【全日本実業団ハーフマラソン展望】パリ五輪トラック代表の樺沢和佳奈と高島由香、前回2位の川村楓がマラソンへのステップとして出場

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2026-02-06 12:00
【全日本実業団ハーフマラソン展望】パリ五輪トラック代表の樺沢和佳奈と高島由香、前回2位の川村楓がマラソンへのステップとして出場

第54回全日本実業団ハーフマラソンが2月8日、山口市の維新百年記念公園陸上競技場を発着点とする21.0975kmのコースで、2026海外ハーフマラソン派遣選考競技会を兼ねて行われる。パリ五輪5000m代表だった樺沢和佳奈(26、三井住友海上)、同五輪10000m代表の高島由香(37、資生堂)、昨年の今大会2位の川村楓(28、岩谷産業)の3人は、今年予定しているマラソンへのステップとして出場する。3選手のマラソン出場への背景などを紹介する。

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樺沢は1か月後の初マラソンに向けて余裕度のチェック

樺沢は2年前の今大会に1時間10分13秒で優勝している。ラスト1kmの表示でスパートし、2位の選手に9秒差をつけた。

「(得意の)トラックに入ってからの方が勝つ確率は高くなると思ったんですが、今後距離を伸ばしていくことを考えたら、ロードを走っている段階で前に出るべきだと思いました」

いつかはマラソンをやってみたい。その気持ちは以前からあり、2年前の実質的なハーフマラソン初出場も、マラソン進出の布石ではあった。だが一番の狙いはその年のパリ五輪5000mに結びつけることだった。「そこから(鈴木尚人)監督と思い描いた道筋通りに、パリ五輪代表を決めることができました」。

今回は2年前と違い、3月に予定している初マラソンを意識した練習を行ってきた。鈴木監督によれば、12~1月と走り込みの練習ができている。「彼女の強みは、これというスピード練習をしていなくても、ポンとスピードを出せるところ。心肺機能が強いからできることです」。今回のハーフマラソンで全力を出し切るつもりはない。出場の目的を樺沢は、「フルマラソンの半分の距離を、マラソンのレースペースで走ってどのくらい余裕を持って走れるか、自分の感覚をレースで試したい」と話す。

予定しているペースは1km3分20秒前後。そのペースで走り切れば1時間10分20秒のタイムになるが、「(12km手前で)折り返してからは、ガンガン上げることも考えています。後半10kmは自分で作っていく覚悟を持って臨みます」と言う。1時間10分を切るタイムも期待できそうだ。

3月のマラソンでも中間点を1時間10分前後で通過するが、初マラソンの記録を2時間20分前後までは欲張らない。MGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ。来秋開催のロサンゼルス五輪最重要選考会)出場資格を得られる2時間23分30秒が目標だ。もちろん、MGC]を勝ち抜いて「ロサンゼルス五輪はマラソンで勝負したい」という大目標に対し気持ちのブレはない。

山口は中学時代に全国中学駅伝で優勝した場所であり、実質初ハーフだった2年前に優勝した場所でもある。故障による長期間のブランクから復帰した昨年9月の全日本実業団陸上も、山口開催だった。競技人生の節目となってきた場所で、マラソンへの大きな一歩を踏み出す。

高島は今年中にMGC出場権を

樺沢と同じパリ五輪(10000m)代表だった高島も、今大会をステップにマラソンに出場する。

「久しぶりのハーフマラソンになります。ペースは特に考えず、来季(来年度)、マラソンでMGCを取るための練習として、流れに身を任せて走ろうと思っています。マラソンも完走は18年のパリ・マラソン(2時間26分13秒)だけで、その後の2回は途中棄権しています。走りたいとは毎年思っているのですが、冬に故障が多くて出場できていません。一度マラソンをしっかり走りたい思いが強いですね」

MGC出場権を獲得すれば、27年秋のMGC、28年のロサンゼルス五輪と目指して行くことになるが、高島としては「焦らず1個1個のレースで、しっかり結果を出すことに重きを置いている」という。長期計画でやるべき流れを決めてしまうと、失敗した時に元の軌道に戻すのが大変になる。まずは目の前の大会に向かい、そこをクリアできたらまた次の大会に向かう。積み重ねていく方が、大きな目標に向かって行きやすいのだろう。

故障が多くなっていることや、37歳の年齢を考慮した目標設定をしているが、驚くべきは「リカバリーのジョグは少し減らしたり、休養をちょっと増やすようにはしていますが、(週に2~3回行う負荷の大きい)ポイント練習の質は、どんどん上がっている」こと。そこまで頑張ることができるのは、どんなところにやり甲斐を感じているからだろうか。

「陸上競技を長くやっていると、関わる人も増えてきます。関わる人との仲も年々深くなるので、その人たちに、走ることで恩返しをしていきたいんです。そのためだけに競技をやっているので、それが今はやり甲斐になっています」

トラックでは2度の五輪代表になり、クイーンズ駅伝では優勝メンバーに4度名を連ねた。今度はマラソンで感謝の気持ちを表す。そこへの一歩を全日本実業団ハーフマラソンで記す。

川村は「競技人生で一番楽しい」

川村は前回大会の2位選手。1週間前の丸亀国際ハーフマラソンで1時間08分58秒の自己新をマーク。2週連続ハーフマラソンに出場して、翌月の2度目のマラソンにつなげようとした。全日本実業団ハーフマラソンの結果(1時間09分50秒)は好成績といえたが、その後の練習中に座骨の痛みが出てしまい、予定していたマラソンに出場することができなかった。3月末のアジア選手権マラソンには「代表レースを経験したい」と出場したが、2時間31分26秒の5位。「練習はほとんどしていなかった」という。

それ以前は「3年間故障がなかった」が、昨年は座骨の故障に悩まされ、試合に出ても納得のいく走りができなかった。クイーンズ駅伝だけはそれなりの走りができたが、12月初めにケガが再発。今年1月の全国都道府県対抗女子駅伝は9区で区間16位。2年連続区間賞を取ってきた駅伝で、悔しい結果となった。変わるキッカケは1月後半に徳之島で行われた全日本実業団連合主催の合宿だった。

「ケガをしても何も変えず、今まで通りにやってきましたが、連合合宿でマラソン・グループに入れてもらって、一緒に練習したり生活をしたりする中で多くのことに気づきました。マラソンをする人は1日に3回もジョグをする人もいましたし、体のここをこう使ったら、こういう走りができるんだ、と走りへの理解も深まりました。それまでは(スピード練習が好きで)ジョグは一番嫌いな練習でしたが、長く走ることが苦ではなくなったんです。そこからマラソンをしたいと、積極的に考えるようになりました」

川村のマラソン歴は2回で、初マラソンだった24年大阪マラソンでは2時間25分44秒の5位(日本人1位)。40km走は一度も行わなかったが、スピード型の選手がマラソンに挑戦する方法としては有効だった。だが2度の故障を経て、川村の取り組みが大きく変わった。全日本実業団ハーフマラソンを経て、2週間後の大阪マラソンで3回目のマラソンを走る。

「先週は30km走を2回やりましたし、他にもポイント練習を2回行っています。400mのインターバルもいつもは12~15本ですが、今週の火曜日は20本でやりました。ダウンのジョグも7~8km増やしています」

練習スタイルを変更して期間はまだ僅かだが、「今までで一番競技に向き合えています。それが楽しいです」と言う。それがどう走りに現れるか。まずは全日本実業団ハーフマラソンに注目したい。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

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