米中対立の陰で…忘れられたウイグル問題 進む「同化政策」モスクは壊され、漢族と「親戚」に【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2025-11-08 15:19
米中対立の陰で…忘れられたウイグル問題 進む「同化政策」モスクは壊され、漢族と「親戚」に【news23】

10月30日に行われた米中首脳会談。その会談で触れられなかった問題があります。「ウイグルの強制労働問題」です。アメリカは中国に対し「人権侵害が行われている」として制裁措置をとっていますが、果たしてその効果はあったのか。現場を取材しました。

【写真を見る】ウイグルの人たちが収監されたとされる収容所の内部とみられる写真

米中が対立…人権侵害の象徴「ウイグルの綿花」

畑一面に広がる綿花は、まさに収穫を待つばかりとなっていました。

中国西部にある、新疆ウイグル自治区。世界の綿花の20%を生産する一大産地ですが、この綿花が「人権侵害の象徴」として、アメリカと中国の間で大きな問題となってきました。

アメリカ政府は「テロ対策の名目で100万人以上のウイグル族が収容所に送られている」と指摘。

ウイグルの人たちに▼イスラム教の信仰を禁止したり、▼中国語教育を強要するなどの同化政策や、▼不妊手術を行うなど、民族に対する「ジェノサイド=集団虐殺」が行われているとして中国への圧力を強めてきました。

2021年、第一次トランプ政権は綿花の生産をめぐり「強制労働が行われている可能性がある」として、ウイグルで生産されたすべての綿製品の輸入を禁止。

続くバイデン政権も、ウイグルからのすべての製品の輸入を事実上禁止しました。

制裁の効果はあったのでしょうか。

強制労働は「嘘」? 経済制裁の効果は…

私たちが訪れたのは、地元政府が取材先として用意した農家です。

記者
「まさに収穫作業を行っていますが、収穫に使う大型の作業車一台で、運転する人以外、ほとんど作業員の姿は見当たりません」

父親の代から40年以上、ここで綿花を栽培しているというウイグル族の男性が取材に応じました。

ウイグル族 綿花農家の男性
「手作業だとコストがかかりすぎるので、機械を使っています」

以前は30~40人が2か月かけて綿花をつんでいたそうですが、6年前に機械を導入。今は3日で収穫が終わるといいます。

アメリカが指摘する強制労働はあるのか聞いてみると。

ウイグル族 綿花農家の男性
「嘘です。見たことはありません」

近所の住民も「機械化されているから強制労働の余地がない」と主張しました。

「綿花」とともに制裁の象徴となった「トマト」。地元政府が私たちの取材のため、トマト農家の男性を連れてきました。

トマト農家の男性
「新疆ウイグル自治区のトマトは色・品質・味、全ての面で優れています」

トマトも2021年以降、アメリカの制裁対象となり、日本の企業も輸入を見合わせるなど対応に追われました。しかし、農地も収穫量も年々増加していると主張しました。

トマト農家の男性
「制裁の影響はありません。(制裁の)効果があるなら、なぜ生産量が増えているのでしょう。中国には13億人います。制裁されるなら国内で食べればいい」

市民も「制裁の影響はない」と口をそろえます。

新疆ウイグル自治区の市民
「制裁は役に立たないと思います。アメリカが買わなくても、他の国が買ってくれるから」

新疆ウイグル自治区の市民
「アメリカの制裁による市民への影響は少ないと思います」

新疆ウイグル自治区政府の幹部もこう主張します。

新疆ウイグル自治区 政府幹部
「新疆ウイグル自治区ではいかなる形であれ『強制労働』は存在しない。アメリカは強制労働を口実に、ウイグルの企業や個人に制裁を科しているが、その本質は人権を隠れ蓑にした政治的陰謀と経済的ないじめである」

9月、新疆ウイグル自治区成立70年を祝う式典に出席するため、ウルムチ市を訪問した習近平国家主席。いかにウイグルが経済的に発展したかを強調したうえで、漢族との同化政策をさらに進めるよう指示しました。

モスク破壊されるも…“不自然な声” 進む「同化政策」

「制裁に効果はない」

その言葉を裏付けるかのように、ウイグルの人々への同化政策はさらに進んでいました。

記者
「ここは2年前までモスク(イスラム教の礼拝堂)があったという場所ですが、完全に取り壊されています」

近隣住民
「今はモスクは壊されてありません」
「政府が壊したのです。壊してはいけないものまで…。昔はモスクがたくさんあったが、全て壊されました」

2年前、モスクの取り壊しが始まっていた場所は2025年、訪れるとサッカーコートになっていました。

しかし、近隣住民からは不自然な答えが返ってきました。

――ここはモスクでしたよね?

近隣住民
「いいえ。ここは昔もモスクはありませんでしたよ」

――いつからこうなったかわかりますか?
「わかりません」

モスクがあったにもかかわらず「わからない」「知らない」と言葉を濁す人々。ようやく「1年前にサッカーコートになった」と話してくれる人がみつかりました。

近隣住民
「ここは解体され、ボール遊び場にされたんです。間違いありません、以前はモスクでした」

2年前、鍵がかかっていたこちらのモスクも…

――何に改装するのですか?

近隣住民
「民宿です」

――ここは地元の人がお祈りするモスクだったのでは?
「それは言えません」

モスクの破壊について、中国政府は「文化は尊重されており、モスクは修復・保存されている」と主張しています。

漢族といきなり“親戚”に…諦めの声も

同化政策を進めるため、中国政府が新疆ウイグル自治区で行った政策のひとつに「親戚制度」があります。

「親戚制度」とは人口の9割を占める漢族をウイグル族の家庭に割り当て、まるで家族の一員のように、家で一緒に食事をしたり寝泊まりをすることで、ウイグル族を監視するとともに中華民族の一員としての意識を植え付ける政策です。

この女性は「以前、漢族が『親戚』として家に来た」と証言しました。

ウイグル族の女性
「一緒に住んで、食事も一緒にしていました。一緒に住むんです。そういうこと」

そして、諦めたようにこう話しました。

ウイグル族の女性
「解決できない問題なんてありません。今はみんなうまくいっていますから」

――ウイグル族の人は今の状況をもう受け入れたのですか?
「ええ、受け入れました」

第二次トランプ政権発足以降、初めて対面での会談を行った2人。しかし、トランプ大統領からウイグル問題など、中国の人権問題について言及はありませんでした。

専門家は、アメリカによる制裁の効果は限定的だと指摘したうえで、次のように分析しました。

法政大学 熊倉潤 教授
「アメリカがもう言ってこないということは、中国からすると、『この対立に勝利した』という気分になるだろうと。『人権問題なんてない』という中国の主張の方に勢いが出てくる。中国の主張に、アメリカの沈黙が有利な効果をもたらすのではないか」

かつて、米中対立の象徴だったウイグルの人権問題。しかし今、その問題は忘れ去られようとしています。

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