「パワーで法を作りパワーで仕切る」秩序揺らぐ世界で日本の“3つの勝ち筋”とは?【Bizスクエア】

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2026-01-22 07:00
「パワーで法を作りパワーで仕切る」秩序揺らぐ世界で日本の“3つの勝ち筋”とは?【Bizスクエア】

アメリカ第一主義によって戦後の国際秩序が大きく揺らぐ状況に、日本企業はどのように向き合っていけばいいのか。NTT澤田会長に聞く日本の“3つの勝ち筋”とは。

【画像で見る】戦後、アメリカ主導の国際体制

政権変わっても「関税は元に戻らない」

日米の財界人が経済の諸問題に対し意見交換・政策提言を行う「日米経済協議会」の会長を2025年10月まで4年間務めた、『NTT』の澤田 純会長(70)。

トランプ政権の1年を、どう見ているのだろうか。

――関税交渉がとにかく大変だった。日本の経済界はどういうスタンスでアメリカと向き合ってきたのか

『NTT』澤田 純会長:

「色々話を聞いていると、特に輸出企業で関税が直撃する企業は準備をしていた。例えばアメリカ国内に部品を早めに出す、あるいは在庫を積み上げておくとか、2025年度は市場価格に転嫁しなくても事業が回るようにはしていた。しかし今後はそういうマージン(利益)が解消されるだろうから、最終的に価格転嫁を検討していくと理解している」

――トランプ政権が終われば関税が元に戻ると期待したくなるが

澤田会長:
「それは戻らないと考えておいた方がいい。どの政権であれ、関税が入ってくればアメリカにとってプラスになると考える。民主党であれ、トランプ氏ではない共和党であれ、継続するのがベースの可能性があると思う。物価を下げてコントロールできれば、関税はそのままの可能性もある」

――日本企業は“高関税”を前提としたビジネスモデルを組み立てていかなければいけないと

澤田会長:

「その通り。向こうの高い関税が、進出している日本企業を守ることにもなる。日本から輸出しなくても、企業としては米国生産によって全体の収益は上がっていくという構造がつくれる」

つまり、貿易と投資を一体のものと考え、「全体で利益が出る構造」に持っていくということだという。

対米80兆円投資“商機”の受け止めも

日米関税交渉の中で締結された「対米投資5500億ドル(約80兆円)」も“ポジティブにとらえる”日本企業が多いと感じているという。

――対米80兆円投資で、肝になってくる分野は

『NTT』澤田 純会長:

「トランプ氏の元々の政策に戻ると、やはり【製造業】。そういう伝統的なところが1つターゲット。さらに【AI】がアメリカは世界で一番進んでいるところでもあるので、そこに向けての【データセンター】とか【発電】などがターゲットにはなると思う。需要が日本の国内よりもアメリカ国内の方が根強い。規模も3倍で、それが成長しているとすればカントリーリスクはそうないので、“非常に狙いやすいターゲット市場になる”

大国による「パワーゲーム」に?

2026年に首脳会談が2回開催予定など、距離が近づいているように見える“米中関係”はどのように見ているのか。

『NTT』澤田 純会長:
「トレードオフしたようにも見えるが、年が明けてベネズエラへの攻撃を見て、“譲ってるように見せておいて地政学的にはグサッと”『お前ら南米から出て行け』みたいな。そこをディールしている感じがして、通商の中のディールだけじゃなくて、もう1枚別の武器を持っていて、こっちを取るためにニコニコしていただけと。結局、ベースのところはやっぱり“中国と対抗している線は譲っていない”

――トランプ氏は、中国・ロシアも含めた「大国が世界をコントロールする」ことをイメージしていて、その中でアメリカが一歩抜きん出る、そういう発想なのか

澤田会長:

「いわゆる“パワーで法制度を作ってパワーで仕切っていく”という印象を受ける」

日本に必要な“3つの柱”

では、大国のパワーゲームのはざまで、日本はどう立ち回っていけば良いのか。

「売り、良さがないと認めてもらえない」という澤田会長は、日本がアメリカと対等に渡り合うためには、“3つの柱”の確立が重要と話す。

『NTT』澤田 純会長:
「一つは【技術力】。例えば半導体製造装置や材料もそうだが、日本の世界シェアが高いようなものは、やはり認められていく。もう一つは【連携】。例えばインドや南米とのお付き合いも、アメリカは結構いろいろ反対があるが日本の場合はかなり受け入れられたり、いろんな議論ができる素地がある」

――サプライチェーンで中国との関係見直しも考える時期に来ているということか

澤田会長:
“中国はあまりにもカントリーリスクが大きい”。サプライチェーンを複線化しないと地政学的にも難しい状況だと思う」

そして3つ目の柱は、世界が尊敬する【ソフトパワー】だという。

澤田会長:
「それはブランドも、あるいは思想、あるいはコンテンツ力。ちょっと世界にないユニークなものもある。現実にいまインバウンドも多く来ているのは、そういう部分が素地にあるからだと思う。逆にそれをちゃんと発信していくことが、バーゲニングパワー(対抗力)にもなる」

任期あと3年…注目は「エネルギーの動き」

秋には中間選挙が行われるアメリカ。トランプ氏の政策に変化はあるのだろうか?

『NTT』澤田 純会長:
「アフォーダブルな(手ごろな)価格帯での生活を実現。キーポイントはそういう“家計支援”になっていくと思う。次にくるのが“AIによる社会不安”。アメリカはAIが特に先端的なので、結構レイオフ(解雇)も多いと聞く。もうAIの投資は企業側から見るとあまり効率的ではないが、投資家はAIを入れてコストカットと見るのでレイオフを進める。むしろエッセンシャルワーカーの方が給料が上がるモデルが始まっているので、やはり社会不安がかぶると思う。トランプ政権が2年目としてどう手を打つかは大きな分水嶺になる」

――この後トランプ政権が3年続くわけだが、注目点は

澤田会長:

「一つは【エネルギーの動き】。エネルギーがどれぐらい自分の産業にコントロールしていっているか。原子力発電所も含めて」

――アメリカが自由になるエネルギーをどれだけ確保できるか。日本からの投資という意味では、エネルギー関連は強い引きがありそうだと

澤田会長:

「おそらくそこは、かなり色々なプロジェクトができてくる気がする」

最後に、大変革の世界に対応していくために、今、日本企業の経営者に求められることは何なのかー

澤田会長:
「いろんな議論があるが、例えばインドやブラジルなどに官民合わせてウィングを広げていく。インドはインドで成長しようとしている次のコアになるわけだが、そこへ新しい形でインド企業とうまく連携を図りながら広げていくモデルがいるよねと。“守ろうとするだけでは恐らく失うだけになる”ので、広げようという概念をよく話す経営者が多い」

アメリカはなぜ変わってしまったのか

“戦後秩序”を壊しにかかっているようにも見えるトランプ氏。

そもそも、その戦後秩序は「アメリカの強大なパワー」の元になりたっていたと指摘するのは、慶応義塾大学教授の白井さんだ。

『慶應義塾大学』総合政策学部教授 白井さゆりさん:
「アメリカの経済力・軍事力・技術力のもとで、自由貿易とか民主主義とか集団安全保障をやっていって、みんなでWin-Winの状況を作ってきていた。コンセンサスがあって、そのための制度として国際機関や中央銀行制度などができた。そして、最も力のあるアメリカがルールを順守し支配力を抑制する建前で、正当化を実践してきた」

つまりは、コンセンサスが世界の価値観で、それを実現するために国連やIMF(国際通貨基金)などの国際機関も作られた。こうした制度をアメリカは“建前としては”尊重してきたという。

白井さん:
「ところが国連の安全保障理事会も力を失ってきているし、いろんな国が出てきて国際機関が地球上の問題を解決できなくなってしまった。戦後のやり方が難しいと思ってるところに中国が台頭してきて、トランプ氏は『もうアメリカが抑制して仲間としてやっていくことに意味がない』と、自分たちで自分たちの力を誇示していくやり方に変えた。新しい時代が来たということ」

ただ、トランプ氏が“中国を転覆する気は全くない”という点は重要だと話す。

白井さん:
「中国を対等のパートナーと見てうまく交渉して共存しようという発想に変わっていることが大事。その中でいかに自分が有利なポジションを作るかを考えていて、その足場固めが資源」

そのような状況で、日本はNTTの澤田会長が指摘していた“3つの柱”「技術力」「各国との連携」「ソフトパワー」が、ますます必要になってくるという。

(BS-TBS『Bizスクエア』 2026年1月17日放送より)

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