“免疫のブレーキ役発見”でがん治療の未来は… 今年のノーベル生理学・医学賞に坂口志文さんに聞いた【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2025-10-07 13:07

6日、今年のノーベル生理学・医学賞が発表され、大阪大学特任教授の坂口志文さんらが選ばれました。

【画像で見る】坂口志文さんが研究 「制御性T細胞」とは

坂口志文さんにノーベル賞 「制御性T細胞」とは

6日夜、拍手で迎えられた大阪大学の坂口志文特任教授。

大阪大学 坂口志文 特任教授
「今回、このような形でノーベル賞をいただくことになりまして、非常に大変光栄に思っております」

ーー受賞の知らせを受けて、まず誰に?
「長く家内と一緒にやってまいりましたので、もちろん家内が喜んでくれる、そのように思っておりましたし。研究は1人ではできませんので、学生諸君、また共同研究者の方々、そういう一緒に、長い間いろんな方と一緒に仕事をしてきましたので、そのような方々に感謝しております」

日本時間の6日午後7時前に発表された今年のノーベル生理学・医学賞。

スウェーデン カロリンスカ研究所
「2025年のノーベル生理学・医学賞をメアリー・ブランコウ氏、フレッド・ラムズデル氏、坂口志文氏に授与すると決定しました」

免疫学の分野で優れた業績を上げたことが評価され、アメリカの研究者2人と共同受賞が決まりました。

大阪大学 坂口志文 特任教授
「私のやってきた研究といいますのは、免疫反応をいかに制御するか」

坂口さんは滋賀県出身の74歳。京都大学医学部を卒業後、愛知県がんセンターなどを経て、1979年から「制御性T細胞」の研究に取り組んできました。

「制御性T細胞」とは、どんなものなのでしょうか。

通常、私たちの体に細菌やウイルスが侵入すると、免疫細胞が攻撃を始めます。しかし、免疫細胞は時に、働きすぎて正常な細胞にも攻撃を加えてしまうことがあります。このような“免疫細胞の働き”を制御するのが「制御性T細胞」です。

まだ薬などへの実用化は始まっていませんが、今後、アレルギーやがんの治療などへの応用が期待されています。

大阪大学 坂口志文 特任教授
「臨床の場で役に立つと、そういうふうに、もう少し発展してくると、何らかのご褒美もあるかもしれないと思ったが、この時点でこのような名誉をいただくのは非常に驚きであるし、光栄に思っております」

日本人のノーベル生理学・医学賞の受賞は2018年の本庶佑さん以来、6人目の偉業。会見中には総理から祝福の電話も…

石破総理
「本当に世界に誇る立派な研究を本当にありがとうございます。おめでとうございました」

大阪大学の医学生「日本の医学に貢献できるように頑張ろうと」

街の人からも祝福の声が相次ぎました。

女性
「日本の方で歴史に残るような賞をとっていただいたらすごく嬉しい。もっとこういう方がどんどん出てくればいいなと」

男性
「日本が誇るいい受賞なんじゃないですかね」

坂口さんの授業を受けていたという大阪大学の学生からは…

坂口さんの講義を受講 医学部2年生
「そんなすごい先生の授業を受けられる環境にいることがありがたい」
「日本の医学に貢献できるように頑張ろうというモチベーションになりました」

かつて坂口さんが在籍した、愛知県がんセンターで同僚だった名古屋大学大学院の上田特任教授は…

名古屋大学大学院 上田龍三 特任教授
「自分の研究テーマを若い頃からきちんと持っていて、時代の変遷に紆余曲折することなく現在まで続けられている一途な研究者」

地道な研究が実ったノーベル賞 信念は「一つ一つ」

坂口さんの兄も6日夜、地元の滋賀県で取材に応じました。

坂口志文さんの兄 偉作さん
「私よりも母が去年105歳で亡くなりましたので、ずっと10年間、待ち焦がれていましたので」

2024年に亡くなった母親は、坂口さんのノーベル賞を心待ちにしていたといいます。

坂口志文さんの兄 偉作さん
「(母親は)受賞できないと寂しそうな顔をするし、『そんな簡単にとれるものじゃないから落ち込むことはない』という電話を、志文本人からも受けてましたし。そのことを思うとあと1年長生きしてくれたらという気持ちもあります」

長年の地道な研究が実った今回のノーベル賞受賞。

ーー先生の座右の銘、あるいは信念は?
大阪大学 坂口志文 特任教授
「いや…中々そんな四字熟語のような信念がなくて、今、自分に言い聞かせるとするなら本当に『一つ一つ』ということになります」

そして、子ども達に対してはこうメッセージを送りました。

大阪大学 坂口志文 特任教授
「お稽古事でもいいですし、スポーツでも。また我々がやっておりますようなサイエンスでもいいと思うんですけれども、自分で興味のあることを大切にする。また、それをずっと続けることによって、また新しいものが見えてくる。気がついたら非常に面白い境地に達している。そういうことが起これば、サイエンスに限らず、どんな分野でも面白いかなとは思います」

坂口さんに聞く「免疫」の奥深さ がん治療の未来

藤森祥平キャスター:
ノーベル生理学・医学賞を坂口志文さんが受賞ということですが、どう感じていますか。

科学ジャーナリスト 寺門和夫さん:
日本の免疫学の研究はすごくレベルが高いんです。ですから非常に嬉しく思っています。

藤森祥平キャスター:
号外が配られたり、坂口さんのもとにも祝福の声が届いているかと思います。今、どんなお気持ちですか。

ノーベル生理学・医学賞 坂口志文さん:
本当にありがとうございます。大変、名誉な賞をいただいたと、本当に嬉しく思っております。

小川彩佳キャスター:
ご家族やご友人からは、どのような声が聞かれましたか。

ノーベル生理学・医学賞 坂口志文さん:
いろいろなメールが来ております。ちょうど受賞の電話をいただいたときに、そばに家内もおりましたもんですから、そういう意味では喜んでくれたと思います。

小川彩佳キャスター:
奥様とは共に研究をしてこられたんですよね。

ノーベル生理学・医学賞 坂口志文さん:
そうですね。アメリカが長かったものですから、その時代から日本へ帰ってきてからも、ずいぶん長く一緒の研究室で仕事をしてまいりました。

藤森祥平キャスター:
奥様とともに進めてきた免疫学の研究。「制御性T細胞」にのめり込んだその理由は何だったんでしょうか。

ノーベル生理学・医学賞 坂口志文さん:
私の一番最初の興味といいますか、それは、免疫は私達の体を守るわけです。ウイルスとか細菌とかから。ところが一方で、免疫が自分を攻撃すると「自己免疫病」。あるいは、過剰に反応すると「アレルギー」が起きるということで、いろいろな免疫病も起こすわけです。

良いところと悪いところの二つの面がありまして、そのメカニズムは何だろうということの研究を始めまして、それで行き着いたのが、実は免疫反応を抑えることに特化したリンパ球がいるんだと。

そのリンパ球の異常が起きると、過剰あるいは異常な免疫反応が起きて病気になるとか。あるいはそれをうまく減らすと免疫反応が高まりますので、がん免疫にも使えるとか。いろいろなことがわかってきて、そういう形で研究を続けてきたということになります。

科学ジャーナリスト 寺門和夫さん:
先生、受賞おめでとうございます。先生に一つ質問があります。

今回の制御性T細胞の研究で免疫のシステムというのは非常に複雑だということがよりわかってきたと思うんですが、この免疫のシステムの奥深さや不思議さ、こういったものについて先生は研究者としてどのように考えていらっしゃいますか。

ノーベル生理学・医学賞 坂口志文さん:
これはもう免疫学の歴史になりますが、北里柴三郎の時代に、破傷風などいろいろな感染症があって、抗体療法や、あるいはワクチンといったもので感染症を治すことができると。現在でも、COVID-19(新型コロナウイルス)に対して、免疫反応、いかにワクチンを作るかと、そういうことです。

同時に、実は免疫反応というのは、強くしたら良いというものもあれば、自分に反応して、押さえないといけないものもあり、両面があります。そういう意味での深さということです。

二つのバランスというのが崩れると、いろいろな病気になりますし、うまくそれを戻してやると疾患の予防にも繋がるということです。

その範囲がアレルギーとか自己免疫病のみならず、がんや肥満といった成人病、あるいはアルツハイマー病などの神経疾患にも重要ではないかと、広がりが出てきています。

ある意味、免疫の不思議さ、あるいは深さ、あるいはこれからもっと研究すべき方向性だと思います。

小川彩佳キャスター:
坂口さんは子どもの頃、どのような子どもでしたか。今に繋がっていると思うことはありますか。

ノーベル生理学・医学賞 坂口志文さん:
普通の子どもだったと思いますので何とも言えませんが、本を読むのが好きで、小学生の頃はクラスでただ一人眼鏡をかけてるという近眼でしたね。だから、その程度のことしか今には繋がっていないと思いますよ。

藤森祥平キャスター:
がん治療のこれから、未来について、希望的なお話があればぜひ教えてください。

ノーベル生理学・医学賞 坂口志文さん:
ご存知のように、がんの免疫療法というのは社会的にも注目を浴びております。

現在は、進行したがんに対して抗体療法をやるわけですが、本来、免疫というのは、例えばワクチンのように予防するということができるわけです。

私達が考えるがん免疫の将来というのは、がんが発見された時点から免疫反応を上げることによって、将来ひょっとして起こるかもしれない転移などを抑えられれば…。現在、がんで亡くなる方の90%は転移です。

どんながんであれ免疫反応を高めて、その(転移の)可能性を低くすることで、がんの転移で亡くなる方が、もし半分になれば、半分のがんの患者さんが救えるわけです。

がんの治療法としては、がんと発見されたその日から始められるような、がん免疫療法が重要だと思います。これから研究すべきことだと思っております。

==========
<プロフィール>
坂口志文さん
ノーベル生理学・医学賞を受賞
大阪大学特任教授

寺門和夫さん
科学ジャーナリスト
医学・生物学から宇宙まで幅広く取材
科学雑誌「ニュートン」副編集長など歴任

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