維新以外の議員も“国保逃れ”か、旧統一教会の新文書も…総選挙を前に問う2つの問題【報道特集】

衆議院が解散されましたが、国会で議論が尽くされないままとなっている大きな問題があります。それは旧統一教会と自民党との関係を示す新文書、そして、議員による“国保逃れ”の問題です。
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取材を進めると“国保逃れ”の疑いは、維新以外の議員にも及んでいることがわかりました。
選挙戦スタートの一方、置き去りになった2つの問題
額賀福志郎 衆院議長
「衆議院を解散する」
1月23日、衆議院を解散した高市総理。日本維新の会の両院議員総会に出席し、こう力を込めた。
高市早苗 総理
「初めて日本維新の会と自民党の連立政権でいいのかどうか、この信を問う。頑張ってまいりましょう」
選挙戦は事実上スタートした。だが2つの大きな問題が、国会での審議がないまま置き去りにされてしまうと危惧する声がある。
自民党議員と旧統一教会の関係を示す新たな文書。そして、日本維新の会で地方議員が処分された“国保逃れ”だ。
“国保逃れ”に自営業者の怒り「ぶっちゃけ頭にくる」
日本維新の会の地元、大阪。創業75年の手彫り印鑑の店「第一印房」を訪ねた。
店主の仲河司郎さんは22歳で店を継ぎ、50年以上、印鑑を掘り続けているのだが…
手彫り印鑑「第一印房」仲河司郎 店主
「どんどん(売り上げが)減っている。ただ我々の仕事は日本の文化やから。それはやっぱり大事にしたい」
売り上げは厳しいというが、それでも健康保険料は真面目に納めてきた。
現在77歳の仲河さんが受け取る年金は、1年で約73万円。ここから介護保険料を含め約21万円の保険料を納めている。
山本恵里伽キャスター
「厳しくありませんか」
手彫り印鑑「第一印房」仲河司郎 店主
「厳しいし、実際それでは生活できないですよね」
今、仲河さんが怒りをあらわにしていることがある。
手彫り印鑑「第一印房」仲河司郎 店主
「ぶっちゃけ頭にくるというか」
それが維新に所属の県議らが処分された“国保逃れ”だ。
日本維新の会 中司宏 幹事長
「本当に申し訳なかったと思っています」
1月15日、日本維新の会は、保険料を安くする目的の脱法的行為だったとして県議ら6人を除名処分にした。
判明した“国保逃れ”の仕組みはこうだ。自営業者や議員などは、保険料が全額自己負担の「国民健康保険」。一方、会社員などは保険料が会社と折半の「社会保険」に加入している。
処分された県議らは会費を払って、一般社団法人の理事に就任し、国民健康保険から社会保険に切り替えていた。保険料の算定基準となる報酬を月1万円ほどと低額にすることで、保険料を最低水準にまで下げていた。
結果、一般社団法人に月5万円の会費を支払った場合は、1年間で40万円ほど安くなっていた。
日本維新の会 中司宏 幹事長
「今後こうした脱法的といわれる隙間をついた制度をなんとか変えていく」
仲河さんは、維新が掲げてきた主張は何だったのかと憤る。
日本維新の会 吉村洋文 代表
「身を切る改革をやり、あまりにも大きい社会保険の負担を下げる。これをやらさせてもらいたいのです」
手彫り印鑑「第一印房」仲河司郎 店主
「身を切る改革というものでずっと来ているわけですよね。何が身を切ってんねや。抜け道というか、私腹を肥やすというか。けしからん」
“国保逃れ”は維新以外にも…自民系会派の市議を直撃
処分された県議らが理事を務めていた「一般社団法人栄響連盟」は、こんな資料を使って勧誘していた。
資料
「数万~数十万円のコスト削減が可能」
理事の仕事内容については、「簡単なアンケート報告」などと書かれている。登記によると、理事は600人余りに上る。
さらに取材を進めると、別の社団法人でも議員の“国保逃れ”の疑いが浮かび上がった。
村瀬健介キャスター
「いわゆる“国保逃れ”の問題。静岡県島田市議会では、自民党系の議員にまで広がっていることが私たちの取材でわかりました」
その社団法人の登記だ。記載された事業の目的には、栄響連盟と同じ文言が並んでいる。理事として200人以上が登記されていた。
そこに書かれていた名前が「三村隆久」。静岡県島田市議会の最大会派である「自民党系会派」に所属する三村隆久市議は、複数回に及ぶ取材に、この社団法人の理事で、社会保険に切り替えていたことを認めた。
2025年5月末に初当選し、約1か月後の7月1日に理事に就任していた。
自民党系会派 三村市議
「やっぱり議員といっても、色々な会費とか払っていると、自分で使える額って本当に限られるので…。高校の先輩が社団法人のナンバー2みたいな感じでやっていて、向こうから誘ってくれて『生活もきついだろうから』ということで」
議会事務局によると、市議には、ひと月当たり37万円の報酬と年に2回のボーナスが支給されている。
社団法人の理事として受け取っていた金額は…
自民党系会派 三村市議
「100円をもらっています。年明けに(維新議員「国保逃れ」が)問題になって、『これはまずいな』と思いましたけど、僕は『別に法律的に問題ない』と思っていましたので、社団法人側もリーガルチェックをして『一応問題ない』ということになりました」
三村市議は「市場調査やアンケートに回答するのが理事の『仕事だ』」と説明した。
100円の報酬だと、支払う社会保険料は最も低い等級となり、ひと月約1万1000円だ。(「協会けんぽ」の場合)
自民党系会派 三村市議
「僕としては『正当な業務だ』という認識でしたけど、世間様から見たら、ちょっと認識不足でした」
村瀬健介キャスター
「議員として説明しないといけないのでは?どういう経緯で社団法人の理事になったのか」
私たちは「カメラの前で説明してほしい」と取材を依頼したが、電話は切れた。再度かけてみると…
村瀬健介キャスター
「切られた」
これ以降、電話に出ることはなかった。
社団法人の事務所を訪ねると…
記者
「TBSテレビの記者なのですが、一般社団法人のことで伺いたくて参りました」
社団法人の事務所
「拒否します」
記者
「法人に所属している議員が、国保逃れをしていたと認めましたが?」
社団法人の事務所
「取材拒否です」
「保険制度そのものが崩壊しかねない」専門家が指摘
労働社会学を専門とする甲南大学の阿部真大教授は「国保逃れが横行すると保険制度そのものが崩壊しかねない」と指摘する。
甲南大学(労働社会学)阿部真大 教授
「国民(健康)保険料はすごく高いので、一般のフリーランスの人はびっくりするわけです。節税対策というか、しんどいので、こういったスキームに逃げるのは問題ではあるが(気持ちは)わからなくはない」
山本恵里伽キャスター
「問題となっているのは、それを議員という立場の人がやっているということなのでしょうか?」
甲南大学(労働社会学)阿部真大 教授
「一部の人が抜け駆けをすると、他の人がたくさん支払うことになる。その制度の不公平感とか不信感には繋がっていくと思う。今回の場合、それを政治家がやっている」
「このスキームを(保険料を)払っている人が全員が使うと、システム自体が崩壊します」
「真面目にやっている人が損をするというシステムは、制度に対する不信感をすごく強めるんです」
“旧統一教会”新文書 銃撃事件当日にも「応援集会」の真偽
1月21日、奈良地裁。
裁判長
「主文、被告人を無期懲役に処する」
安倍元総理を銃撃し、殺害した罪などに問われていた山上徹也被告に、無期懲役の判決が言い渡された。この事件に関連して、自民党と旧統一教会の関係を示す新たな資料が明らかになった。
3200ページを超える教団の内部資料「TM特別報告」。TMとはトゥルーマザー、つまり韓鶴子総裁のことだ。
韓国本部で当時の幹部が、各国からの報告を韓総裁に伝えるために作成したものとされている。韓国の捜査当局が押収したものだ。
この報告書には、銃撃事件前後の教団の動きが記載されていた。
「自民党奈良県公認候補の佐藤啓候補者の応援集会を10時から行いました」
高市内閣で官房副長官を務める佐藤啓参院議員。銃撃事件の日、安倍元総理が選挙応援に駆けつけた人物だ。
その日、現場近くの教団施設で佐藤氏の応援集会が開かれた、と奈良の教区長の報告にある。
奈良教区長の報告より
「候補者本人は、11時から大和西大寺駅前で安倍元総理の応援演説があり、来ることができず、夫人が代わりにきて、奈良教会で応援集会を行いました」
そして応援集会の後には...
奈良教区長の報告より
「一部の信者は安倍元総理の応援演説に参加するため駅に行き、残りの信者たちは勝利のための電話かけ大会をしていました」
佐藤氏はその参院選で当選。教団との関係を尋ねた4年前の自民党の調査に対し、「選挙におけるボランティア支援」は受けていないと回答していた。
いわゆる裏金問題では306万円の不記載があったが、選挙で審判を受けずに官房副長官に登用されたと野党が問題視していた。
高市早苗 総理(2025年11月12日)
「私の考え方とか性格も含めてよく承知してくれていて、私は深い信頼を寄せています」
佐藤氏に取材を申し込むと…
自民党・佐藤啓議員の回答
「私の代理として、妻がお尋ねの応援集会に参加したことは事実です」
妻が参加したことを認めたが、開催された経緯は承知していないという。
自民党・佐藤啓議員の回答
「当方から、『選挙におけるボランティア支援』を依頼したことはなく、ご質問の『勝利のための電話かけ』が行われたか否かも承知しておりません」
日本の教団側は...
世界平和統一家庭連合の回答
「当該報告は教区長が作成を否定しており、実際事実と矛盾する点がいくつも含まれるため、後日作為的に付け足された怪文書であると考えています。奈良教会での『応援集会』や『電話かけ大会』については、現在のところ確認できていません」
新文書が示す自民党との密接な関係
「TM特別報告」には、他にも自民党と旧統一教会との密接な関係を示す記述がある。
旧統一教会元会長の徳野英治氏は2021年10月の衆議院選挙の後、こう報告している。
徳野英治元会長の報告より
「私たちが応援した国会議員の総数が自民党だけで290人にのぼります」
2019年7月の参議院選挙の前にも、安倍総理と自民党本部で面会し、会うのは6回目と書かれている。
徳野英治元会長の報告より
「組織をあげて戦っていると伝えました。それについてとても喜び、安心したようでした」
高市総理の名前は32回出てくる。
徳野英治元会長の報告より
「高市早苗氏が総裁に選ばれることが天の願いであると考えられます」
徳野元会長は、TM特別報告について自身のSNSで、「元世界本部長に送った報告が含まれているのは事実」と認めた。
だが、「韓総裁を励ますことを目的として書いた極めて私的なもの」で、「個人的意見や希望的予測なども多く含まれている」と説明。
応援した国会議員の総数が、自民党だけで290人と報告したことについては、誇張があったとしている。
一方、高市総理は事務所を通じ、次のように回答した。
高市総理の事務所
「『TM特別報告」なる文書には接していませんが、報道によると、私自身に関する記載は明らかに誤っていると認識しています。党としては未来に向かって、当該団体と関係を持たないことを徹底することが大切で、今後もこの方針を堅持して参ります」
旧統一教会の問題を長年取材するジャーナリストの鈴木エイト氏は、「資料の信憑性は高い」とみる。
ジャーナリスト 鈴木エイト氏
「これまで色々調査してきたもの、そこで得た情報と、かなり合致をしていく。当然誇張なり、そういうのは多少あるかもしれませんけど、大元の事実ベースに関しては、かなり信憑性は高いと思っています」
日下部正樹キャスター:
「文章の重要性をどう見ますか」
ジャーナリスト 鈴木エイト氏
「教団の内部資料が一気に出てきたことはこれまでなかった。韓国でやはり政界と教団の関係にメスが入ったことによって出てきた」
「教団による政界工作、特に日本もそうですが、世界復帰、国家復帰。その国を完全に統一教会式の国にしてしまおうという。そんな団体と、特に自民党政権は付き合ってきたのかという衝撃がある」
「TM特別報告」の存在を知り、更なる調査を求める人がいる。
突然の解散、元信者「逃げている」
2005年頃から10年以上に渡り、旧統一教会を信仰していた元信者の女性。
女性の息子
「これが735万円、これが151万円」
合わせて1000万円ほどで購入したという装飾品。「韓鶴子総裁がデザインした」と説明されたという。
他にも女性は、貯金や夫の生命保険金など多額の財産を教団に献金していた。
元信者の女性
「今から思ったら、だまされて、だまされて」
女性の息子
「(総額は)1億7000万円ぐらいになっていた」
元信者の女性
「家庭が破産するって言うけど」
女性の息子
「破産してたやん」
女性の息子は母親を脱会させるため、地元の教会に何度も直接交渉し、これまでに約7000万円が返金されたという。
その過程で、教団と自民党の関係を知ったと話す。
女性の息子
「(教団側から)選挙がある度に、『誰々さんに入れて下さい』って。統一教会も本当に腹が立つが、それ以上にそれを使って今までやってきた自民党の罪の方がはるかに大きいと思う」
「文書に載っているわけだから、国会でちゃんと明らかにしてから選挙するならまだ話はわかる。それもしないで突然解散と言ったら、そこから逃げているとしか思えない」