東日本大震災発生から15年 津波で流された“思い出の品”「写真」「母子手帳」…亡き妻の写真みつけた男性「前に行くのもいいのかな」【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-03-07 15:45

多くの命が失われた東日本大震災。大切にされていた「思い出の品」も津波で流されました。あの日からまもなく15年です。JNNでお伝えしている「つなぐ、つながる」プロジェクト。news23では、こうした思い出の品の持ち主を、今もなお待ち続けている取り組みを取材しました。

【写真を見る】津波で流された「思い出の品々」

母子手帳や写真…津波で流された“思い出の品” 15年返し続け

岩手県陸前高田市。海沿いにあるのが奇跡の一本松です。15年前、東日本大震災で発生した巨大津波により、壊滅的な被害を受けた陸前高田市。死者1560人。現在も201人の行方がわかっていません。

沿岸部の町に残されたのは、大量のがれき。そこには、アルバムやぬいぐるみ、暮らしていた人の「思い出の品」もありました。

三陸アーカイブ減災センターの代表・秋山真理さん。津波で流された写真など、思い出の品を保管・返却するなどの活動をしています。

三陸アーカイブ減災センター 秋山真理 代表
「母子手帳。どうしても取り戻したいという方は結構いらっしゃいます。本当に細かい記録をつけられていて、愛情も伝わるもの」

喜入友浩キャスター
「これは野球部の帽子でしょうか。学生のころはツバの裏側にメッセージを書くんですよね」

他にも、カメラや木彫りの像、赤ちゃんの手形など約2400点の物品のほか、写真やプリントシール約7万4000枚を保管しています。

15年間で返却したのは、物品約3000点以上。写真は推定で約22万枚におよびます。

三陸アーカイブ減災センター 秋山真理 代表
「お母さんが、お子さんが生まれたばかりの頃の(写真を)カレンダーの中にいれてあるようなものを見つけたこともある」

そのときに撮影した写真には、4歳になった子どもが、生まれたばかりの自分と対面する様子が写っています。

三陸アーカイブ減災センター 秋山真理 代表
「ここでしか取り戻せない、そうおっしゃる方もいる。そういう方にとっては一枚の診察券が、唯一の形見になるということもある。持ち主に返ってそういうものになると思っています」

地元を離れた人のため「出張返却」 その場で印刷も

被災者の中には、地元を離れた人も多くいます。

そのため、会員登録すればオンラインで探せるシステムを導入したほか、500回近い「出張返却会」を各地で行ってきました。

2月下旬、陸前高田市内で開催された返却会。思い出の品の写真や情報がデータ化されていて、パソコンで探すことができます。

初めて返却会に訪れた女性
「姉の子ども(の写真)があって」

見つけたのは、集合写真に写っていた姪の姿。現在は結婚していて、地元を離れ生活しています。その場で、印刷した写真を受け取ることもできます。

初めて返却会に訪れた女性
「おお、すごい!」

以前、返却会で写真を見つけた人も再び訪れていました。

家族は無事でしたが、自宅は津波に流されたといいます。

再び返却会に訪れた女性
「娘の小学校の入学式の写真と父親の写真が見つかりました、ここでね。嬉しいなと思いました。全然ないので」

「宝もの」戻ってきた妻の唯一の写真

陸前高田市に住む河野満さん。震災で妻と両親を亡くし、自宅は津波で流されました。

河野満さん
「何があるのかなって見たけど何もなかった。なんでもいいからと思ったんだけども」

身の回りのものも全て失いましたが、数年前、秋山さんの団体が妻・美恵子さんの写真を見つけたのです。スナップ写真はこの1枚だけ。

喜入キャスター
「奥様の表情はどううつりますか?」

河野満さん
「普段ですよ。普段の顔ですね」

喜入キャスター
「貴重な1枚になりましたね」

河野満さん
「そうそう」

震災後しばらくはこうした写真を探す余裕はなく、子育てを最優先。そこには亡き妻の思いもありました。

河野満さん
「変な話だけどね、直後に(妻が)夢に出てきたんだよね。それで『なんだ、おめえ生きていたのか』と私が言うんですよ。夢の中ですよ。声は聞こえなかったけど、『なんとか(子どもを)大人にしてくれないか』と言われてるような気がするんです」

子ども2人を育て上げた今、美恵子さんが夢に出てくることはないといいます。

河野満さん
「(夢に)出てこないということは、彼女も落ち着いているのかなって。私はちょっと出てきてほしいんだけどね」

夢では会えなくなりましたが、今は写真で。

河野満さん
「私が生きているうちは宝ものみたいなものですよね。何が変わったのかわからないけど、『ちょっと吹っ切れたよ』という感じですかね。

忘れてはいけないことは結構あるんだけど、震災のことだったり。すこし踏み込んで、忘れるではないけど、ちょっと置いておいて、前に行くのもいいのかなって」

「心の問題に期限を設けるのは酷」 岐路に立つ返却作業

一方、思い出の品を被災者に戻す取り組みは、岐路に立たされています。

福島県いわき市は2025年、思い出の品の返還事業を終了。持ち主のわからない約5000点のお焚き上げが行われました。こうした自治体が相次いでいるのです。

津波により大量に流出した思い出の品。当時、環境省の指針に基づき、自治体などで保管され、所有者に引き渡す機会が設けられていました。

ただ、月日の経過とともに、引き渡し数の減少や劣化、保管場所などの問題に直面。

岩手、宮城、福島の沿岸37市町村を取材すると、保管を続けているのは12の市町村となっていることがわかりました。

画像データに残す自治体もありますが、思い出の品を被災者に返し続けてきた秋山さんは「探せる環境を残すべき」だと考えています。

三陸アーカイブ減災センター 秋山真理 代表
「探したいというタイミングになるのは人それぞれ。写真を探す過程で亡くなったことを知る方がたくさん出てくる。それに非常につらくて、まだ向き合えない方もいる。心の問題にいつまでと期限を設けるのはとても酷なこと。負担をかける」

補助金終了“思い出の品” 今後は

上村彩子キャスター:
「探したいタイミングは人それぞれ」という言葉もありましたが、被災された方の中には心の中の整理がつかずに、未だに思い出の品を探すことができないという方もいるわけですよね。

そして、自治体の事業が縮小する中で、民間やボランティア団体の方が支えている面もあるのですね。

喜入友浩キャスター:
そうした方の存在は大きいです。この事業を続ける意味・意義を強く感じました。

ただ、続けるには課題もあります。

この活動には年間700万円ほどかかるのですが、活動を支えてきた国の補助金が今年度で打ち切られてしまいます。

今後はスポンサー企業や寄付を募るなどして、活動を続けていくということですが、まだ先は見通せない状況です。

被災者を支えることは本当に大事なことです。一方で秋山さんのように、「支える人をどう支えていくのか」ということが、今後より大切になってくると感じました。

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