の家系に生まれ、幼い頃からビジネスに興味があったワン氏。大学時代に、香港で見た「格子街」というビジネスモデルを知りました。これは、一つの店舗を格子状に区切り、小さなスペースを貸し出して商品を販売する仕組みで、ポップアップストアに近い形態です。

この着想を得て、大学卒業後に北京のスタートアップの聖地・中関村地区でキャラクターグッズなどを扱う雑貨店をオープン。個人のアーティストの作品を集めて販売すれば、芸術家のためにもなり、面白い商売になると考えたのが始まりでした。
しかし、当初はビジネスがなかなか軌道に乗らず、売上が伸び悩む時期が続きました。

飛躍のきっかけは、創業から5年後の2015年でした。日本のIPである「ソニーエンジェル」の中国における代理店販売契約を結び、のちに主力となるブラインドボックス形式で販売したところ、これが大ヒット。会社の累積損失を解消することに成功します。

この成功体験を通して、ワン氏はアート作品やキャラクターに対する人々の強い愛着を再認識し、「自社でもそういったキャラクターを作りたい」という思いを強くします。これが、自社IP開発へと舵を切る大きなきっかけとなりました。

そして翌2016年、香港のデザイナーに依頼して生み出したキャラクター「モリー」が大ヒット。売上高は3年で8倍に急拡大し、ポップマートの名を世に知らしめました。現在のラブブの成功は、このモリーのヒットがあったからこそなのです。

急成長の裏に潜むポップマートの課題

輝かしい成功を収める一方で、ポップマートはいくつかの課題も抱えています。
一つは、転売ビジネスの活況化です。組織的な転売ヤーによる買い占めが横行し、オンラインストアでも実店舗でも常に品切れ状態が続くという状況に、運営側も頭を悩ませています。購入点数の制限や身分証明書の提示といった対策を講じていますが、いたちごっこの状態が続いています。

また、ブラインドボックスという販売方法は、射幸心を煽る側面が指摘されています。「次こそは欲しいものが出るはず」と、予算以上の金額を費やしてしまう消費者が続出し、中国国内で社会問題化。8歳未満の購入を禁止する提案がなされるなど、規制の動きも出てきています。

さらに本質的な課題として、IPビジネスの宿命である「飽きられる」リスクがあります。かつて業績を牽引したモリーも2022年に人気がピークアウトし、その後にラブブが登場したことで業績が再浮上した経緯があります。ラブブもいつか飽きられる可能性を考えると、次のヒットキャラクターをいかに生み出し続けるかが、企業の成長の鍵を握っています。

ブームで終わらせないために 創業者が語る未来

一方で、創業者ワン氏は楽観的で、インタビューでは「私たちは慌てません。大切なのは芸術性の高さであり、早急な利益は追わない。ゆっくりとやればいいのです」と強調しています。急成長している企業ではあるものの、その急成長を目的化しないというスタンスを現時点では明言しています。そのため、そうしたスタンスを守りながら、一過性のブームで終わらせず、いかにして飽きられないようにするかという点が、今ポップマートに問われていることなのでしょう。

<野村高文>
音声プロデューサー・編集者。PHP研究所、ボストン・コンサルティング・グループ、NewsPicksを経て独立し、現在はPodcast Studio Chronicle代表。毎週月曜日の朝6時に配信しているTBS Podcast「東京ビジネスハブ」のパーソナリティを務める。

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