学びが地域で息づく場所へ 九州歯科大学が動物園で届けた歯と健康「ずーっと はっぴー教室」

2026-01-28 08:00

大学で学んだことは、卒業してから役に立つもの。
そんなイメージを持っている人も多いかもしれません。けれど、学びはもっと早い段階から、地域の中で活かすことができるのではないでしょうか。

北九州で行われたある取り組みは、そんなことを考えさせてくれます。舞台は動物園。そこに集まったのは、歯科大学で学ぶ学生たちと、子どもたち、そしてその家族でした。テーマは「歯」と「健康」。難しい話ではなく、遊びや体験を通して伝える工夫が重ねられています。

このイベントは、単なる一日限りの企画ではありません。大学が地域とどう向き合い、学生の学びをどのように社会へひらいているのか。その姿勢が確かに表れた取り組みでもありました。

動物園でひらかれた「歯と健康」を学ぶ一日

舞台となったのは、北九州市にある到津の森公園でした。
ここで行われたのが、体験型イベント「ずーっと はっぴー教室」です。

動物園と歯科大学。一見すると少し意外な組み合わせですが、会場ではその距離感を感じさせない工夫が随所に見られました。人形劇やクイズを交えながら、「歯」や「食べること」の大切さを伝える内容は、子どもでも自然と参加できる構成になっています。

動物の歯と人の歯を比べるプログラムも用意され、普段はあまり意識しない「口の役割」について、身近な視点から考えるきっかけがつくられていました。学ぶというより、楽しんでいるうちに知識が積み重なっていく。その姿勢が、静かに、けれど確かに表れた取り組みでもありました。

なかでも印象的だったのが、人形劇を使ったプログラムです。専門的になりがちな「歯」や「健康」の話題を、物語として届けることで、子どもたちが自然と引き込まれる構成が取られていました。黒い幕の前で繰り広げられるやり取りは、説明というよりも会話に近く、難しい言葉を使わずに伝える工夫が感じられます。

人形という存在を介することで、伝える側と聞く側の距離が縮まり、子どもたちが身構えずに耳を傾けられる。そうした効果も、この手法ならではのものです。保護者にとっても、横で一緒に聞きながら内容を共有できる点は、安心感につながっていたのではないでしょうか。

当日は約90名が参加し、子どもだけでなく保護者の姿も多く見られました。家族で一緒に体験し、同じテーマについて話す時間が生まれたことも、この取り組みの大きな意味のひとつと言えそうです。

なぜこのイベントが生まれたのか 地域と向き合う大学の視点

このイベントを特徴づけているのは、内容そのものだけではありません。
「なぜ、動物園で行うのか」「なぜ、学生が前に立つのか」。その背景に、大学としての考え方がはっきりと表れています。

福岡県では、人の健康だけでなく、動物や環境も含めて一体的に守っていこうとする考え方が広がっています。今回の取り組みも、そうした視点を踏まえたものです。動物園という場所を選んだのは、子どもたちにとって身近で、楽しみながら学べる環境であると同時に、「生きもの」と「健康」を自然につなげて考えられる場だからでした。

また、このイベントは大学が一方的に知識を伝える場ではありません。地域に開かれた場所で、子どもや保護者と同じ目線に立ち、対話を重ねることが大切にされています。難しい言葉を使わず、体験を通して伝える。その姿勢は、医療や健康を扱う大学だからこそ、丁寧に向き合ってきた部分なのかもしれません。

大学の学びを、教室の中だけにとどめない。地域の中で実際に使い、反応を受け取り、また学びに戻していく。今回のイベントは、そんな循環を形にした一例として位置づけられます。

学生が前に立つことで生まれた、もう一つの学び

今回のイベントでは、歯科医師や歯科衛生士を目指す学生たちが、企画や当日の運営に深く関わっていました。会場で子どもたちと向き合い、言葉を選びながら説明をする姿は、「教える側」というよりも、同じ目線で寄り添う存在だったように感じられます。

学生たちが担ったのは、単なるサポート役ではありません。事前準備から当日の進行、来場者への対応まで、イベント全体を動かす中心的な役割を担っていました。自分たちが学んできた知識を、どうすれば分かりやすく伝えられるのか。その工夫が、子どもたちの反応として返ってくる場でもありました。

人形劇のプログラムにおいても、学生たちは重要な役割を担っていました。専門的な内容をそのまま伝えるのではなく、物語ややり取りの形に置き換え、子どもたちが自然と理解できるように構成する。その過程には、「どう話せば伝わるか」を考え抜く視点が求められます。知識を持っているだけでは成り立たない、伝え方そのものを学ぶ経験だったと言えるでしょう。

専門的な内容を、かみ砕いて伝えることは簡単ではありません。けれど、実際に人と向き合うことで初めて見えてくる課題や気づきがあります。学生にとって今回の経験は、将来医療に携わる立場として必要な「伝える力」や「向き合う姿勢」を実感する機会になったのではないでしょうか。

学ぶ側である学生が、地域の中で役割を持ち、誰かの役に立つ。その経験が、学びをより立体的なものにしていく。そんな循環が、このイベントのもう一つの価値として感じられました。

参加者の反応から見えてきた、この取り組みの手応え

イベント終了後には、参加者を対象にアンケートが行われました。そこには、「内容が分かりやすかった」「子どもだけでなく大人も楽しめた」といった声が多く寄せられています。体験を通して学ぶ構成が、世代を問わず受け入れられていたことがうかがえます。

特に印象的なのは、学生が関わるプログラムに対する評価です。「親しみやすい」「安心感があった」という声が多く、専門家ではなく、少し年上の存在として接する学生の立ち位置が、子どもたちにとって心地よい距離感を生んでいたようです。

また、保護者からは「家族で同じテーマについて話すきっかけになった」という感想も見られました。イベントの時間だけで終わるのではなく、日常に持ち帰って考える余白が生まれていたことは、この取り組みの大きな成果と言えるかもしれません。

さらに、「歯科医療の仕事に興味を持った」「また参加したい」といった声もあり、健康への意識づくりだけでなく、将来の進路や職業理解につながる一面も見えてきました。短い時間の中でも、学びと気づきが重なり合う場になっていたことが伝わってきます。

学びが地域で循環していくということ

今回の取り組みから伝わってくるのは、イベントの成功そのものよりも、その先にある考え方です。
大学で学ぶ知識や技術は、資格や将来の仕事のためだけにあるものではなく、地域の中で誰かの役に立ち、そこで得た気づきがまた学びへと戻っていく。その循環を、九州歯科大学は丁寧に形にしようとしているように感じられます。

動物園という身近な場所で、子どもたちと向き合い、言葉を選びながら伝える学生たちの姿は、「学びが地域で活きる」という言葉を具体的に映し出していました。特別なことをしているようでいて、実はとても自然な関わり方。その積み重ねが、大学と地域との距離を少しずつ縮めているのかもしれません。

一度きりのイベントで終わらせず、こうした活動を継続していくこと。その姿勢こそが、大学という存在の価値を静かに伝えていく力になるのでしょう。学びと地域がゆるやかにつながる場が、これからも北九州の中で広がっていくことを期待したくなります。


九州歯科大学 概要

九州歯科大学は、全国にある歯学部・歯科大学の中で唯一の公立大学です。歯学科と口腔保健学科を擁し、「口の健康」を通して人々の暮らしや幸せを支える医療と教育に取り組んでいます。
1914年の設立以来、地域に根ざした歯科医療と人材育成を続けてきました。併設する附属病院は、北九州の歯科医療を支える中核的な存在として、教育と臨床の両面から地域に貢献しています。

公式サイト:https://www.kyu-dent.ac.jp/

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