36歳で“米女子プロ野球”挑戦の里綾実「日本もプロ化への道が開けたら」女子野球界のレジェンドが背負う思い

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-01-27 12:00
36歳で“米女子プロ野球”挑戦の里綾実「日本もプロ化への道が開けたら」女子野球界のレジェンドが背負う思い

女子野球界初となるNPB12球団のプロ野球チーム名を冠した“埼玉西武ライオンズ・レディース”。埼玉・加須市を拠点に、2020年から活動を開始し、今年で6年目を迎える。

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ライオンズ・レディースが創設された当時から、投手としてチームに所属している里綾実(36)は女子野球界を切り開いてきた一人。鹿児島・奄美市出身の里は神村学園高校(鹿児島)から尚美学園大学(埼玉)へ進み、その後はレイアや愛知ディオーネといった女子プロ野球の世界で活躍。さらに侍ジャパン女子代表としてワールドカップに出場、3大会連続(第6回~8回)でMVPを獲得するなど、日本の大会7連覇に貢献してきた。

「ユニフォームに恥じないプレーを」NPB女子チームへの覚悟

日本の女子野球は世界屈指の強豪国でありながら、その存在や実績は十分に知られていない。2010年に誕生した女子プロ野球は経営難や選手減少などにより、2021年に無期限休止。事実上消滅となった。19年にプロを退団した里は、「野球をやりたいけど、やる環境がほとんど無かった」と当時の思いを吐露。新たに野球ができる環境を探す中、翌年にライオンズ・レディースへの入団が決まった。現在は関東女子硬式野球連盟が運営するリーグ、ヴィーナスリーグに参加しているほか、クラブ選手権や全日本選手権などの大会に出場している。

里はライオンズ・レディース発足当初を振り返り、「自分の居場所が見つかったなっていう安心感しかなかった」と語る。プロではない新たなカテゴリーだが、NPBの名を背負う以上、責任は感じていた。「ユニフォームに恥じないプレーをしなければ」。

現在、NPB球団を母体として作られた女子チームは、読売ジャイアンツ女子チーム、阪神タイガースWoman、そして埼玉西武ライオンズ・レディースの3チームのみ。いずれもプロ化はされていないが、里は「女子野球を知らなかった人たちにも、すごく認知が広がった」と確かな変化を感じている。

「今世界的にも女子野球の環境が変わってきて、少しずつレベルも上がってきている。5年前に比べたら、若い選手たちの意識もすごく変わったし、本当にレベルが上がったなと思います」。そう話す里の言葉通り、女子野球を取り巻く環境は確実に前進している。一方で、高校や大学ではチーム数の増加は目立つものの、依然として女子選手が目指す“女子プロ野球”という道は閉ざされたままだ。里は日本にもプロを目指したい選手はいるが、「行動に移せる選手はまだ少ない」と現状を見つめる。

「女子野球を知っている人だけが盛り上がっている状況から、もっと競技や選手一人ひとりの価値を高められるようになる事を願っています。そして、より多くの人が“女子野球を応援したい”と思える存在にしたい」。これからの女子野球の可能性を信じ、里は新たな挑戦の一歩を踏み出している。

カナダIBLで初の女性選手に、来夏は米女子プロリーグに挑戦

女子野球の未来を見据える選手たちに、アメリカで今年8月、女子プロ野球リーグ「WPBL(Women’s Professional Baseball League)」が開幕するという吉報が届いた。1943年から1954年まで存在した全米女子プロ野球リーグ(AAGPBL) 以来、72年ぶりの開催となる。アメリカ女子プロ野球リーグはボストン、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコの4球団でスタート。8月にワシントンで行われたトライアウトを経て、ライオンズ・レディースではロサンゼルスから里が1位、小櫃莉央(24)が20位、ニューヨークから米谷奈月(24)が7位でドラフト指名を受けた。

チームメイトの小櫃や米谷は初の海外挑戦となるが里は昨季、カナダの独立リーグ「Intercounty Baseball League(IBL)」のチームで、男子選手に交ざってプレーをした経験がある。トロント・メープルリーフスと契約し、IBLでプレーする初の女性選手として歴史に名を残した。

参加のきっかけは球団関係者から直接オファーの連絡を受けたことだった。IBLにはMLB経験者や将来メジャーを目指す若手選手も多く、レベルの高さを実感したという。一方で、日本とは異なる自由な文化や環境に戸惑うこともあった。

IBLでは、国外から招かれる“助っ人”のようなインポート選手が1チームにつき5人在籍。それ以外の多くの選手は地元カナダ出身で、仕事と野球を両立しながらチームに帯同している。「選手それぞれが仕事と野球を両立しながら集まって試合をする。その姿を見て、野球との向き合い方を改めて考えさせられた」。

里が参加したIBLは9チームで構成され、レギュラーシーズン42試合を戦い抜く。IBLによると過去3年間でファン層が拡大。2025年には過去最高の249,590人の観客動員数を達成し、今年からCanadian Baseball League(CBL)として完全なプロリーグ化が決まった。

カナダで培った経験を土台に、アメリカでの挑戦が実を結べば、日本の女子野球のプロ化を後押しする未来も見えてくる。

アメリカ挑戦に寄せる期待「日本もプロ化への道が開けたら」

カナダでの経験を経て、里は今夏に控えるアメリカ挑戦に強い思いを抱いている。「アメリカで女子プロ野球が成立することで、日本もプロ化への道が開けたらいい。最終的には、ワールドカップ以外にも国際試合の機会が増え、日本と世界各国の“プロ同士”が対戦する世界を見てみたいです」。

その根底にあるのは、女子野球を「心を動かす競技」として届けたいという思いだ。「初めて女子野球を見る人が、『面白い』と心を揺さぶられるのか、それとも『楽しそうだね』で終わってしまうのかでは、全然違う。初めて見た人や、久しぶりに野球を見に来てくれた人に、心が動かされる印象を与えられるかどうかが、すごく大事だと思っています」。

そのためにも、里は誰もが見て分かる“女子プロ野球”という舞台で、同じ志を持つ選手たちとともに戦うことが欠かせないと考えている。「同じ意識を持つ仲間が広がってくれたらいい。アメリカでプロ野球ができるというのは、見れば分かる形で示されるもの。プレーだけでなく、選手の姿勢や覚悟も含めて、女子野球の魅力を伝えられたら」。

里自身、プロリーグが消滅した経験を通して考え方が変わったという。「(野球をする)環境があったので、与えられた環境の中でプレーしていましたが(ライオンズ・レディースに入団して)3年ほどだった時に、野球をしながら自分のことだけではなくて、『野球を通して里綾実という人間が世の中に何を伝えられるんだろう』ということを考えるようになりました」。シーズンオフには野球教室やイベントを開催し、野球の魅力を伝える取り組みを行っている。「野球を通して社会に貢献することが一つ。そして次世代の子どもたちに私の経験を伝えることで、夢や希望を持ちながら様々なことにチャレンジしていって欲しい」。

今回のアメリカ挑戦は里にとっても未知の世界となるが「今までやってきたことを思いっ切り出し切るしかない」と話す。最後に、思い描く理想の光景を語った。「いつか女子野球の試合を満員の球場でプレーする日を夢見ています」。女子野球の未来を見据え、里の挑戦は続いていく。

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