大量に漂着するごみとどう向き合うか、対馬の戦い<シリーズ SDGsの実践者たち> 【調査情報デジタル】

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2025-12-06 07:30
大量に漂着するごみとどう向き合うか、対馬の戦い<シリーズ SDGsの実践者たち> 【調査情報デジタル】

九州最北端に位置する対馬の海岸には、国内外で発生した大量のごみが漂着している。漂着ごみ自体は減らない中、海の環境を守るために何ができるのか。対馬の取り組みを取材した。「シリーズSDGsの実践者たち」の第50回。

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海岸に漂着する大量のごみをボランティアが清掃

長崎県対馬市の西北部にある越高海岸。海岸沿いにある越高遺跡は今から約7100年前から6400年前、縄文時代早期末から前期にかけての古い遺跡だ。周辺の海の透明度は高い。

ところが、海岸を見ると大量のごみが漂着している(冒頭の写真)。ラベルなどを見ると、中国や韓国など外国の文字が書かれているごみが大半を占めている。

この海岸を清掃しようと、8月30日には国際ボランティア学生協会(IVUSA)に所属する全国の大学生約80人が集まった。IVUSAは2019年から越高海岸で活動を始め、2022年以降は年に2回訪れている。 

対馬市ではごみを回収する際には発泡スチロールやペットボトルなどを種類別に集めたうえで、農業や工業などで利用される1トン用の黒いフレコンバッグ(フレキシブルコンテナバッグ。ポリプロピレンなどの樹脂で編まれた大型の袋)に入れていく。

今回初めて参加した日本大学2年生の大野毅文さんは「こんなにごみがある海岸が本当に存在するのかと思いました。実際に見た印象は強烈です」と驚いていた。

IVUSAは今年3月にも清掃を行っている。それからわずか5か月で、清掃すると同じ前かそれ以上のごみが流れ着いていた。5回目の参加で広報リーダーなどを務める法政大学3年生の千須和仁さんは、「何度も清掃活動をしているのに、終わらない果てしなさを感じています」と無力感を隠さなかった。それでも対馬の漂着ごみの現状を広く伝えようと、今回の活動をSNSによって発信している。 

IVUSAでは今回、3日間で約104トンのごみを片付けた。ただ、1年間に対馬全体に流れ着くごみの総量から見れば、ごくわずかな量に過ぎない。

漂着ごみは対馬市が回収・処分して民間がリサイクル

対馬は南北82キロ、東西18キロの細長い島で、海岸線の長さは930キロにも及ぶ。30年ほど前から海岸にごみが目立つようになった。その量は増えることはあっても減ることはない。海洋生物や海岸の植物への悪影響や、漁業被害、さらにはナノプラスチックを体内に取りこんだ魚を食べることによる人体への影響も考えられる。  

海外からのごみは、対馬海流と季節風の影響で1年中漂着している。しかし、越高海岸のように海岸線付近まで道路が伸びていて、陸から人が近づける場所はごくわずかしかなく、それ以外の海岸には、越高海岸以上に大量のごみが集まっている。 

こうしたごみの回収は、ボランティアの活動だけでは追いつかない。対馬市は船でしか行けない約150の海岸でのごみ回収を漁協に業務委託している。集めたごみは対馬クリーンセンター中部中継所で市が処理する。回収や処理にかかる費用は年間2億9000万円ほどで、そのうち9割は国から補助を受けている。

市が年間に回収できているごみの量は、1トン用のフレコンバッグで8000袋から9000袋分。ピーク時には夥しい量のフレコンバッグが中部中継所に集まってくる。

ごみの内訳は10年間の平均で、発泡スチロールが34%、ポリタンクなどのプラスチックが24%、魚網などが10%を占める。対馬市未来環境部環境対策課の福島利弥さんは、処理の方法を次のように説明する。

「発泡スチロールは汚れている部分を削り、機械を使って50分の1に圧縮して、電化製品の部品や緩衝材などに使われる素材にリサイクルしています。プラスチックは破砕機でチップ状にします。チップのリサイクルは企業の協力で2022年から始まっていて、樹脂ペレット(プラスチック製品を製造するための、直径数ミリ程度の小粒状の原料)に加工されたうえで、買い物かごやボールペン、フリスビーなどにリサイクルされています」

市が導入したのは圧縮に使う機械と破砕機だけで、あとは人の手によって分別し、リサイクルできないものは埋め立て処分をしている。海水を含み、劣化も進んでいるごみについてはリサイクルが難しいため、埋め立てるごみの量は年間1800立方メートルに及ぶ。

福島さんによると、市で圧縮や破砕を行っているのはリサイクルのためだけではなく、処理費用が安く抑えられるからだという。

「1トンのフレコンバッグを島内で埋め立て処理する場合、1袋あたり1万円かかります。ポリタンクをそのままフレコンバッグに詰めたら多くても1袋に25個、重さ20キロ分しか入りませんが、破砕してチップにすれば500キロ分を1袋に入れることができます。500キロ分の処理費用が、破砕することによって25万円から1万円に削減できます。特別なことをしているわけではありませんが、大量に漂着するごみをいかに経費削減しながら処理するかを考えています」

回収できているごみは4分の1から5分の1だけ

ただ、これだけのごみを回収して、リサイクルを含めた処理を行なっても、漂着するごみ全体から見れば一部に過ぎないと福島さんは指摘する。

「漂着する量はモニタリング調査から、年間3万から4万立方メートルと推計しています。1立方メートルがフレコンバッグ1袋に入る量ですので、3万袋から4万袋ですね。回収できている量は約8000袋ですから、4分の1から5分の1程度しか回収できていないのが現状です。それでも、対馬で回収しなければごみは再漂流して、砕けながら日本海へと流れていくので、マイクロ化させないためにも回収は続けていきます」

ごみの回収や処理以外に市が取り組んでいることの一つが、国際交流だ。2003年から毎年「日韓市民ビーチクリーンアップ」を開催して、釜山外国語大学の学生らと一緒に清掃活動をしている。通訳は韓国語を学んでいる対馬高校の生徒が担当していて、今年7月は180人が参加した。

回収したペットボトルの国別の割合を市が2024年に調査したところ、約37%を中国、約27%を韓国、約5%を日本が占めた。一方で、韓国の海岸には日本からのごみが流れ着いている。海洋ごみを減らすには日韓双方の努力が必要だと考えて、日韓交流は長く続いている。

また、対馬海流によって漂着するごみの一部は、日本の国土の4倍に及ぶ面積のごみが浮く「太平洋ごみベルト」から来ていると考えられている。同時に、日本から流れ出たごみは、アメリカに漂着している。2024年には福岡市で日米韓海洋環境シンポジウムが開催され、対馬市は漂着ごみの現状と、回収やリサイクルなどについて報告した。

対馬の現状を多くの人に知ってもらいたい

市によるもう一つの大きな取り組みが、企業や団体と協力することだ。市では海洋ごみが漂着する現場を見てもらうとともに、合わせて対馬の歴史や文化、自然について知ってもらうスタディツアーを、一般社団法人対馬CAPPAとともに受け入れている。企業が研修として参加するケースも多く、2024年は89団体が参加した。

スタディツアーに参加したことがきっかけで、ごみ拾いのボランティアを継続する企業や、ごみをリサイクルした素材で商品を開発している企業もある。

学生団体のIVUSAも最初はスタディツアーで参加したあと、定期的にボランティアに訪れるようになった。福島さんは漂着するごみ自体を減らす方法がない中では、対馬の現状を知る人を増やすことが重要だと話している。

「大量のごみが漂着している対馬の現状を、とにかく多くの人に知ってもらいたいです。韓国の方は目の前の大量のごみを見て『韓国のごみがこんなに来ているなんて知らなかった』と驚かれます。現状を知って発信してもらえれば、もう対馬の関係者みたいなものですよね。一方で、国内の方にごみを捨てないようにしましょうと呼びかけても、対馬のごみが減るわけではありません。それでも、対馬の現状を知ってもらうことで、ごみの分別を進めるなど、海洋ごみの問題について考えてもらえるのではないでしょうか」

国際社会でも海洋ごみの問題については議論が行われている。新たな国際条約の策定を目指す動きもあるものの、今年8月にスイスで開かれた会議では合意が先送りになった。国家間の協力を呼びかけるためにも、漂着ごみの現実を対馬から発信することは、今後も重要な意味を持つだろう。

(「調査情報デジタル」編集部)

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。

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