「右派」とか「左派」ってそもそもなに?投票前に知っておきたい政治用語をベテラン記者がわかりやすく解説【衆議院選挙2026】

いよいよ来月に迫った衆院選。「解散」「連立」「中道」……ニュースで耳にする言葉は多いけれど、実を言うとよくわかっていない。そんな方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、小泉純一郎内閣時から政治報道に携わってきた、TBSテレビ報道局政治部の後藤俊広さんに、今さら聞きにくい「政治用語」を優しく紐解いてもらいました。
解散ってどういうこと?メリットは?
Q「解散」と言いますが、なぜ解散と表現するのでしょうか。また『伝家の宝刀』と言われますが、なぜ首相はこの刀を抜きたがるのでしょうか。
総理大臣が衆議院を解散すると、すべての衆院議員は議員の身分を失います。
つまり衆議院を構成する議員が誰もいなくなってしまうのです。イギリスのミステリー作家・アガサクリスティに「そして誰もいなくなった」という作品がありますが、まさに衆院議員は誰もいなくなってしまうのです。チームなどの組織を「解散」するのと同じ状態となることから解散と表現するのだと思います。
また総理大臣にとって「解散権」は大きな武器です。議員の身分を自分1人の判断で左右することが出来るのですから大きな権限です。歴代総理が皆、解散権=「伝家の宝刀」を抜きたがったわけではありませんが、歴代総理の多くは解散の行使を匂わせることで対立する野党などへのけん制として利用した例は多くあります。
Q任期満了まで待たずに解散して選挙をするのは、会社で言えば「全員クビにして再面接する」ようなものですか? それによるメリットは何ですか?
解散する側の総理大臣や総理を支持する与党側からすれば「いまなら与党側が選挙に勝てる」というタイミングで解散・総選挙を行うことが出来るのがメリットです。参議院選挙は6年の任期満了で行われることからスケジュールはある程度予想できます。しかし衆議院選挙は総理の考え次第でスケジュールが決まると言うことから総理や与党の方が準備をしやすいという意味で野党よりも有利と言われています。
Q「連立」とはなんですか?「閣外協力」と「連立」は何が違うのですか?
法律を成立させるためには原則として国会の衆議院でも参議院でも過半数の賛成が必要です。しかし衆院と参院でもっとも多くの議員を擁する自民党は衆院でも参院でも過半数の議員を確保していません。そのため政府が作った法律案を成立させるためには自民党以外の賛同する政党が絶えず必要になってきます。そのため賛同する政党を探さなければなりません。そのため安全保障や経済政策などの基本的な政策で合意できる相手(政党)と「連立」を組む必要が生じてくるのです。「連立」にはいくつかの形式があり、連立を組んだ政党から大臣を出す形式を「閣内協力」と言います。去年までの自公連立政権はこの形でした。
一方、いまの自民・維新の連立内閣は維新側が大臣を出しておらず、総理補佐官を派遣しているだけであるため「閣外協力」と呼ばれています。一般に大臣を出す「閣内協力」の方が一緒に内閣を支えていると言うことから連立の度合いが高いと言われています。
右派・左派・中道とは?
Q「保守」や「リベラル」とはなんでしょうか。
「保守」と「リベラル」は様々な意味合いで使われることがありますが、日本の政治でよく使われるのは憲法や防衛費に関しての考え方や立ち位置で用いられるケースがおおくあります。「保守」と呼ばれる政党や政治家は一般に憲法改正に前向きです。
また、国防に関してどれだけ力を入れるかどうかも「保守」をはかる上での大切な要素となっています。憲法改正や防衛費の増額に前向きな勢力は保守。一方、憲法改正や防衛費の増額について慎重なスタンスの勢力はリベラル系と見なされています。
Qでは、右派・左派・中道って?
右派・左派というのは歴史的に古く使われてきた言葉です。18世紀のフランス革命の時に開かれた「国民議会」が起源とされています。議長から見て右側に位置する勢力が王政などの昔の秩序を維持することを主張する勢力が、左側に位置する勢力が王政の廃止など急進的な変革を求める勢力だったことから「右翼」「左翼」という言葉が生まれました。
「右派」・「左派」という用語も「右翼」・「左翼」に近いニュアンスがあります。
右派は古くからある伝統等を守ることに力を入れているほか、憲法改正についても積極的です。これはいまの日本国憲法が、日本が第二次世界大戦に敗れた後、アメリカを中心としたGHQの統治下で作られたものだとして自主憲法を作るべきという考えによります。
その意味では「右派」は「保守」と共通する要素が多くあります。また特にヨーロッパ諸国においては「右派」かどうかの定義として「移民政策」についてスタンスがあげられます。
移民政策について厳しい対応を求める勢力は「右派」とみられています。日本でもいま外国人の問題が選挙などで争点化され始めています。
一方、「左派」ですが元々は急進的な改革を求める意味が強かったつよかったのですが、いまの日本の政治においては「リベラル」と重なる部分が多くあります。憲法改正には慎重であるほか、防衛費についても引き上げには否定的です。
そして「中道」ですが、これは「右でも左でもない」という政治的なスタンスを表す意味で多く使われます。中道を掲げる政治勢力は往々にして「右派」と「左派」の間の立ち位置を意識することから両方(「右派」「左派」)のスタンスの中間点を意識した政策を掲げる傾向が強いです。現実的な対応を取りやすいメリットもあるのですが、主義主張がわかりづらいというデメリットも指摘されています。
Q急進、穏健という言葉もよく聞きますが、これは「右」や「左」とどう違うのでしょうか。
急進と穏健は物事の進め方についての姿勢を問う言葉です。
急進派、穏健派というように使われますが、物事を短時間で変えていくように推し進めるタイプは急進派と呼ばれます。一方、時間を掛けて物事を進めるタイプは穏健派と呼ばれます。
急進派の特徴はリーダーシップを発揮することを好む傾向があります。一方でその組織に所属するメンバーとの対話や合意形成についてはおろそかになりがちです。
一方、穏健派は組織の合意形成に力点を置く傾向があります。そのためそれぞれが納得できるような現実的な対応をとることが多いです。
Q「右派」「左派」「中道」という言葉がニュースの中で出てきた場合、読み解く時に注意点はありますか。
「右派」「左派」「中道」などの性格的な位置づけについて説明してきましたが、これらの言葉は政治的なスタンスを説明するものです。立ち位置はそれぞれ異なりますが、かならずしも「右派」「左派」「中道」がすべての政策で対立しているわけではありません。どの部分は共有されていて、どの部分が違うのか、その違いについて注目してもらうと政治の動きがわかりやすくなると思います。